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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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光の戦鎚

  先に地面に叩きつけた男があまりの激痛でのたうっている。かくいう自分も、まだ完治とはいっていないため激痛で叫びたいが、今は男をこれ以上好き勝手させない方が先決だ。

  自由落下中の体を一回転させて大樹を足蹴に男へと急降下。……これで決める。


  左手の籠手形状を変化。

 爪のような形状から重々しい鈍器のような形状が変化した。魔力を鈍器に集めると、雷がバチバチと火花を上げて活性化する。


「っく‥‥‥‥。」


  苦痛な声を漏らした後、男が例の『見えずの型』の構えを取ったため分かる。目を閉じて心の目でソレを捉える。達人は目で見えずとも矢で的を射たり、剣で動き回る物を切ったり出来るという。

  ミレドもまた『達人』と呼ばれる程の技量を持つ。見えずの刃を破ることなど造作もない。



「そりゃあああああ!」


  重い魔力の塊が重力と共に叩き落とす。見えない刃は魔力の塊と化したミレドの歪な武器と呼べない魔法の塊と激しくぶつかり軽々と打ち破る。


 そして、そのまま、男の体の上へと落下する。

 男は避けようともがく。が、既に遅い。


「ぐぼあっ!!」


  魔力の塊が男の腹を捉える。

 そして、男の口から真っ赤な花が咲く。


「はあ、はあ、はあ」


  男は地に大の字で転がったまま起き上がってくる様子は無い。肩で息をしながら男の生存を確認する。気絶しているようだ。左手の魔力の塊が空気の魔力へと変換されて塵となって消える。

  もし、起き上がって来るような事があれば、鈍器でそのままタコ殴りにするつもりであったが、‥‥‥‥‥‥その必要はないようだ。


  ドッと体に疲労が来て、頭がクラクラする。魔力の使いすぎたようだ。

 火傷の傷がチクチクと痛む。クーシェを助けるために負った左手の火傷がまだ直っていない。

 いつもであればすぐに回復するのだが。


「少し‥‥‥‥休憩が必要じゃな。じゃが‥‥」


  敵は待ってくれないようだ。


「【浄化の輝き(パージ・フラッシュ)】!!」


  なけなしの魔力で亡霊を数体が光で消し去る。

 地面からスケルトンがモゾモゾとモグラが掘り起こしたかのように湧いて出る。


「ははは、‥‥‥‥これはちと、マズイのう」


  再び出揃ったスケルトンと亡霊(ゴースト)の軍勢に思わず苦笑いを浮かべてしまう。

  まさに減らないモグラ叩きをしているみたいだ。


「【鋭爪(クク)戦鎚(ブリリオ・ミーテ)】」


  魔法を発動させる。先程の形状変化で既にコツは掴んでいる。

 籠手の爪が合った部分の形状が、龍の鱗のようなゴツゴツした籠手のみを両手にはめた状態になる。

  地面に魔法陣が浮かび、そこからミレドの背丈程の『光の大槌』が姿を現す。

 

「上等じゃ!!貴様ら!

 骨の欠片も残さずに叩き潰してくれよう!!」


  大鎚のグリップをしっかりと握って構える。手に馴染むような丁度良い重さ、握り心地。

  咄嗟に作ったとは思えない程、精細な大槌を地面から湧いたスケルトンに振りかざす。


  ブオンッ!という重い音と共にミレドの戦鎚『ブリリオ・ミーテ』が軽々と振り回される。

 風が巻き起こると全てを吸い込んで粉々に吹き飛ばす。亡霊ゴーストも光の戦槌の"()()"で全て切り刻まれて強制的に浄化される。

  嵐のような攻撃に魔物の軍勢は多勢に無勢である。


「うぐっ!」


  左手がズキリと痛み、振るっていた大槌を止める。この大鎚は今の体では負荷が大きいようだ。左手がビリビリと痺れる。

  右手を振り子のように使い大槌のヘッドを振り上げる。スケルトンのあばら骨を貫いて塵芥に変える。


  だが、


 すぐに別のスケルトンがやって来る。

 亡霊ゴーストも空気中を這うように近付いてくる。


「燃えよ、焔。そして、力を示せ!」


  襲って来ていたスケルトンが炎に呑まれ、物理の効かない亡霊も炎に苦しみ消滅する。


「心配、お掛けしました‥‥。」

「クーシェ!?」


  炎が燃え盛る中から気絶していた筈のクーシェが現れる。尾が三本に分かれ尻尾の炎がクーシェの背後でゆらゆらと揺らめく。そして、全身を炎が包み込む。また暴走しているのかと思ったがクーシェの炎を宿したような真っ直ぐな瞳を見れば誰でも分かる。

  この眼は、正気だということが。


「【白炎(クラシオン・フローガ)】」


  左手を白い炎が包み込む。チクチクと痛みを訴えていた傷がみるみると癒していく。

 クーシェの胸元には、先程、

 ミレドが渡した聖の光が今も尚、輝きを放っている。思わず、眼を見開いてその白い炎を凝視してしまう。


「なっ!ありえん。」


  まさか、クーシェに渡した聖の魔力を自分の魔法に組み込んで行使したということか。

  そんな事を出来る者など世界の何処を探しても、いるかいないか定かではない僅かな少人数だろう。


「ミレド様、私が時間を稼ぎます。ミレド様はその間に休憩を‥‥!」


「怪我人に無茶させられぬ。妾はまだ戦える。

 それに、クーシェ。おぬし、まだ魔力が安定しておらぬだろう?

 そんな状態で魔法を使えばまたいつ暴走‥‥。」


「私はもう大丈夫です!ミレド様こそ今は休むべきです。先程から体が震えていますよね?

 立つ事もやっと、なのでは?

 その左手の火傷‥‥‥‥。

 私を救って下さった際の傷が癒えていないではないですか?」


  クーシェの反論に言葉が詰まる。クーシェの言う通り体を動かす事もやっとだ。痩せ我慢で何とか動かしていたが、流石にクーシェの暴走の際、

 あちこちを痛めた事が尾を引いている。


「後は私にお任せを!大丈夫です。

 ミレドのお言葉‥‥‥しかと、届きましたから。」

「‥‥‥‥良かろう。じゃが、気を付けろ!無理そうならば直ぐに交代するからのう‥‥‥‥。」


  今の体の状態では流石に戦えない。後方支援をしながら魔力の回復、体の自然回復、そして策を練った方が良い。


「はい。ですが、………心配は不要です。」


  炎の三本の尾の先に赤い球体の物体が発現。

 クーシェが暴走の際に使用した技だ。そして、球体から灼熱の光線が放たれてスケルトンを骨も残さずに消し飛ばす。


「まだ何があるか分かりません‥‥。

 ミレド様は力の温存をお願いします。」


  クーシェにコクリと頷く。返事を確認したクーシェは、自身を包む炎が狼の形へと変化する。

 そしてクーシェはそのまま、群がるスケルトンへと突っ込む。

  尾の球体が光線で亡霊を焼き払い、炎の爪がスケルトンを切り裂く。

 魔物達はクーシェの纏う炎に阻まれてクーシェに有効な攻撃を与えられない。一方的な蹂躙となっている。


「確かにこれは‥‥‥‥後方支援も必要ない、ようじゃな。」


  ドカンと大きな爆発が地面を響かせる。爆発で亡霊ゴーストが消失し、飛んで来た木の破片でスケルトンが押し潰される。



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