白き雷獣と黒き死神
いつもより遅い時間になりましたが、書き終えたので更新します。
高速の剣撃がクロを襲う。
右から迫る剣撃をダガーで弾くと、合間を入れずに左から剣撃が強襲する。
「く、っ!」
クロの影が防御するようにネスクの刀を受け止める。
『魔力生成完了、雷を展開‥‥。』
黒い刀身の刀の柄を聞き手である右手に持ち変えるネスク。そして、回転しながら上から刀を振り下ろす。刀に雷が走る。
刀を振り下ろし切る。しかし、
―――クロがニヤリと口端を上げる。
「【影縛り】」
影から鎖が伸びネスクを縛り上げる。
振り下ろし切った刀の『刃』の部分にもがんじ絡めで、指一本分の力を入れても動く事すら出来ない。
鎖の謎の"魔力を無力化にする"能力で刀に纏っていた雷も解除されている。その為、鎖を通して電流を流せない。
「くくくっ、ここまで心踊ったのは初めて‥‥!だが、これで最期だ!
【心臓を穿つ槍】!!!」
『ネスネス!!避けて~!!』
『ネス!!ダメ~!!!』
ネモとペーレの声の後、直ぐにネスクの体の中心に鈍い痛みが走る。一度目は視認する事すら、ままならなかったが、今度はしっかりと捉えた。
影から鎖に繋がれた黒いモヤモヤした突起物が心臓目掛けて発射される。後方から一本、前方からもう一本。
二本の突起物が心臓で交差するように放たれて確実に心臓を穿つ。
体を反らし避けても避けた分だけ軌道修正をして確実に刺し貫く。まるで始めから定めた未来に沿って貫くようである。
『<第一禁扉>、第五六六、【過去投影】を発動。同時並行、魔法の解析・無効化を開始‥‥。』
黒いモヤモヤの突起物が体から引き抜かれるとぽっかりと空いた穴から血が霧吹き状に流れる。口の端から零れた後にネスクの体から微弱な光が放出される。
『ーーー修復完了。
【影は心臓を穿つ槍】の解析完了。
無効化を施行。』
心臓に空いた穴が埋まる。縛っていた鎖も魔素粒子となって空気の魔力に変わる。ネスクがぼろぼろになった影の鎖を無理矢理、刀で引き千切り刀で二、三撃と追撃を繰り出す。
クロが後ろに退くと頬にかすり傷が出来た後に血が出る。それを手で確認したクロは驚く。
「‥‥ふ、ははははっ!」
確認したクロは、更に体の修復される光景を見ていた。すると、急に顔を押さえて笑い出す。
初めて見せた隙。そのまま、刃をクロに定めて走る。
『再度、発動‥‥。
呼称魔法名【聖雷】』
―――――足に、腕に、刀に。
白い雷のボルテージが最高潮に達する。
ネスクの頭の中、一つの本がパラパラと捲れ、一つ魔法について書かれたページに辿り着く。
それはかつて。
地を焼き、全てを焦土と化し人々に畏怖された天災であり、人力によって起こされた。そして、使用者の、その成れの果ては雷の獣となりて味方であった『英雄』によって討たれた魔法。
「<第一禁扉>、第六二、
―――‥‥【絶ノ雷獣】」
地面にネスクが覆っていた白い雷が走り抜ける。あまりの電流の威力が地面を走ったことにより、白い雷が支配する電磁フィールドとなってしまう。纏った雷がネスクを包み
「くくくくくっ、心臓を潰されても生きる化物‥‥。これまで見てきた奴の中でも一番ぶっ飛んだ奴だよ、お前は‥‥‥‥!!」
クロの周りに黒くどろどろとした空気。もとい、魔力が立ち込める。顔を押さえて笑っていたクロが手を退けた時、ローブの奥の真っ赤な瞳がギラギラと再び怪しく光る。
「‥‥‥‥礼だ、見せてやる。今までに誰も見せた事の無いこの魔法を!!」
クロの周りに渦巻いていたドロドロとした魔力がクロを呑み込む。
刀で狙いを定めて切り込む。ネスクの朧な瞳には混濁とした魔魔力阻害のある霧の中にいるクロの姿を捉えている。纏った電気が阻害している魔力の霧を焼き払う。そして、捉えた影のようなクロに電流が走っている刀を振り下ろす。
―――が、
視界の悪い中、突起物が飛来する。刀の雷で突起物を切り捨てる。
突如、ぞわりとする殺気が背中を撫でる。
『魔力生成、呼称魔法名【構造具現化】
形状<剣>』
書庫が意思の通りに反映させた透明な剣を左に、背後へと振るう。すると、背後からの攻撃を弾くと共に作ったばかりの透明な剣がガラスのように簡単に砕け散る。
そしてチカッと何かが灯ったと同時に猛烈な炎に包まれる。
「‥‥‥‥‥【瞬間転移】」
咄嗟に近くに倒れた丸太と場所を入れ替えた。
場所を入れ替えた先で状況を確認する。モヤモヤとする霧の中で丸太は木っ端微塵に爆散していた。人体が食らえば確実に命を落としていた。
「‥‥‥‥咄嗟のその動き。感服としかいえねぇな。」
モヤモヤした霧の向こうからクロが現れる。ネスクの虚ろな瞳に映し出されたその姿は先程と異なる姿。
「【魂を狩る狩猟者】」
髑髏のような仮面にヒラヒラと蠢く黒い衣は、
正に『死神』を彷彿とさせる。仮面の奥に青く光る炎は今までに狩り取られた人魂のようである。
そして、モヤモヤとした霧のような物がその不気味さに拍車を駆ける。
今まで持っていたダガーの刃が纏っていたドロドロした魔力によってピッチの長い『長剣』と大差ない長さになっていた。そこへ青い炎が雄叫びを上げて燃え出す。狩り取られた物達の悲鳴にも似た音が響く。
「俺をここまでさせたんだ。もっと楽しませてもらわねぇと割に合わん‥‥!!」
ひらりひらりと揺れる衣を纏ってクロが動く。それに呼応するようにネスクも動き二人の決戦の火蓋を切らす。固唾を飲んでネモとペーレは見守る事しか出来ない。下手に手出しをすれば、ネスクの邪魔をしてしまう事になりかねないからだ。
霧と電磁フィールドが広がる森の中で火花が散る。常人を逸脱した二人の戦いは過激さを増して行く。
捕捉になりますが、
劇中の通り、クロも無詠唱で魔法が使用出来ます。
もう一人の、『見えずの型』を使っていた男は型を『取ること』で無詠唱で魔法を行使出来ますが、型を取らずに魔法を使おうとすると、詠唱しなければならず、"体で使用を覚えている"といった感じです。
まだ、劇中でははっきりとさせていませんでしたが、
基本、"一般人"は詠唱をする事でイメージを固め魔法を放ちます。
劇中の人物が特殊過ぎる人が多く、中々この話を説明出来ないでいます。(;^∀^)