精霊と爆弾
今日の分はここで一旦切ります。
<ネスク&ミレド>
暗がりの獣道を歩いている。後ろにミレド。そして、なぜかグラス団長とその部下達がぞろぞろと付いてくる。
上空の謎の光る物体のお陰かある程度の範囲は見える。【探知】で予想外のことが起きないように慎重に且つ、足早に急ぐ。
あの光体は一体‥‥‥。
魔物との戦闘中は全く見えなかった。しかし、戦闘後、しばらくすると―――現れた。
ここに来た初日からの疑問をミレドに聞いてみよう。
ミレドならば何か知っていそうだからだ。
「ミレド、あの光は何か分かるか?」
「ふにゃ?何か言ったか?」
コホンッと一息置いて改めて聞く。
「空に浮いているあの光、何だかわかるか?」
「ん~?そうじゃのう、恐らくじゃが‥‥‥」
少し考える仕草の後、その正体を答えようとするも、その正体は別の人物から明かされる。
「"精霊"だ。」
グラス団長が聞いていたのか答える。
「精、霊?」
「うむ、あれは下級精霊の光じゃ。」
精霊って、あの?
背中に羽を生やして、小さい人間の姿をしている?
よくゲームやファンタジーの話に出てくる?
「もっと人間ぽいと思ったが‥‥‥」
「上級精霊になれば、人型の姿の者もおるが、此処におるのは、下級精霊。つまり、まだ自我を持たず、自らの持つ魔力も少ない者じゃ。」
上空の光に目を向けながら、歩く。
赤、黄、青、紫、など多種多様な光が上空を漂う。
「精霊は人のいない場所、例えば未開拓の森、そうだな、魔力濃度の高い場所で長い時間をかけてゆっくりと成長していく種族だ。俺達の森はそれに当てはまるようで下級精霊達がこぞって集まる。」
「へぇ~、上級精霊はいないのか?」
ミレドとグラス団長が顔を見合わせる。
そして、何故かミレドはため息を付く。
「はぁ~、ネスク。おぬしは、常識という物を身に付けるべきじゃのう。」
????
頭の中が疑問符で一杯になる。
その答えをグラス団長が教えてくれる。
「上級精霊は、滅多に人前に現れない。人と唯一関わりを持たない種族ともいえる。精霊は自然を自由に操る力を持つが故に、それを悪用しようと目論む者も後が立たない。だから、精霊の王が上級精霊以上、自身の格を上げた者を誰も知らない場所で静かに暮らさせているとか。俺達も下級精霊達以外は会ったことがない。」
「『精霊王・ヘリカナル』じゃのう。懐かしいのう‥‥‥。」
ミレドが懐かしそうにしている。やはりというべきか知り合いのようだ。
「ミレド様はご存知なのですか?」
グラス団長が驚いている。当然といえば、当然の話である。それこそ、お伽噺話レベルの話なのだから。
「昔に‥‥‥‥‥のう。最近は会っておらぬが元気じゃと良いが‥‥‥。」
以前のジルとレイブの話を聞いた時の表情に似ているがあの時感じたような寂寥感は無い。
温かく柔らかな感覚だ。
【探知】に何か引っ掛かる。後ろに合図を送り直ぐに臨戦態勢に入る。
刀の柄に手を置き、魔力を流す。
魔力反応から速度は速くないがそれでも魔力量が大きい。その上、数は先程の魔物より全く比がない。
数が十体。周りに伏兵の反応も無い。
兵士が横に展開し、全員剣を抜く。
グラス団長も大剣を背中から抜き構える。
反応がゆっくりとではあるが、徐々にその距離を縮めて来る。直線で約200m。
そこから無作為に十体が配置となっている。
人では、無い?
しかし、魔物にして異なる。
近付いて来るにつれて地面が振動する。
残り距離が150m、130m、110m‥‥‥‥
近付いてくるにつれ、それが視界に入る。
歪な形をしているが、どこか魔物にも似たその姿が‥‥‥。
「全員!!!魔法発動!!!」
グラス団長が兵士に指示を下す。
「あの魔物‥‥‥!不味いのじゃ!!」
ミレドが横で焦っている姿が目に入る。
「どうかしたのか、ミレド?あの魔物に何かか‥‥‥」
「ネスク!!今すぐアレに圧力を加える魔法を使うじゃ!!急げ!!」
話を遮られた上にその慌てようでただならぬ事が窺える。
「わ、わかった。【重力加重】」
言われるがままに、【重力加重】をその魔物?に使う。既に兵士の魔法がその魔物らしき物に命中している。そして、その体が大きくなっているように思える。
【重力加重】でその体が地面にめり込む。
「【加重の壁】」
ミレドが【重力加重】の上に更にソレの周りに【重力の壁】を重ね掛けする。魔物らしきソレがめり込んだ体に力が加わったことでぺしゃんこに潰される。
そして、ソレが急激に縮み爆発を起こす。
地面に直径50mのクレーターが出来上がる。
「!!!まさか、これは‥‥‥」
ソレを見てグラス団長も俺も理解する。
ミレドから報告を受けた
"自身を爆発させて吹き飛ばす魔物"であることを。
再び振動する。
あと九体の同じ魔物が姿を現す。
「本番はここからじゃ。少しでも失敗すれば、一瞬で守るべき者も吹き飛ばすぞ。」
ミレドの一喝でここにいる全員が冷や汗になる。一体でも漏らせばほんの一瞬で壊滅する。




