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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
127/347

裏切りか、はたまた・・・

<ネスク&ミレド>


「グラス!!奴らの動きを()()!!!」


  ミレドが魔力を溜め込みながら、グラス団長に指示を出す。


「縛る?そんな事して、爆発してはいけないのでは‥‥‥?」


「恐らくじゃが、"斬る、叩く、魔法による攻撃"など自身に傷を付けられれば爆発するのじゃ。じゃから、攻撃を加えず、ヤツだけの動きを止めるのじゃ!」


「いえ、しかし‥‥‥。」


  グラス団長が部下に指示を出すのを躊躇う。確かに確証が無い。先の攻撃もきちんとした証明にならない。


「ええい!!!ネスク!

 おぬしは爆発する魔物(ヤツ)の解析をせい!!今すぐに!!」


「んなっ!?無茶苦茶な!!!」


  急に調べろと言われて、直ぐに調べるなど出来るわけない。アレの正体もまだわかっていない。


(しょうがない、善は急げというしな。)


  魔力を溜め込む事を中断して、右の手の平に『透明な鍵(ソフリア・クレ)』を出現させる。


「【ソフリア・クレ】【自動(オート)モード】発動」


  右に一回回す。鍵が消え、ウィンドが目の前に立ち上がる。


『・・・・・・・起動を確認しました。

 ご用件をどうぞ・・・。』


  脳内に無機質な声が掛かる。概要の声だ。

 一度使った事もあり、一度目より早い。

 これも書庫とのリンクが強くなっているということだろうか。

  頭を振って頭を切り替える。

(大至急だ!!

 爆発する魔物(アレ)の解析を頼む!!)


  手短に要件を伝える。すると、画面が切り替わり丸い円状にクルクル回る。


「ミレド!少し時間が掛かる!

 ()を作って時間をくれ!!」


「よかろう!!【土壁(グランド・ウォール)】!!」


  地面の土がせり上がり、大きな壁が俺達と迫り来る爆弾魔物の間に出来上がる。


「もって一、二分じゃ!直ぐに壁を突き抜けて来る故、急ぐのじゃ。」


「サンキュー!!」

  親指を立ててお礼を言う。


「さ、さんきゅー?なんじゃそれは?」

  困惑したミレドが聞き返す。


「"ありがとう"って意味だ!!

 覚えておけ、これはテストで出るぞ。」

  思わず前世ネタを言ってしまった。


「てすと?とは何じゃ?」


「だ~っ、それは後にしろ!

 良いから!!魔力を溜め込む事に集中しろ!!」


  ネタを披露した自分も悪いのだが、ミレドも気にせず魔力集中をしてほしい。


「お前らはこんな時に、夫婦話をするな!

 目の前の事に集中しろ!!集中!!」


「夫婦じゃない!!!」

「夫婦じゃないのじゃ!!!」

  グラス団長の言葉に思わず二人でツッコミを言ってしまう。


 ピコンッ!!


  脳内に終了の通知音が鳴り、目の前のプレートが変わり詳細が表示される。


『呼称 バクダンマ(爆弾魔)


 人の手により生み出された魔物。自身を傷つけられると、体内の魔力を膨張させ辺り一帯を吹き飛ばし自爆する。これを止める方法として、凍結魔法による無害化、爆発威力の凝縮等のやり方を推奨する。


 ※これ以上の詳細は提示出来ません。

 書庫内へ入場する事で詳細を更に閲覧することで可能となります。』


「バクダンマって‥‥‥。」


  その呼称に思わず言葉を洩らす。何故この呼称になったんだよ。

 壁が崩れる音で我に返る。見れば、その魔物が壁を壊して突入してくる。


「ネスク!!分かったのか?なら、早う言え!!

 このままじゃと間に合わなくなるぞ。」

  ミレドの中の魔力が溢れんばかりとなっている。発動準備は整っているようだ。


「分かったのか?ネスク‥‥。」


  グラス団長とその部下も全員目を向けている。


「‥‥‥‥まず、奴らは縛るだけなら、大丈夫だ。グラス団長達は動きを止める事に専念してくれ。そして、ミレドは近くのアレに凍結魔法を。

 それで大丈夫だ‥‥‥‥。」


「「了解だ(じゃ)!!」」


  グラス団長がそれを聞き部下に魔法の指示を出す。ミレドは凍結魔法を近くにいる10体中3体に発動させる。


「【氷結断裂(フリージング・ティア)】」


  ミレドの両手から冷気を放つ風が吹き荒れる。巨体のバクダンマが三体とも覆える程の広範囲の攻撃が吹き、バクダンマの体を凍らしていく。そして、体全体が凍結したと同時にヒビが入り砕け散る。


「終わったのじゃ!!!後はどうするのじゃ?」

  先程の真剣顔が一瞬でほどける。


「一瞬だな。おいっ!まあ、良い。

 後は‥‥‥‥()()()()()。」


「拘束は終わっているぜ。何時でもいいが、あまり持ちそうに無いからやるなら急げ!!」

  残りの6体は既にグラス団長達が拘束済み。

 後は片付けるだけだ。腰の剣を引き抜く。


「それでどうするのじゃ?

