ダーク・ライジング
いよいよ、ニ章終盤!
ネスクの元へと向かったミレド達一向。
移動先の森では‥‥‥‥。
【ЩЖЙ(エキザカム)】の光が収まると景色がガラリと変わる。
先程の場所より森が広がり、緑が生い茂る。
しかし、その中に不釣り合いな痕跡が残されている。
抉れた樹の幹に、人道的に斬られた枝。
そして、何より不可解なもの。
「‥‥何ですか?あれは‥‥」
ポーアの指差した先に黒く収束した繭のような形をした物体。そして、焦げたような跡が残されている。
「‥‥‥‥これは、まさか!」
「何なのかご存知なのですか?ミレド様。」
「‥‥‥‥ポーア、クーシェ。よく聞け。
繭から中身が出てきたら、可能な限り全力を出すのじゃ。さもなくば、……」
バリッ!!
硬い殻が割れるような音が響く。
「――――やられるぞ。」
二人がミレドから理由を聞けないまま臨戦態勢に入る。
繭のヒビが広がっていき音を立てて割れていく。
割れる度に中から黒い何かが空中に走り去る。
そして、大きなヒビが繭から出た後、
「来るぞっ!!【鋭爪・戦鎚】!!」
――――中から何かが飛び出した。
速すぎるため姿が見えない。
「させません!!」
動きを読んだクーシェが尾から灼熱の炎を三方向から同時に見えないソレに放つ。
行く先を阻まれたソレは動きを止めた事で少しだけ確認出来た。
影のように真っ黒な獣が雷を纏っていた。
先程の黒い物質は黒い雷だ。
その強力な黒い電流が獣の体から地面を伝い流れる。流れた電流が炎にぶつかると、消し飛んだ。
黒い獣は、そのままクーシェの方に方向転換して迫る。
咄嗟に三本の炎の尾を伸ばして巧みに攻撃を繰り出すも俊敏な動きで避ける。
「速いっ!!」
素早く動きでクーシェの攻撃を避けて、雷が鋭い爪のような形状を取る。
「はあああ!!」
クーシェに振られた爪を戦槌が受け止め、
形作られた電気の爪と激しい火花を散らす。
重い戦槌の打撃を受けて爪にヒビが入ったのだ。
「そこじゃ!!」
そのまま押し切り、後ろへ退いた獣へと追撃。横からミレドが戦槌を叩き込み側方へと更に叩き飛ばす。だが、まるで効いていない。
黒い雷が強固な鎧のようにまとっている。
飛ばされた獣は体勢を立て直して着地した。
猫のように軽やかな着地だけで、戦闘能力が高いことが伺える。
「『縛れ』」
蔓植物が動こうとするソレの手足をきつく絡め取る。そして、ポーアが錫杖をコンッ!と強く地面を叩くと、絡め取った蔓が更に伸ばし、縄のようにぐるぐると縛り上げる。
獣は雷を使い蔓を焼き払うも、焼き払った傍らから直ぐに手足を絡めとる。
「捕まえました!ミレド様今です!!」
「うむ!!」
ミレドが戦槌を持ち上げて空中へと飛び上がった。隙が出来たため、戦槌に魔力をためる時間が合った。ハンマーの打ち出す部分に【加速】を掛ける。
重力を加えて強力な魔力の打撃となった攻撃で黒い獣に叩き込む。
しかし、黒い電流が盾のように阻んで戦槌を受け止める。
「まだじゃ!!」
地面に降り立つと同時に空中で一回転したミレドがそのまま戦槌のハンマーの部分を狙って踵を振り下ろす。
電流の盾を破りそのまま黒く染まったソレの頭に叩き込まれる。
「やった!」
「やりました!」
二人から喜ぶ声が出る。
地面にめり込んだ獣。しかし、直ぐに違和感を感じる。
黒い電流の後、突如、霧散して消えた。
「!!」
走った電流の眩しさで眼をやられた。
頭上に高魔力反応。
空から魔法が降り注ぐ。
「【聖なる光の盾】!!」
