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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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龍の怒り

最近更新が遅れてましてすいません。出来るだけ早く書いているのですが中々難しいです。

この後も書く予定なので出来次第、前開更新出来なかった分を今日中に間に合えば更新します。


 

  兵士一同が呆然とする。

 目の前で繰り広げられている事に脳が追い付いて来ない。ただ見る事だけしか出来ず動けない。


  空間に白い雷が走る。


「【迅雷】」


  ワイトの首が飛ぶ。しかし、飛んだ頭部は地面に転がらない。空中へと飛ばされた頭は飛んだ瞬間に雷で塵と化して消える。


「はあっ!!」


  ミレドの一方的な蹂躙(八つ当たり)で残っていたワイト全ての首が一瞬で刈り取られ消え去り、その場にワイトと戦っていたドルイドの兵士のみが取り残される。


 *****


  反乱側の兵士達に動揺が表れ始める。

  数と戦力では勝っていた筈であったにも関わらず、黒装束の男が作ったワイトキングは目の前で変わり果てた姿となり、そのワイトキングが作り上げたワイトも既に無い。

  その上、待機を命じて戦場に出ていった黒装束の男も戻って来ない。


  その時、兵士全員が悪寒に襲われる。


  ワイトキングの残骸の先にいつの間にか少女が一人現れる。白い肌に刺々しく逆立った髪。

 目を奪われるような美しい少女である。


  しかし、雰囲気で分かる。

  この少女だけは怒らせてはいけない。もし、怒らせてしまえば待つものは死のみと。

  少女の周りを白い雷がバチバチと音を立てて少女にまとわり付く。


「――――答えよ。」


  透き通るような声が少女から放たれる。

  心に染み渡り惹かれる。まるでこの世界の神様のようだ。

 しかし、


「此度の卑劣極まりない行いをしたのは、

『貴様ら』か。」


  その言葉を聞いた瞬間に谷のドン底まで突き落とされたかのような絶望が支配する。震えが止まらない。しかし、なにか答えなければならない。

 ここで黙っていればそれは肯定する事と変わらない。勇気を振り絞って言葉を出す。


「い、いえ、わ、私達一同は祖国を救うべく馳せ参じた次第です。」


  歯がカチカチと音を立てて声が震える。畏怖もあるが、恐怖の方が強い。


「――ほう、ならば何故、死力を尽くして国のために戦う者の助力をせぬかったのだ?

 貴様らは壁を張り安全圏からその様子を見るだけ。貴様らのいう祖国のためとは何じゃ?」


  更なる絶望で追い打ちをかける。

 目の前の少女には『怒り』の感情は見られない。しかし、まるで汚物を見るかのようにその瞳から冷たさが伝わってくる。


「わ、我々が到着した時には、そ、そこの魔物が、す、既に手に追えない程の魔物を生み出しており、て、手助けをしようにも出来なくなっておりました。せ、せめて、他の種族へ脅威が行かないように、我等が結界を張り、ここから出さないようにするだけが精一杯でした。」


  代わりに他の兵士が言葉を代弁する。

 大方の筋は通っている。このままこの『嘘』を何としても押し通す。そうする他、既に道はない。


「――ならば、更に問う。何故貴様らの周囲には撃退の痕跡が一切無い。」


  背筋が凍る。ワイトと戦った戦場では魔法による痕跡があるが、こちら側には魔法による痕跡が一切見受けられない。

 そして、少女の雷が増していく。


「妾は貴様らを許さぬ。妾の大切な者を傷付け、あまつさえ己が欲望のために無垢なる民を脅かす貴様らを!!」


  ミレドの魔力が周囲の空気を支配していく。

 すると、ミレドが纏っていた白い雷が形状を変えてミレドを覆い顕現する。


「【裁きの雷撃ライトニング・オブ・ジャッジメント】」


  龍の形を成した白い雷が反乱軍の兵士へと放たれる。何十人の兵士が作り上げた結界が紙を千切るかのように簡単に粉々砕かれ兵士へと襲い掛かる。


「「「「ぎゃあああああ!!!!!」」」」


  雷の龍が兵士達を呑み込んでいく。龍に触れた兵士から感電して悲鳴を上げる。その体が黒焦げになるまで電撃が続く。


  後方の兵士は外へ逃れる為に入ってきた道を必死に逃げようとするが、雷の龍の動きが素早く間に合わない。何百もいた筈の兵士がこの攻撃を受けて全滅していく。


  目の前には黒焦げとなった人の凄惨な光景が広がる。肉の焼けたような匂いが漂う。しかし、誰一人として死んではいない。

  黒焦げにした後、雷の龍は自然消滅する。そして、ミレドの魔力が縮小し再びミレドの周りに纏う。


「簡単には殺さぬ。法の元、その罪はしっかりと贖罪してもらおう。」


  身を翻しポーアとネスクの元へと戻る。

  背中に殺気を感じる。殺意を感じて、纏っている雷を伸ばし変換させる。

 雷が飛んで来た何かを焼く。


「ぐっ、俺の渾身を、‥‥‥化け物が!」


「‥‥‥生きておったか。貴様にも償って貰うぞ。」


  声に反応して再びそちらへ向く。そこには吹き飛ばした男がいた。

 右手を押さえ、体中がボロボロ。その上魔力反応が弱い。


「―――預かった軍は全滅、俺も右手が使えない。ここは、引く、しかない。」

「逃がさぬ。」


 男を睨み付けて踏み込もうとする。


「‥‥‥天は俺に味方のようだ。」


  男が頭上を見上げる。

  魔力反応にいきなり強大な反応が引っ掛かり踏み出した足を止める。


「何!?」


 反応元は首の無いワイトの骸からだ。


「くっ!!」


  そちらから男に視線を戻すと、男がいつの間にか消えていた。魔力反応に気を取られている間に逃げられた。

  天井の穴から血のように真っ赤に染まった月の光が入って来る。

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