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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
135/347

受け継がれる力

更新します。

 

  巨大な骨の腕が掠めていく。

 掠めた所に小さな傷が走り血が流れる。


(く、コヤツ!!先より早く‥‥‥!!)


  月の影響を受けてこの魔物はまだ強くなっている。その上、変化し始めた時より、骨の腕が増えている。時間が経過する毎に腕が一本ずつ増え、既に六本の腕が背中の骨から生えている。


  ミレドが苦戦している理由もこの腕が原因である。破壊をしても暫くすると元に戻る。

 始めの頃は反応も遅く何とかなっていたが腕が増える毎にその動きは洗練されたモノへと変化する。


「くっ!!」


  状況の好転を考えて隙を伺っているが、

 状況は悪くなる一方。

  骨の腕が伸びる。その腕を【鋭爪クク】で切り落として進む。六本の腕が休む間を与えずに自分を捕らえようと迫る。背中の翼の【光麟翼(エール・イリゼ)】に雷を施す。


  空中で回転させると、迫った六本の骨の腕を砕いて削る。

 そのまま、ワイトキングへと飛翔する。

 砕かれた骨の腕がもう再生して全方位から近付く。その攻撃を体を反らして腕と腕の間をすり抜ける。


「はあつ!!!」


  骨の手の連続攻撃を抜けて胸部の巨大なあばら骨が目の前に現れる。あばら骨の覆われ巨大な魔石が怪しく光る。


(このまま核を‥‥‥‥‥!!)


  【鋭爪(クク)】の爪でワイトキングの核を切り裂こうと両手を核でクロスさせるように振る。

  魔物には、『(コア)』と呼ばれる人間でいう、

『心臓』のような物が存在する。

  大きな魔物程、それに比例して『(コア)』も巨大で魔力を感知できる者にとっては分かりやすい。月の力の影響で強化されているとはいえ、此処をつければ致命傷の筈だ。



 その核を潰そうとあばら骨と一緒に粉々に砕こうと、両手の【鋭爪(クク)】を振った。


 しかし、


「なっ、切れぬ、じゃと!?」


  魔力で構成されたミレドの武器【鋭爪クク】の爪が突き刺さったまま動かすことが出来ない。

  鉱石でも骨でも、何でも簡単に真っ二つに切り裂く事が出来る筈の【鋭爪クク】。

 ――その刃が途中で止まり、切り裂けない。


  何とか動かせないかと試みるが食い込んだまま動かない。背後から骨の腕が迫る。一度、【鋭爪クク】の発動を中断してあばら骨を蹴り、空中で一回転する。


「【鋭爪(クク)】!!」


  再び両手に【鋭爪クク】を発動させて細切れにする。容赦無い腕の攻撃がミレドを襲う。


「1、2、3‥‥‥‥」


  襲って来る腕を三本を【鋭爪クク】の刃で砕く。


「5、6!!そこっ!!」


  背後から迫る腕が【光麟翼(エール・イリゼ)】に触れた瞬間、高熱の光で焼かれたかのように黒焦げとなり、灰となって空中へと消える。その僅かな隙で本体へと突っ込む。

  既に腕の上限の六本が無い。粉々に砕いた腕は通常より時間が掛かるようだ。攻めるのなら今だ。

  再び攻めるために翼を羽ばたかせて飛翔する。

 その時、横から予想外の攻撃で痛みが走る。


「ぐっ!!【荒ぶる風(ウィンド)】」


  衝撃を飛ばされる方向とは逆の方向に魔法を発動させて緩和させ、空中で停止する。

  振り返って何が起こったのか理解する。


「コヤツっ!くっ、まずは腕一本をっ!!」


  骨の腕一本だけ、灰へと変えた二本の腕の内の一本がそこに復活している。一本だけを集中的に再生を促したようだ。

  その腕で、拳を握り振り下ろす。


「【(サンダー)】、【荒ぶる風(ウィンド)】!!」


  腕の横を掠めるギリギリに避けて魔法を流す。

 二つ同時に片手ずつ別の魔法を繰り出す。二つの魔法が別の魔法へと変わる。


「【雷の嵐(サンダー・ストーム)】」


  荒々しい雷を纏った竜巻が腕を塵へと帰す。


「!!!」


  新しい腕がワイトキングの肩付近から生まれて、即攻撃を仕掛けてくる。異常な速さである。何とか避けるも懐まで潜り込めた場所から風圧で体が押し返される。そこに完全な不意打ちを取る形で残りの腕が取り囲んだ状態で掴み掛かって来る。


「【円状・風の刃サークル・ウィンドカッター】」


  腕ががっちりと隙間なく、握り潰すように五本の骨がミレドの姿を覆い隠す。

 骨が真っ二つに切り裂かれて粉状の塵となる。


 しかし、更に最後に残った腕がミレドに迫る。


「くっ!!」


 後ろへ羽ばたかせて距離を取る。

 せっかく詰めた距離が一気に開く。思わず唇を噛む。


 