魔力反応を頼りに光の壁を張る。張った直後に重い圧が掛かる。
「ぐぐぐっ!ぬあっ!!」
体がふわりと浮かび上がり、風圧で後方へと飛ばされ樹の幹にぶつかる。
「きゃあっ!!」
「ミレド様!!ポーア様!!」
クーシェは炎の爪で何とか踏ん張り、炎の尾でポーアをキャッチする。
天から地へと電流の一撃が降り注いだ。
「ぬうっ、あいたたた!」
ぶつかった背部をさすりながら起き上がる。
頭がチカチカした後、視力が戻った。顔を上げると大きな窪みが出来て砂埃が上げる。
そして、未だに電流が地面にバチバチと走る。
頭上を見上げると、沈んだ空に獣はいた。空中に電流で足場を作り、黒い稲妻を纏った四つ足の獣。
只の獣とも、魔獣とも違う。
「‥‥‥‥ネスク様?」
ボソリとクーシェが呟いた。
「‥‥ああ、そうじゃ。あれが、"ネスク"じゃ。」
変わってしまってはいるが間違える筈もないネスクの魔力反応。
「そんな!」
ハッと口元を押さえてポーアが息を飲む。
ミレドは唇を噛む。
「ああなっては人には戻れぬ。
災厄を振り撒く獣に成り果てるだけじゃ。」
「元に戻す方法は無いのですか?ミレド様!」
詰め寄りすがり付くポーアが懇願する。
ミレドが首を横に振る。
崩れ落ちるポーアを他所に空の獣となったネスクが動く。空中に電気の球を幾つも作り出す。
「アアアアアアッ!!」
甲高い咆哮で一斉に降り注ぐ。
「炎よ、盾となりて、迫り来る威を遮れ!」
ポーアとミレドの傍まで跳躍したクーシェが360°全ての方位を囲むように炎を操る。
青い炎が三人を包み込み降り注ぐ電流の雨を遮る。しかし、長くは持ちそうに無い。
当たった電流の雨が炎を相殺して穴を開けていく。
「このままでは持ちません!ミレド様!
可能なのではないのですか?
変身したのは私も同じです。ですが、確信して言えます。私は元に戻れると!
私が戻れるのですからネスク様だって‥‥‥‥」
「ムリじゃ!クーシェ、おぬしの中にはおぬしとする『証』ともいえる魔力がある。じゃが、ネスクのアレは恐らく、【絶ノ雷獣】、禁忌とされる魔法じゃ!」
言葉を遮ったミレドが彼女に八つ当たり気味に声を荒げる。クーシェはそんなミレドの姿を見て困惑。こんな姿を見るのは初めてなのだ。
ミレドが息を整える。
「‥‥‥‥よいか、二人とも。人間の中にはそれぞれに存在する『証』と呼ばれる物が存在する。例えば、魔力を貯めておく『器』じゃ。
ネスクの使った魔法はそれを歪めてネスクの存在そのものを『一匹の獣』に書き換える代償に強大な力を与える魔法じゃ。
初期の状態であれば、戻れた。じゃが、既に獣の姿となった今のネスクでは不可能。
‥‥‥‥残る道は一つ。
まだ、本来の力は出せていない筈じゃ。今の内に、楽にしてやることだけ‥‥‥‥じゃ。」
「「‥‥‥‥」」
ミレドから聞いた事実に二人は言葉が出ない。
その間も、穴が広がり雷が三人を目指して注がれる。ミレドが戦槌を振り風圧で相殺した後、出来上がった穴から飛び出す。
「限定、全解除!【龍形態】」
ミレドの体が輝き出す。
雷で攻撃してくるも、光が雷を塵へと帰す。
ずんずんミレドの姿が大きくなっていく。
それと同時に人の姿から変化する。
最近は文章の構築に苦戦しています。
世間でいう"スランプ"に類似していますが、
インスピレーションは湧くので一概にとは言えませんねww
さて、次回は獣となったネスクが(第一部の初期ごろに登場した)久しぶりの全部が龍の姿に戻ったミレドと対峙!!