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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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新たな姿、そして、さよなら

 

『ネスク。おぬしを世に出すわけにはいかぬ。

 ‥‥‥‥すぐ、楽にしてやろう。』


  光に包まれたミレドの体から淡く光る塵となって一斉に舞い散る。

  夜に一斉に空へと飛ぶホタルが光るように綺麗で美しい中、一段と煌めき大きく広がる。


  何色にも染まらない純白の龍鱗。

 夜の暗闇を真昼のように照らす透き通るような大きな翼。

  そして、大きく鋭く。


  天変地異の災害をいとも容易く引き裂ける爪が

 降りしきる雷の雨を切り裂いた。


  金色の瞳が雷獣となったネスクへと向けられる。悲しみにも似た感情、だが、やらなければいけないという想いをのせて見つめる。



 アアアアアアッ!!


  甲高い声の後、黒い雷が波動となって押し寄せる。その間の時間は4、5秒程。

  翼を広げて押し寄せる波動に向かって一羽ばたきする。


  波動が真っ二つに裂けた。


  そして、下に広がる森の中へと分かたれた波動が飛んでいった。


『お返しじゃ!!』


  体内の魔力を口の中へと移した。

 溜まり、溜まり、口を大きく広げる。

  目で覆いたくなる程の光が高威力の魔法となって上空にいるネスクに放たれた。

  纏った雷を盾に防ぐも、あまりの威力に押し流された。


極聖咆哮(シャイン・ブレス)】のオリジナル。元々、龍状態の咆哮(ブレス)を人型でも作り出せるようにした魔法だったため、オリジナルの威力は何倍にも膨れ上がる。


  空に立ち上っていた雲が裂けて星空が姿を現す。その空にバチバチと光る物体、もとい生き物がいる。


『アレを凌いだか。才能自体はそのまま健在、というわけじゃな。』


  遠くに流されて見えづらいが、先程の雷と纏った雷が異なっている。

 ―――白い雷と黒い雷


  二つの雷が混じり合って存在している。

 黒い雷は【絶ノ雷獣ヴェロンティ・ティリオ・アポシア】の影響かはわからない。

 しかし白い雷は紛れもないネスクの魔法【聖雷パージ・ライトニング】の雷だ。


  上空にいた筈のネスクが霧となって消えた。


『【霞み】か。‥‥‥‥‥‥そこっ!!』


  背後に向かって尻尾を振り上げる。

 雷がしなった尻尾に当たる真下へと雷撃が飛んでいった。

  振り上げた勢いで空中一回転した後、二つの雷撃が迫って来る光景がミレドの目に写し出される。

  前足に魔力を集めて固める。爪を横に薙ぐ。

 光の斬撃となって別れた二つの雷を引き裂いた。


  翼を羽ばたいて切り裂いた雷撃を抜けてその後ろへと飛ぶ。

  口から咆哮(ブレス)の少し小さめの球体を数個吐き出す。光の球が一筋の黒雷を追いかけ始める。

 上、下、右、下、上、左。

 上空を駆ける光の球が追尾する。

 それが雷獣(ネスク)である。


  動き回るそれを他所に翼を広げて別の方向からネスク目掛け移動開始。


  光を纏って光速な速さで先回り。

 そして、口に魔力を集めて咆哮(ブレス)を撃つ。一筋の黒雷が向かって来る。


  だが、事は上手くいかず、咆哮(ブレス)をギリギリ当たるか当たらない位で避けられた。

 避けられた咆哮(ブレス)は追尾していた光の球にぶつかり消滅させた。


  口から爪に魔力を集める。

 そして、黒雷を纏ったネスクへと攻撃。

 斬撃がネスクに向かって飛んでいく。


  だが、白い雷が盾となって弾かれた。


  そして、黒い雷が角へと集められる。

 至近距離(クロス・レンジ)で雷撃が古傷のある背中へと回り撃ち込まれる。


『ぐっ!!』


  古傷に直撃して苦痛な声と共に地面に落下。

 地面すれすれの所で体を直し、再び空へと舞い上がる。


(‥‥先程のは危うかった。一瞬じゃが、意識を失い掛けた。‥‥‥‥次で仕留める!)


  戦闘センスに加え、計算高いその動きは暴走しているとは思えない程、見事な動き。

  聖は聖を弾く。その性質を利用して盾にした雷で爪の斬撃、つまり聖の攻撃を弾く。そして、聖には闇。

 つまる所、黒雷を本能で効きそうな部位、ヘヴラにつけられた傷口から高威力で電流を流された。


  聖の力から瞬時に、闇の力。ヘヴラ戦の後、ネスクが鍛えてきた属性魔法の瞬時の切り換え(マジック・チェンジ)が皮肉な事に敵となった今、発揮されている。

  このまま長引けば流石に龍となった今の姿でも苦戦を強いられる。


  透き通った翼膜を広げて空高く舞い上がる。

 すると、透明な翼膜が七色に輝く。

  胸元の中心が輝き出す。

 翼から胸元へ。全身から魔力を集めて貯めて行く。


  ネスクが駆け出し再び、至近距離(クロス・レンジ)で雷撃を食らわそうと迫る。



  集まり切った魔力を再び、全身へと流す。

 すると、聖の光を体から放ちながらバチバチと空気を走る。


『【形態(モード)聖雷龍(トゥルエノドラグーン)



 終わりじゃ。



 ‥‥‥‥さよなら』


  迫っていた雷獣ネスクに向かって最大火力の上、雷撃を付与した咆哮(ブレス)を撃ち込む。ネスクは防御する暇さえなく、咆哮(ブレス)に呑まれて消えた。



  後に残ったのは、月の光を浴びて光る塵のような物だけ。雷が纏った龍の姿のミレドの頬をきらきらと雨粒が落ちていくのであった。

圧倒的な力で暴走する雷獣となったネスクを消し去ったミレド。その瞳には涙が溢れる。



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