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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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死神は鎌を持ち上げて嗤う

  静寂に包まれ、魔法による雨が降り続ける大樹の森の中で金属同士の擦れる音が響く。

  氷点下まで気温が下がりそうな程冷たい殺気。

 殺気がチリチリと肌を差す。瞬きをしたほんの少しの間に、目の前にいた黒い格好の(クロと呼ばれている)者の姿を見失う。背後から殺気。

  魔力で身を守り、刀にも添わせる。そして、背後からの凶刃を刀で攻撃を流す。


「へぇー、やるね。なら、これならどうかな?」


  右と左腕の皮膚がまた、ビリビリと痺れる。


「っ!【霞み】」


  咄嗟に【霞み】を発動。霧で出来た自身の"分身"が上半身と下半身に分断され霧となって消える。


(‥‥‥‥あっぶな。あと少しで斬られるところだった!!しかし、魔法を発動させた様子もなかった。一体どういうことだ?)


  再びビリビリするような感覚がして寝そべっている姿勢の体を右に回転してずらすと、そこへ衝撃と共に足が強烈な一撃で繰り出される。大きく地面が凹む。


「はははっ!その程度?もっともっと俺を楽しませろ!」


  少年のように無邪気に笑いながら、クロが自分の頭に目掛けて足を蹴り付ける。


(どんだけ、馬鹿力なんだよ!)


「ほらほら、避けろ避けろ!じゃないと~、頭がぺしゃんこだ!!」


  リンゴが握り潰される光景が思い浮かぶ。必死に回転して避けると、クロが蹴り付けた部分の地面がボコボコになる。このまま避け続けても勝機がない。体に纏わせた魔力を両手の平と両足に等分で纏わせる。


  次の踏み足の際に出来る隙を付いて片手を軸に地面を押して、クロの踏み抜いた足とは別の、支えとして使ったもう片方の足の皿、目がけて回し蹴り。


 しかし、


 人間離れした身体能力で軽々と避わされる。何とか回し蹴りをした勢いで空中で回転するコマのように立ち上がる事が出来る。だが、そこにクロが足に潜めていた別の短剣の追撃を繰り出す。


「っ!」


  何とか避けたモノの服の一部が切り裂かれる。


(こいつ‥‥‥‥強い!)


「ヒュ~ッ、今のを避けるとはお前、

―――おもしれぇな!!」


  フードに隠れた口から口笛を吹き、ケラケラと笑いながら楽しそうに喋る。


 こいつ、……殺し合いを楽しんでやがる。


  心の底からうんざりする。こういう輩はもう見飽きた。この世界に来てから戦闘狂ばかりと戦っている気がする。

  何とか盗賊団のボスといい、グラス団長といい、ミレドといい。‥‥‥‥最後のはナシ。

 此方の世界には戦闘狂しかいないのか!


「さあ、準備運動はここらにして――――」


  殺気の色が変わった。チリチリとする刺す殺気から、獣のような殺気で射殺せるような殺気。


「―――始めよう‥‥!」


  黒い魔力。ヘヴラが使っていた"死のオーラ"とは違うが、それに()()する黒い魔力を感じる。


『なんかヤバい~?』

『手、貸すね~!!』


  ポンと顕れたネモとペーレ。何かしらの魔法で体が空気のように軽くなる。そして、体の周りに風が立ち込めて降り注ぐ雨が避けていく。


「っ、下がってろ!!」


  殺気で動いた気配を感じて刀を振るう。

 カンッという甲高い金属音と共に短剣と刀が競り合う。


………凄い。ネモの風の付与のお陰で刀の重みを感じず、クロの動きに付いていける。

  右、左、下からの切り上げ。纏っている風がその動きを教えてくれる。


「チッ。鬱陶しい!!」


  クロの動きが鈍い。本番を出す前より、動きのキレが無い。クロが距離を取る。

  そして、横を通り過ぎる物に気が付く。


 これは、‥‥‥‥()、か?


  見るとペーレが例の魔力で作り出した泡をクロに向かって放っている。泡がクロに纏わり付くと、その分、黒い魔力が少し減る。クロの魔力を泡が封じ、更に動きの阻害をする。

  俺はネモの風で分からなかったが、二人の援護はかなり有効のようだ。


「【邪魔を、―――すんじゃね】!!!!」


  耳をつんざくような怒り狂う怒声で思わず耳を塞ぐ。ネモとペーレも同じようにする。


  バリッ!ガシャンッ!!


  ガラスの割れる音と共にミレドに作って貰った結界をぶち壊す。

  こいつ、自分の声だけで結界を崩した。さながら、ゴテ◯◯クスや魔◯ブ◯みたいな事をやりやがった。

  結界が消えた事で留まっていた魔力の群れが全て霧散して空気中に溶けてなくなる。


「さぁ、仕切り直しと行こうか!」


  クロが短剣をくるくると振り回してフードに隠れた口元を緩めてケラケラと嗤う。まるで死神が生者の魂を狩ることを楽しんでいるように。


  本番はやはり、ここからのようだ。



  ◇ ◇ ◇ ♢


「せいやっ!!」

「はあっ!!」


  スケルトンの頭を【鋭爪(クク)】の籠手に聖魔法を纏わせて切り裂く。クーシェも同じように拳にネスクがしているように透明な魔力の壁を纏わせ、スケルトンの体のど真ん中に叩き込む。後ろに続くスケルトンを巻き込んで粉々になる。

  死者の骨を媒介に使うスケルトンは、脊髄に強烈な一撃を撃ち込む事で無効化する事が可能。スケルトン()()ならば楽、なのだが‥‥‥‥。


「ミレド様っ!!上!!」


  クーシェの耳がピコンと動く。【鋭爪(クク)】に魔力を更に載せて上空を切り裂く。光の衝撃波が見えない衝撃とぶつかり綺麗さっぱりと無くなる。そこへ薄暗い木々の合間を抜けて青白く光る透けた亡霊(ゴースト)が襲い掛かって来る。


 フルアアアアア!!


  悲鳴とも付かない声を発してミレドの魂を奪いに襲い掛かる。


「【浄化の輝き(パージ・フラッシュ)】」


  襲い掛かった亡霊(ゴースト)がミレドの体から解き放たれた光に呑まれて消え去る。

  魔法の隙を付いて襲い掛かるスケルトンはクーシェが骨諸とも粉々に吹き飛ばす。


「切りがないですね……。」


「そうじゃな、全くもって面倒じゃ……。」


  地面がモコリとした後、スケルトンが這い出てくる。そして上空には亡霊(ゴースト)が群がる。人工的に生まれ続ける魔物を前にクーシェとミレドは構えた後に、逆方向へと走り出す。

いつも読んで下さっている方ありがとうございます。楽しんで頂ければ幸いです。

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