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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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光は突然に

<ネスク>


「‥‥‥‥最後だ。」


  最後のバクダンマの根元を愛刀で貫く。これでもう拘束せずとも動くことはない。

 その上爆発する心配も無い。


  魔力の管を根元を貫いた際に通しているため爆発に必要な魔力が管を通って自分に流れ込んで来る。休憩したとはいえこれまでの連戦で失った魔力は全快までには至っていない。

  魔力が満ち失った分の魔力が徐々に回復していく。しかし、まだ足りない。


「管から通って来る魔力を自分の魔力へ変換する速度を上げて‥‥‥‥。こんな感じかな。」


  更に入ってくる魔力量が上がる。

 しかし、変換速度が上がらない。


「‥‥‥もういっそ、魔法で全て絞り出すか。」


  刀を引き抜き地面に刺す。刀の柄にバクダンマに伸びた6本の細い管が繋がっている。


 両手を柄の上に置いて奪った魔力を魔法へと変える。両手から黒い霧が発現し管が黒く染まっていく。そして、バクダンマへと雪崩れ逆流していく。次第にバクダンマの体が黒い霧に覆われる。


「【暴食(グラトニー)】」


  思いつきで作り上げたが上手く発動したようだ。ミレドの宿敵、邪龍・ヘヴラの生を奪い取る霧を参考にして作った魔法だ。


【暴食<グラトニー>】

 定めた生物、又は物の魔力を全て吸い取る魔法。

 黒い霧がその物体を覆い朽ち果てるまで吸い上げる。


  黒い霧が刀へと纏わり付き刀の鋼が輝く。

 体から余った魔力が刀へと付与される。

 刀を地面から抜き鞘に納めて合掌する。


「ご馳走さまでした。」


  黒い肉の塊と化したバクダンマが崩れ落ちてる。


「さて、戻るか。」


  ネスクから溢れんばかりの魔力が漏れ出る。

 普段は魔力制御をしているためそれほど漏れないのだが、今回は失った魔力に更に入るギリギリまで入れ刀にも魔力が満ちているため、制御したいても漏れ出る。


「ネスク!!!」


  背後からミレドの声がする。振り返るとミレドが駆け寄って来る姿が目に入る。


「ああ、ミレド。今、ちょうど終わっ・・・」


  ミレドに終わった事を告げようとするも突然の衝撃で体を支える事に専念して言葉が途切れる。

 ミレドが飛び込んで来たからだ。


「‥‥‥おぬしを信じておったぞ!!ネスク‥‥。おぬしが裏切ってなどおらぬ事を‥‥‥!!」


  突然抱き付かれて困惑する。

 一体何がどうなっているのか、状況が全く呑み込めない。少し離れた間に何があったというのだ。


「ネスク!!俺もお前はそんな輩ではないと思っていた!!わっはっは!!!」


  グラス団長がミレドに追い付いて来て笑う。


「‥‥‥誰かこの状況を教えてくれ‥‥‥。」


  高笑いするグラス団長、抱き付いて離れようとしないミレド。混沌となった状況でネスクは頭の中がぐるぐるする。




  半刻後、


  グラス団長、ミレドが落ち着いて教えてくれた。あとから追い付いた兵士はまだ疑いの目を向けてくる。無理もない、先程まで疑われていたのだから。


「それで、これからどうするのだ?ネスク。」


  まだ目が腫れているミレドだが、しっかりと次の事へと進んでいる。

 さすがはこの中で断突の年長者だ。


「‥‥‥今取れる選択肢は二つ。

 一つはこのまま敵の本拠地へと乗り込む。

 もう一つは他の人、クーやポーアの救援だな。

 俺は後方を取りたい所だが‥‥‥、この場の指揮官はグラス団長、あなたです。グラス団長の意見を伺いたい、です。」


 棒切れで地面に絵を描きながら、説明していく。我ながら下手な絵をだが、今はどうでも良い。本音は今すぐクー達へと駆けつけたい。

 しかし、自分勝手な行動で状況が悪化してはならない。

 切羽詰まった状況であるからこそ、経験豊富な団長の意見を聞くべきだ。将棋と同じで一手でも読み違えると、その瞬間に詰みだ。


「そうだな、‥‥‥‥状況からしてこのまま乗り込むべきである事は確かだな。これ以上の被害を出さないためにも本拠地を一気に責めるべきだろうな。」


「‥‥‥‥そうですね。」


  そう言いながら唇を噛み締める。一刻も早くクー達の元に駆け付けたいが、出来ない。その歯痒さが強くなる。


「ネスクが良いのなら妾もそれで良いのじゃが、‥‥‥‥本当良いのか?」


  ミレドが心配そうに覗き込んで来る。

「‥‥‥‥‥‥しょうがない、状況だけに、な。」


  今は彼女達の無事を祈るしかない。

 祈るしか‥‥‥


赤狼(せきろう)の子、死んじゃうよ~。』

『死んじゃうね~。』


「!?」


 突然の声に全員で辺りを見回すも誰もいない。

 しかし

『こっちだよ~。こっち~!!』


『フフフフフ』


  上空のソレに気付く。先程の下級精霊の内の二つが手に届きそうな距離まで近付いて来て止まり丸い光が弾ける。

  人型に羽、精霊である。それが二人。

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