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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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風魔法の暗殺者

 

「我の魔法属性を見抜いたか。これは驚きだ。」


  引き抜いた左腕の傷口からドクドクと血が流れ出る。


「足音、動く際の音、そして、空気が揺れる音、それを全て【風】魔法で打ち消していますね?」


  以前、ネスク様から聞いたことがあります。

 私を助ける際に私にも気付けなかった魔法【隠匿】は、風魔法による物だと。

  風魔法で人の独特の気配や匂い、そして、音を遮る事で私のような五感に鋭い者の鼻や耳ですら、誤魔化す事ができる。


  しかし、この魔法にもしっかりと弱点がある。

  まず、普通の者なら聞き取れないが、風魔法であるため風魔法で起こる風の音は防げない。

  これは、匂いにも当てはまる。

  嗅覚に鋭い者には匂いの流れという物がわかる。私を追ってきた盗賊の一人はこの流れという物が感じ取るに優れていたのであろうと話していた。


「ああ、その通り、我はそれにより、音を遮断する事で今までやって来たのだ。」


「‥‥‥そうですか。」

  やはりこの人は強い。

  風魔法の扱いに長け、その上、先程からナイフを正確に投げて飛ばして来ている。恐らく、それも風魔法による応用。

  ここまでの手練れは今までに見たことない。


「そこまでの技術をお持ちでありながら、どうしてそちらの道にいるのですか?国に仕えれば、その力で幾らでも国の為に貢献することが可能でしょうに。」


  何者かはわからないが、生まれたからにはどこかの国に生まれた筈だ。

 その国に仕えていれば、贅沢な暮らしも恐らくは、可能な筈だ。


「お喋りはここまで。ソナタを早く殺めて逃げたソナタのお仲間を追わねばならぬからな。」


  クーシェの問い掛けに答える事無く、片手にダガーを再び備える。

  空いていたもう片方の腕にも同じダガーを装着しているのが見えない手元から感じ取れる。


(‥‥‥来ます。)

  音が無く踏み込まれる。片方のダガーが振られ、それを避けるも予備動作も音もなく、もう片方のダガーが連鎖で振るわれる。


(くっ、速いですね。しかし、)


  音が無いがそれでも実際の速さより、緩やかに動いているように見えて紙一重で躱わせる。


  しかし、今現在は左腕が使えない状態だ。

  避けるだけで攻撃へと転じる事が出来ない。


「どうした?躱わすだけでは我を倒すことなど出来ぬぞ?」


  攻撃に転じる事を許さないダガーの攻撃の速度が上がる。


(なら、これならどうですか!!)


  クーシェは、ダガーによる攻撃があたるギリギリまで引き付けて避け、残っている右腕を軸に振り上げられた片方の腕に向けて蹴りを食らわせてダガーを上へ突き上げる。


  突き上げられたダガーは洞窟の天井に突き刺さる。


 バク転のような姿勢から直ると、右足で次は足凪ぎをくらわせようとする。

 しかし、


「甘い、獣人の娘よ。」

  その足凪ぎを跳んで避ける。そして、流れるように跳んだ足をパンチのように顔面に叩き込もうとする。


  咄嗟に右手でその足をガードし、足が飛んでくる方向へと、退く。

  衝撃が走ると同時に退いた方向へ更に弾き飛ばされる。


「キャアッ!!!」

  退いた事で少しは弱めたものの、それでも強力な力で軽々と吹き飛ばされて、地面を擦りながら止まる。


  体中が擦り傷で痛い。

 その上、さっきの攻撃の衝撃で恐らく右手を痛めた。


「そんな状態ではもう戦えまい。

もう抵抗出来ぬヤツから命を取るのは忍びないが、‥‥‥しかし命は取る。

この先、邪魔されるのは厄介だからな。」


  ヤツが近づいてくる姿が見える。その手のダガーが妖しく光る。

  痛めた腕を抱えながら何とか立ち上がる。

 頭がクラクラする。

―――先程から感覚が遠く感じる。


「今頃になって、最初の神経毒が回ってきたようだな。効き目が遅いのは『灼熱の狼』のせいであるか。」


  クーシェは、その言葉を聞いて驚く。

「なんで、それを知っているのですか?

私は一度も言っていませんが‥‥‥。」

  男がこちらに近づいてくる。視界がぼやけるがしっかりとその姿が目に入る。


「その目と耳、更に先程からの五感の鋭さと特徴的な戦い方。我は"一度でも戦った事のある者の種族"は忘れぬ。」


目の前の人物が言っている意味が理解出来ない。

「あなた、は、一体何を言っているのですか?」


  背中が撫でられるような感覚を覚える。

 毒のせいかはたまた、別の何かの原因のせいなのかは理解出来ないが、先程から寒気が止まらない。


「もう四ヶ月前になるかな。

 とある殲滅戦に参加してな、その際に手強い者と殺し合いをした。

その者がソナタと同じ髪と目をしていた。」

  心臓がドクンと大きく跳ねる。


四ヶ月前、自分達が襲われたあの日と同じ日。


「後になって、その者の名を知ったのであるが、何といったか、えーと、確か…。」


 足を動かしながら、持っているダガーをクネクネと手で弄びながら考える。

  体が次に出る言葉を聞きたくないと拒否反応を示している。全身の毛穴が逆立つような感覚、更に体温が上昇するかのような体感を覚える。


「あー、そうであった。そうであった。確か『フルス』とかいう戦士であった。」

  クーシェは上昇していた体とは裏腹にそれを聞いた瞬間に頭が真っ青になる。


今日の分です。

両手を負傷したクーシェ、そして明かされる真実。

それを聞いた時、クーシェの体の中でとある変化が発現する。

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