激戦 後半
更新します。
女性兵士が剣を振るうと、彼女の剣筋に沿って剣に纏う炎が火力を上げて一気に爆発を起こす。
対する男は爆発を軽く躱し、再びあの逆手の小刀を前に構える。
―――すると、爆発による爆風の幕を切り裂いて彼女へと迫る。
「っ!」
咄嗟に剣を円状に回して爆風を起こす。
見えない何かはその火力で攻撃が逸れて、
彼女の頭一つ分横を掠めて飛んでいく。逸れたが、ヘルメットに傷が出来る。
あれがもし、首に当たっていれば恐らく何かが触れた瞬間に首が宙を舞っていただろう。
今の所は力が均衡しているが、それも時間の問題であろう。先程から彼女の息が荒い。
あの魔法は魔力消耗が激しいのだ。
火力の高い魔法はそれだけ消耗が激しい。
【ヘリアンテス】が良い例だ。
対する男はまだ余裕があるのであろう。息を切らしておらず、魔力消耗による症状が皆無に等しい。
クラクラする頭で考える。時間稼ぎをしてくれている彼女のためにも、何としても見つけ出さなければ目の前にいる男の仕掛けを。
(あの"何かが発動する直前の構え"からして武技の類いなのは間違いない筈です。)
"ソレ"が発動する時に男がする構えを思い出す。右手、もしくは左手を前に構える。
すると、発動して自分の任意の場所に"何か"を飛ばせる。そして、その前に立ちはだかる物体は全て真っ二つに切り裂かれる。それからして斬撃による攻撃なのは間違いない筈。
武技が発動する条件は何かを考える。
一つ一つを思い出していく。
まず、一つはあの構え。
これは既に分かっていることだ。
発動させる直前に毎回している構えだからだ。
その次に恐らくだが、小刀を逆手に持つ事も条件の筈だ。逆手にする前、【蕾の盾】で防いだ時は普通に小刀で攻撃をしていた。
"何か"をその時に使えば、その時点で確実に彼女は殺されていた。
そしてもう一つ、
「っ!!」
思考が中断され、意識が飛びそうになる。直前の所で足を踏ん張り体を支えるが、早くこの戦いを終わらせないとこちらが先に尽きてしまう。
「‥‥‥血を流し過ぎました。」
反動による傷から血が滴り落ちる。
人は、血を失い過ぎると出血死する。意識が飛び掛けたということは、既に、それに近い状態にあるということだ。スカートの一部を破いて傷の箇所を縛って、一時的な物になるが、
無いよりは多少マシだ。
そうこうしていると、自身の周りに光り輝く魔法陣が一層光りを増す。頭上の花へと、目を向ける。宝石のように花の中心、タネが密集している部分が輝く。充填完了の合図だ。
「やっと、ですか。」
魔力充填が終わった事に安堵が込み上げて来るが、今は目の前の危機へと思考を戻す。
目を戻すとワイトの大群が迫って来ている。それを必死に防衛する兵士の姿が目に入る。
最後の仕上げだ。
「ξЯЙЁ、ξЯЙЁ、ξЯЙЁЖΣΘλ、ψфπЫζЦйзюЯёЁκχωΨΞ(廻り、廻りて、空へと廻れ星よ導き天へ還せ)」
ドルイドの言葉で呪文を唱える。
花に集められた膨大な魔力の塊が更に輝く。
目を空けていられない程の明るさとなる。
しかし、私には見える。
【ヘリアンテス】の花を通して見える。
迫り来るワイトの大群は目と鼻の先、およそ5五◯m程である。
「‥‥‥厄介な事を、お前より先にあちらを片付けてやる。」
男がこちらに気付き、走り寄ってくる。
「させません!!炎よ、穿ちて、地となり、壁となれ【炎の壁】!!!」
炎の壁が男の行く手を阻む。
そして、その背後から炎を纏わせた剣で斬りかかる。
「ぐっ!!」
男が初めて苦痛の声を上げる。こちらの攻撃に焦った事で初めて隙が出来たようだ。
「言った筈です!!姫様には指一本、触れさせないと!!」
「退けっ!!」
男が短刀を力づくで、女性兵士の燃える剣を振り払う。
剣をガードした短刀が溶けることなど無視してガードした手と反対の手で再び前に構える。
"何か"が女性兵士に襲いかかる。
"何か"はヘルメットを捉えて切り刻む。
―――しかし、捉えた中は空である。
女性兵士は構えるポーズを見た瞬間に剣の力を緩めて下へ潜り込む。その際に脱げたヘルメットが代わりとなり、そのまま下から剣の柄の所で付きを顎に食らわせる。
「姫様!!!!」
炎の壁で顔を拝見することが叶わないが、それは後で拝見するとしよう。
(ありがとうございます!!)
心の中で感謝しつつ呪文の続き、最後の呪文の言葉を口にする。
「ΞЁωΨюЯЁΘΣфζΔнЙπΣη┛∈∂∬∝ΛερσД(全てを還し、光となり、全てを穿ちて無にせよ。)」
右手を突き出してワイトとワイトの先にいるワイトキングに照準を合わせる。花の目を使い味方の兵士達に花の蔓を伸ばして保護をする。
「【ヘリアンテス】限界突破!!発射!!!!」
全てを穿つ光の光線が一直線にワイトキングへと突き進む。一発目より強大な光線がワイトキングを穿つために群がるワイトを燃やし尽くしていく。
ワイトキングもその光線を恐れて、ワイトを肉の壁にすべく動かすが意味をなさない。
全てを燃やしながら威力が落ちることなく、ワイトキングへと迫る。
繭の如く丸く包まれた【ヘリアンテス】の蔓は光線に当てられても燃えることは無い。
「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!」
ドルイドの全ての者の希望の光がワイトキングの目前に迫り追い詰める。
肉の壁の影響もあり発射時より威力は落ちているもののワイトキングに届く。ワイトキングに届くことなど無かった一発目、それが届いた。
しかし、ワイトキングキングの体は硬質なようで貫通まではいかない。
「【廻れ】!!!」
左手を突き出して、右手と左手を左右反対に回す。光線に回転が生まれる。
そして、ワイトキングの皮膚を貫いて風穴を開ける。