  ワイトキングの体を無数の爆発に襲う。それと同時に迫っていた腕が自分の体に触れる一歩手前で崩れてなくなる。

  一体何が起きたのか全く理解できない。魔力の気配からしてまだ消滅していないようであるが、あれ程の金属よりも強固な固さを持っているアレを崩す威力、一体誰が‥‥‥‥。


「ミレド!!!!」


  考えに耽っていると、下方で自分を呼ぶ声がする。飛んでいる下にネスクが駆けてくる姿があった。




 ****


  飛翔していたミレドが翼を広げて舞い降りて来る。初めて会った時に見せた龍の翼だ。

  透き通るような綺麗な黄色の暖かな光の羽が夜の暗闇を照らして神々しい光が降り注ぐ。


「おぬし!ポーアはどうした!?」


「ポーアは大丈夫だ。それよりも先に、アレを片付けよう。」


  ふいに風を切るような鋭い音が聞こえ、横に飛ぶ。ミレドは自分が飛んだ逆側に滑空する。

 瞬間、骨の腕が合流した場所、地面に突き刺さる。

  ポーアの攻撃ですんなりと消滅してくれれば楽だったのだが、敵もタフだ。降り注ぐ骨の腕を避けながら、攻撃元へと横目で見る。砕けた骨が元の位置へと戻り再生している。そして、胸部の巨大な魔石が紫色に怪しく輝く。


「ネスク!見えておるな!

 奴の魔石を狙え!!それが奴の弱点じゃ!!」


  ミレドが低空飛行しながら叫ぶ。

 まずは奴の八本の攻撃を攻略しなければ近付く事もままならない。ここは高速で奴の攻撃を翻弄させながら近付くに限る。


『よく見て、攻撃を避ける!』


  かつての、爺ちゃんの口癖が脳裏を過る。ミレドも同じ事を修行中によく言う。

 回って迂回しながら避けていたネスクは雷で速度を加速させる。容赦無く、降り注ぎ続ける攻撃を避けつつ本体の方へ方向転換する。


  雷と一体化になったネスクは迫る攻撃がゆっくりと見える。世界の時間が、ゆっくりと流れているかのように感じさせられる。脳が活性化していく。


  一定ラインへと潜り込むと、より一層攻撃の激しさが増す。八本の腕が十本となる。

 その内の五本が迫る。

  しかし、それと同じように此方も速度が増す。


「【Й∫ΣЁ∬фΞΨ(バルサミナ)】!!」


  迫っていた五本の腕が空中で爆発する。これはポーアの攻撃だ。ポーアの支援を受けて、更に潜り込み、奴の足元へとたどり着く。


「ここっ!」


  雷が弓の形を形取り、ワイトキングの足と足の間を潜り抜けながら膝関節に向かって雷の矢を放つ。潜り抜け終わると同時に矢が関節の骨に突き刺さる。


「爆ぜろ!!【鳴雷(ナルイカヅチ)雷爆の矢(ライバクノヤ)】」


  纏っている【聖雷(パージ・ライトニング)】の雷を刺さった矢に向かって流す。雷が空中の魔力を伝い、目では追えない速さで矢に向かって走る。

 矢と雷が触れた瞬間、多きな音を立てて爆発する。膝を崩された事で、膝かっくんの容量でワイトキングの体が地面に叩き付けられる。

  ワイトキングの紫の怪しい光が此方を見つめてくる。


 それを合図のようにミレドの方へ回っていた骨の腕が此方に全放火してくる。


「‥‥‥‥攻撃を増やすより()()()()()()()()()()()()()!」


  空中へ飛び上がったミレドがワイトキングへと特攻する。


「【迅雷】」


  雷が空気を走った後、ジェット機のような速度であばら骨に【鋭爪(クク)】の片方が突き刺さる。

 突き刺さった箇所にヒビが入る。それを負けじと再生させようともがく。


  しかし、その速度は衰えない。

 そのまま【鋭爪クク】が無理矢理、ヒビを広げていく。あばら骨から煙と共に無数のワイトが生まれる。そしてミレドをそれ以上進ませないために引き剥がそうと迫る。


「【聖弾(セイント・クーゲル)】!!」


  残った片方の【鋭爪クク】で光の弾を作り出しそれをヒビの入ったあばら骨に叩き付ける。【聖弾(セイント・クーゲル)】の弾があばら骨に叩き付けられると同時に大きな光と共に弾ける。

  現れたワイトはその光で浄化されて元の煙へと戻り、あばら骨の盾が完全に崩壊して『核』が顕となる。


「ゆけっ!!()()()!!!」


  後方で構えていたポーアの背後には、

【ヘリアンテス】の花が咲く。

  向日葵の花が二つ。背後に高く並び立ち、高密度の魔力が花の中央に密集する。


「これで最後です!!次こそは!!

【ёЫЙЁЯξ・∬ΨЖЁЗσΠ(ヘリアンテス・デュオソング)】」


  二つの太陽の光が放たれる。二つの光が螺旋を描きながら一つとなる。

 ワイトキングの体はその攻撃を体に諸、食らう。


 ―――骨は黒く焼け爛れ、塵へと還る。


  『核』も高熱の光を受けて、空気の魔力へと光の中で蒸発する。


  限定解除【光麟翼(エール・イリゼ)】の効力が切れて地面に降り立つ。背中の羽が空気に溶けるように消えて跡形も無くなる。何もなくなったその場には【ヘリアンテス】の攻撃による跡だけが取り残される。



  ワイトキングの最期を見た後に振り返る。ミレドは、ポーアの今の姿を見てかつて共に戦った仲間の一人の面影をポーアと重ね合わせる。

  その()()もドルイドの秘術を得意として、仲間を守る【盾】を神器として使用していた。


  天井の空洞から日が差す。どうやら、朝になってしまったようだ。

かつては皆が手を取り合い共に魔王を倒すために一致団結していた。しかし、一体何処で道を違えてしまったのだろうか‥‥。

昔話はさておき、濃厚な一夜となってしまいました。次回は夜が明けてからの話です。

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