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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
123/347

伝説の武技

更新します。前回更新できませんでしたので、もう1話更新する予定です。

  【ヘリアンテス】の光がワイトキングを貫き、ワイトキングの背後に大きな穴を空けた。

  月の光がワイトキングを照らす。

 体の中心と頭を潰されたワイトキングの体が佇んでいる。


  脳を潰されたためもう動くことは無い筈だ。


「‥‥はあ、‥‥はあ、‥‥はあ、‥‥はあ」



  視界がぼやけ、呼吸する事が辛い。


 先程から耳鳴りも始まっている。魔力欠乏症の症状が出始めているのだ。

 これ以上魔法は使えない。


  頭上の向日葵(ヘリアンテス)の花、そして兵士を守った蔓が光の塵へと返っていく。

 役目を終えたモノが魔素へと変換されているのだ。


  【ヘリアンテス】で穿たれた部屋の地面が抉れる。

 数の減ったワイトがまだ数十体は残っている。

  こちらに近付いて近付いて来ているが、蔓の盾から解放された兵士が対処しているため大丈夫であろう。あちらの兵士は呆然としている。


  しかし、あの兵士達が我に返り、進軍を始めればその時こそ、こちらが全滅するその前に手を撃たなければ、


  そして、何より気掛かりな事があの黒い男。


「姫様っ!!」


  その声の後、そこで意識が一瞬、途切れた。

何が起きたのかわからない。

―――次に目を覚ました時には、

地面に突っ伏していた。

  突っ伏したまま顔を上げる。さっきより戦っている兵士達が遠い。


「う、がっ!!!!」


  背中、腹部に痛みが走る。

 そして、視界の隅が赤い。拭うと指にベットリとした液体が付着する。


「これ、は、‥‥‥血?」


  何時の間にか頭から血が流れていた。


「う、ぐっ!!!」

 

  更に痛みが増し、激痛が走る。


「‥‥‥‥確実に止めを刺したと思ったのだが、‥‥‥‥壁に激突をしても生きているとは、案外しぶといのだな、王女殿下。」


  激痛に突っ伏したまま踞るあの男の声が聞こえる。


「あな、たは、‥‥‥確かにあの方が、倒した、筈で、す。」


  炎の壁で遮られたとはいえ、炎に映る影は確実に攻撃を捉えていた。

 静かな足取りでこちらに来る。その足取りは正に暗殺者さながらの足取り。

靴音が全くしない。

 何とか体を起こそうとするも、体が言うことを聞かない。先の魔法による魔力欠乏症に加え、この男からの攻撃によるダメージによるモノだ。


「あんなダメージで俺は倒せない。それに、俺が武技のみしか使えないと思ったのか?」


「っ、あなたは、まさか!!」


  能力に()()()()()()()が過る。その昔、魔王が生きていた時代にその能力は生まれた。


「俺の武技は、『断裂の型』。そして、俺の魔法属性は【水】、ここまでいえば、もう予想出来るだろう?」


「やはり、そうですか!」


  それは伝説上にも登場する物だ。

『断裂の型』は、型を繰り出すだけで剣撃の衝撃が全てを切り裂く型。そこに魔法【水】が加わると見えない斬撃が敵を切り裂いていく。

―――それは、別名『見えずの型』とも呼ばれている。間合いも見えず、兆候もわからない。

 分かるのは型が発動する事のみ。


  今までこれを避けれたのは本能的な物だ。それに運もある。あの兵士の方も恐らくそんな感じなのだろう。

 この型で既に命を落とした者は数えられない。


「姫、様‥‥‥」


  よろめきながら全身血だらけにしてあの女性兵士が寄ってくる姿が目に入る。緑の髪はドルイドのモノだが、瞳の色が黄色。


「お前、‥‥‥『()()』か。半人前分際の奴が俺の前に立つな。

 半種は半種らしく、野でくたばっていろ。」


  半種、他種族同士で生まれた子をそう呼ぶ。所謂、世間では『混血』と呼ばれる。

 ポーアは、その言葉に怒りを覚える。

『半種』とは、差別用語の一つ。

 種族のどちらでも無い者をそう呼ぶ。

 男の刃のような冷たい言葉が響いた。


「姫様、だけは、必ず、お助け、します。」


  ふらふらとしながら剣を構える。


 対する男は、振り向き何もしない。

両手の小刀を握るだけで構えもしない。


「あなたは、あなただけは!!

相討ちになって、でも、撃ち取ります!!!」


 女性兵士が切り込む。


「炎よ、剣に纏いて、ぐわっ、敵を、切り裂け!!【爆炎斬(エクスプロ・テラ)】!!!」


  炎が剣を纏う。


しかし、炎の威力が弱い。

既に尽きかけているのだ。


「これで、終わりだ」


  男へと剣を振るう。男は剣を振り下ろされそうになっているが何もしない。


「‥‥‥お前のその技はもう見飽きた。

 ‥‥‥‥散れ。」


「っ!!」


  目の前で血飛沫が宙を舞う。その女性兵士が倒れる姿が目に入る。そして、斬られた箇所から血が飛び出て血溜まりとなっていく。あれ程、わたくしの為に尽くしてくれたその兵士が無惨に斬られた。

 目の前が真っ白になる。


「これで‥‥‥トドメ。」


  無慈悲なその声が聞こえる。小刀が振り上げられる。


「い、や‥‥‥。ダ、メ、‥‥やめ、て!!」


  ポーアのその声は男に届くことがなく、剣が振り下ろされる。


(誰か‥‥‥。ネスク様!!!)


  あの時、偶然とはいえ自分を助けてくれた少年が脳裏を過る。淡い期待が浮かぶが、そんな事などあり得ない。

  あちらも激戦を強いられているであろうに助けを求めるなど合ってはならない。

  只でさえ、こちらの事情に関わらせているというのに、自分の不甲斐なさ、無力な自分のためにそう願うことは傲慢だ。


―――でも、願ってしまう。


  彼の持つ強さに、頼ってしまう。

……彼の優しさに。


「ネス、ク様!!!」


  部屋の床の水気が徐々に高くなっていく。


「【霞の大地】」


  男が振り下ろした剣は白い霧を切り裂く。しかし、そこに女姓兵士の姿は無い。


「!!!」


  男が咄嗟に振り向き両手の小刀でガードする。


「あらよっ!!」


  軽い声の後に衝撃が叩き込まれる。


「ぐっ!!!!」


  衝撃に顔を歪ませる。そして、そのまま吹き飛ばす。


()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」


  霧の中でその声が響く。


「っ!!!」


  目が熱くなり涙が溢れる。


「悪い、待たせたな。よくここまで持たせた。後は任せろ。」


「おぬしも無茶な魔法の使い方をしたせいで体内の魔力の流れが乱れておるから休んでおれ、ここは妾達がするからのう。」


  聞き覚えのある二人の声に安堵したせいか、魔力の回復を体が欲しているかは分からないがそこで意識を失う。

 最後に見た光景は、二人の背中であった。

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