 傷つける事は出来ぬのじゃぞ。

 それはおぬしも分かっておろう?」


  ミレドの頭が疑問符で一杯になっている。


「まあ、見ていろ。【加速(ブースト)】」


  【加速】で一気に近づく。

 近くで見るとその大きさが分かる。

 成人男性の3倍はある大きさだ。今の自分は前世より小さくなっているため尚更大きく見える。


「【視認(ヴィジビリタス)】」


  魔力の流れを見る。人間と違い複雑な魔力の流れになっているが、それでも魔力の根本は同じの筈だ。それがこの魔法でハッキリと見える。


【視認<ヴィジビリタス>】

 人、魔物に流れる魔力の巡りを見ることが出来る魔法。


  以前の治療のお陰か魔力の流れを目で見る事が出来るようになった。まだ魔法でしか使えないがその内普通に使える様に昇華していくつもりだ。


  刀を突きの構えで構える。


「まず一体‥‥‥」


  心臓を一突き、直ぐに右にいる二体目へと移動する。二体目は腹。

 どうやら一体ずつ魔力位置が違うようだ。


「二体目‥‥‥」


  流れるようにネスクは腹にある魔力の根本を的確に突く。そして、次へと向かう。


 *****


「ネスク!!お前、気でも触れたか!!

 俺達ごと吹き飛ばすつもりか!!!」


  グラスが慌てた様子でネスクへ叫ぶ。

 確かに端から見たら自殺行為に見れるだろう。

 だが、ネスクは後は任せろと言った。


(ネスクの事じゃろうから、何か策があるのであろうな‥‥‥。)


  今は只待つだけだ。目の前で行われている答えを。


「あの野郎、俺達ごと吹き飛ばすつもりです!」


「やはり人間は信用なりません!!アレが爆発する前に止めましょう、団長!!!」

 

「そうです!!」


  ネスクが三体目を終えた所で兵士達が青ざめた顔でネスクを止めるべく飛び出そうとする。

  グラスも渋い顔でネスクを見る。心開いて来たとはいえ、まだ信頼出来ていない部分があるようだ。


  ミレドが飛び出そうとする兵士達の前に手を広げて立ち塞ぐ。


「待つのじゃ。」


「聖龍様!!止めないで下さい!!あの男は裏切ったのです。我々を最初から裏切るつもりでいたのです。」


「「「そうだ、そうだ!!!」」」


「聖龍様も目を覚まして下さい!

 あの男が!!人族が!!今までどれだけの者がアイツ等に騙された挙げ句の果てに殺されて来たと思っているのですか?

 これ以上我らドルイド族と他種族が虐げられることなど合ってはなりません!!

 ここを通らせて頂きます。」


  そう言いネスクを止めるべく横を通り過ぎて行こうとする。

 再び彼らの前に立ち塞がる。


「‥‥‥‥待って、欲しいのじゃ。ネスク、我が弟子の事じゃから何か策があるのじゃろうから。じゃから、じゃから!!」


 頭を下げて懇願する。

  あんなボロボロに体を壊しながら、妾を邪龍から、運命から救ってくれたネスクが裏切る筈がない。裏切るのなら当の昔に裏切った筈だ。

 それこそ邪龍が現れたあの時に。


「俺からも少し待とう。」

  思いもよらない人物からの助け船がある。グラスだ。


「だ、団長!団長も先程言ったではありませんか!!気でも触れたかっと!!」


「‥‥‥確かにさっきは動揺して言っちまったが、それでも、‥‥‥俺はネスクという男を信じる。少しとはいえ、あんな真っ直ぐに剣を振るう男が裏切るなんて事はあり得ねぇ。ミレド様と同じく、俺の顔に免じて‥‥‥頼む。」


  この男、少しとはいえ剣を交わして、そう判断出来るとは、やはり強い。


「‥‥‥‥‥‥分かりました。聖龍様とグラス団長に免じて今は待ちます。ですが、もしもアレがあのまま爆発すればあの男、呪い殺してでも道連れにします。」



「ありがとう、‥‥‥‥なのじゃ。」


  今は待つのみ。彼が本当に裏切ったのか、それとも策が合って行動しているのか。

  既に五体が貫かれている。

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