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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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手の中にあるモノ

現実に戻ったポーア。そこで待っていたのは‥‥。

 

「‥‥‥‥、んっ。」


  起きてまず、目に入るのは月明かりが照らす夜空。苔植物のような緑色の植物が敷物になっている。


『あ、起きた~!良かった~!』

『良かった良かった~!』


  聞き覚えの声がポーアに掛かる。

  自分を覗き込むようにして、小さな二つの影が宙に浮く。

  その淡く輝く光は精霊、ペーレとネモだ。

 どうやら二人共無事だったようだ。

「二人共‥‥無事だったのですね!」


『まあ、ね~、無傷では無いけど~』

『体中、ボロボロ~。』


  確かによく見ると二人共ぼろぼろ。光が点滅している。

「あ、ポーア様起きられたのですね。暴走し始めた直後でしたので心配していました。何処か痛む所はありますか?」

「‥‥いえ、大丈夫です。」

  少し離れた木の根っこにクーシェがいた。狼の形に型どった炎は既にクーシェの中へと引っ込んでしまったようで、人型の姿に戻っていた。


「クーシェ、様?‥‥‥‥わたくしが気を失ってからどのくらい経ったのですか?」


  ひー様の事は‥‥まだ黙っていよう。

 今言ってもクーシェ様を混乱させるだけだと思う。


「‥‥あれから一刻(一時間)くらいですね。」

「えっ、‥‥そうなんですか?」

「はい、どうかされたのですか‥‥?」

「いえ、何でもありません。」

  白い世界にいた時間は体感で10分そこいらだっのだ。あちらとこちらで時間の進みが違うようだ。


「ミ、ミレド様はっ!?」

  一番肝心なミレドの姿は見えない。空には龍の姿がない。

「ポーア様?‥‥落ち着いて下さい。ミレド様なら

 ほら、そちらに‥‥。」


 

  クーシェが指差した方へと体を起こして顔を向ける。

  自分達のいる場所から離れたクーシェが指差した先、地面が波紋が波打つように広がった中心地にミレドが佇み、微動だにしない。

  ほの暗い夜の森をミレドの溢れんとばかりに光輝く魔力が浮かび出ている。


  ミレドは、空を見上げていた。既に人の姿へと戻りいつもの少女の姿をとっている。立ったまま、動かない。暗くて見えづらいがミレドの側に何か刺さっている。‥‥何だろう。


  はっきりとは見えないが寂寥に満ちたミレドの背中が全てを物語っているように思える。自然と目から頬を伝い涙が地面に溢れ落ちた。


  暴走して止めようが無くなったとはいえ、最も親しかったネスク様をその手に掛けたのだから無理も無い。

  胸の奥を締め付けられる感覚。当事者では無いためこれだけで済む。

  だが、ミレド様の事を考えて思うと自然と止まっていた涙が溢れ出たのだ。


「ミレド様、‥‥ポーア様が気絶した後、直ぐに降りてきてからずっとあそこで空を見上げているだけなのです。

 ‥‥何と声を掛ければいいのか‥‥‥‥。」


『私達が~合流した時には~ミレミレはもう~

 あの調子だたよ~。』

『ネモ達~しばらく動けなかったんだ~。』


  涙を拭いペーレ達の話を聞く。

  ネスク様が獣になる魔法を発動させる直前まで、クロにバッサリと魔力を吸いとられたせいでしばらく具現化出来なくなる程弱っていたらしい。

  精霊の体は人間とは少し違い、ほとんどが魔力で構成されている。魔力を失い過ぎると精霊界(スピリタス・ワールド)と呼ばれる精霊のみが住むという場所で魔力の回復を促す。その間、弱った精霊は、わたくし達のいる人間界から雲隠れをするそうだ。


『ごめんね~私達、役に立てなくて~』

『ネモ達、上級精霊でも~まだ新米精霊だから~。』


  どうやらまだ完全回復出来ていないようでこちらに居られるのもやっとという感じだ。空中でふらついている。

  ネスク様の事を考えて、急いで戻って来たのだろう。

「いえ、ネスク様の助力をして頂いただけでも感謝仕切れません。」

「はい、ポーア様の言うとおりです。私達は、間に合いませんでしたから‥‥。」


  クーシェ様の言う通り、間に合わなかった。だけど、まだ希望は残されている。


  頑張って体を起こす。自分も魔力の暴走をしかけた事で魔力が少なくなっているせいか体が鉛のように重い。けど、成すべき事がある。


(ネスク様、今、救います。動いて下さい、

 私の体‥‥!)


「ポーア様!?ポーア様もまだ動ける程回復出来ていませんよね‥‥?そんな状態で動けば体が‥‥。」

「っ、無理は承知の上です。‥‥ですが、まだ、ネスク様を、助け出す方法があるのですから‥‥。ここで頑張らないと何処で頑張るというのですか‥‥!」


  上手く力が入らず、四つん這いから立ち上がろうとした姿勢で手を滑らせて前のめりに転がりそうになる。


 だが、地面に衝突した痛みは来ない。


  ゆっくりと目を開けると、

 風が体を支えて空中に浮いていた。


『危ないよぉ、ポアポア~。手伝ってあげる~』

『ペーレも~』


  見るとネモが風を操り手助けしてくれた。そして、ゆっくりと体を地面へと降ろし立たせてくれる。

「お二方、ありがとうございます。」

「私も微力ながらお手伝いさせて頂きます。‥‥悲しみにくれるミレド様を何とかして差し上げたいですから。」


  クーシェが立ち上がりポーアの手を引いて先導してくれる。ネモが風を操り体を支えてくれる。ペーレが歩きやすいように大きめの石を水で粉々に砕いてくれる。(‥‥たまに魔法が強すぎて石どころか地面も砕いてしまう。)


  引いてくれるクーシェの手は暖かい。

 自分の手の中には、数々の『ぬくもり』があった。ここ、数ヶ月で得たかけがえの無い物が。

  先導と背中を押されるような彼女達の助け(サポート)を受けて一歩一歩目的達成への扉を開ける。

少し短くなりましたが、今回は此処までにさせて頂きます。

彼女達の友情、‥‥良いですよね。

励まし支え合いながら一歩ずつ前へ進む姿勢。こんな関係、憧れますね‥‥。

さて、前回告知したタイトルとかけ離れてしまいましたが、(今回のは間の話と考えています。)次回が『蘇生魔法』についてです。

では、また‥‥!!

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