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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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命を賭して

前回更新できませんでしたので、二話更新します。

「恐らくここに入る所を見られていましたね。」

  クーシェがポーアを見る。

 ポーアはまだすくみが抜けていないようで顔が凍り付いて動けない。


(このままではあの人に反応出来ません。)


  突然の奇襲だというのに、クーシェは状況を冷静に把握する。


  この人、強い。

  黒装束の人の体から出ている魔力のオーラで肌が逆立つ感覚を覚える。

  獣人族は五感が鋭いため魔力を色として目で魔力を識別することが出来る。


  この人からは黒い魔力の色が見える。

ちなみにネスクやミレドはオーラの色が白。

  黒はネスクやミレド程ではないにしろ、それでも強力な魔力を持っている。

  その強さの上に先程から全く足音がしない。まるで人間の重みが無いかのように全く足音がしなかった。


「ドルイドの娘よ、『魔力塊の樹液』を渡せ。そうすれば命までは取らぬ。‥‥‥‥‥渡せ」


  その足で近づいてきて約五◯m先で止まる。そして、ポーア様へと手を出して渡すように施す。


「ポーア様、立てますか?」


 クーシェが小声でポーアに聞くと、「ええ」と言い立ち上がる。その間も臨戦体勢は崩さない。

 ポーアは先程の攻撃でのすくみは取れたよう。その表情には確固たる決意が込められている。


「そういう訳には参りません!

 一度神木様から取り出していまいますと、数年間は取り出せません。

 どなたか存じませんが、一刻も早く結界を結び直さなければこのまま、私達一族は魔物に食われてしまいます!そこを退いて下さい!!」


  ポーア様のその言葉には強い念が感じられる。それは揺るぎない物だ。そして、その瞳にはドルイドの一族に対する強い思いを一心に目の前のこの何者かを見ている。

  すると、目の前の人物は手を下ろして沈黙する。






「‥‥‥フッ。フフフ、クハハハハッ!!」


  クーシェ、ポーアはその場で困惑する。目の前の人物が突如笑い始めたからだ。


「何がおかしいのですか!!」

 

  ポーアが怒鳴る声が部屋全体に反響する。


「ハハハッ!!、これが笑わずにいられようか!己の一族が己の一族の手によって滅びる!!こんな茶番劇で笑わずにいられる程、我は感情が乏しくは無い。‥‥‥‥笑わせくれた礼だ。

―――教えてやろう、あの魔物は"我々と、ソナタらの一族"の者が起こしたことだ。」


  それを聞き、心が凍り付く。私はまだショックが少ないが、ポーア様は青かった顔が更に真っ青になっていく。


「今、‥‥‥何と、言ったの、‥‥‥ですか」


「何度でも言ってやろう。

 アレは我々とソナタらの元々の、同胞による者の仕業だ。因みに抜け道の場所もその者の情報で既に手を回している。既に住人の殆どがその道を通り抜け出そうとしているのであらうな。情報によると、その中には、此処の重鎮の者らも混じっているとか。

 クフフフッ!!ソナタらはコレが開始した時に既に詰んでいるのだ。ハハハハッ!!」


  その人物の笑い声が反響して回る。

ヘタリとポーア様が地面に座り込む姿が目に入る。


(マズイです。ポーア様の魔力が少なくなっていっています。)


  魔力は精神力に影響される。ポーアの精神が揺らいだことで魔力が減少し小さくなっている状態だ。このままでは立ち直れなくなる。


「ソナタらの守るべき者は既にいない。

‥‥‥さあ、それを渡して貰おう。渡さないのであれば、ソナタらを殺めて奪い取るだけだ。」

  止まっていたその者の足が再び歩みを開始する。やはり足音がしない。


「ッ!!」


  ヤツがこちらに接近する前に踏み込む。

 臨戦体勢に入っていた体を動かして、目の前の者へと、飛び込んでいく。


「‥‥‥愚かな。」


  振り上げた腕にはやはり音が無い。

 いつの間に装備していたのか、ギザギザのダガーが装着されている。

 そのダガーが体に刺さる寸前まで迫る。


  ミレドの教えが脳裏を過る。


『 よいかのう、クーシェよ。

 どんな生き物にも、必ず動いた際の何かしらの予兆のような物が何処かにあるのじゃ。

  おぬしは五感が鋭い。じゃから、まずはその予兆を探れ。


  少々、後手に回るかもしれぬが、おぬしはそれに反応できる動体視力と瞬発力を既に備えておる。

 それはおぬしら一族の代々からの特徴じゃ。

  それを活かしてみせよ。』


(よく見て‥‥‥探る。)


  振りかざされる寸前の攻撃を体を捻って、右に避けて黒装束のその人物の脇腹に一撃を入れる。

  洞窟の壁にぶつかって煙を上げる。


(軽い、ですか。寸前で横に飛んで威力を弱めたのですね。)


  飛んでいったその人物にいれた左手の感触を確認して予想する。


  はっと気付き、


「ポーア様!!今の内に行って下さい!!」


  ヘタリ込んで動かないポーア様へと声を張って掛ける。

 しかし、動かない。

 心が沈んでしまっているからだ。


「今ならまだ間に合います!!私達をここまで連れてきたのはポーア様でしょう?

 なら、出来る筈です!!」


  垂れて項垂れていたポーア様が顔を上げて見つめてくる。


「‥‥‥クーシェ、様。」

  絶望の色はまだ抜けていないが、それでも声を出せる程にはなった。


「どんなに絶望な状況でも、立って下さい!

前へ踏み出して下さい!!

 ネスク様やミレド様も恐らく、命を賭しているのです!!ポーア様だけこんな所で、」


  ポーアへと声を張っているその時、

「‥‥‥そうさせる訳ないであろう。」


  ナイフがポーアに向けて放たれる。



 瞬時にポーアの前へと飛ぶ。

  血が溢れ出る。左腕に突き刺さったナイフ。

 切り口が熱い。


「クーシェ様!!」

  悲痛な声が後ろから聞こえる。


「‥‥‥‥失礼、します。」

  クーシェは、突き刺さった左腕と逆の右腕で振り返り、ポーアの体を掴み、入口へと思いっきり投げる。


「キャアア!!!」

  ポーア様の体が入口を通り越して暗闇へと見えなくなる。

  空気が揺れる音が聞こえる。

 左腕のナイフを引き抜いて空気が揺れているその場所へとタイミングが合うように投げる。

  ナイフを投げると同時に思いっきり、地面を蹴り入口上の壁へと飛び、そのまま。


「【身体強化(ストレンジ)】」


  力を更に強化して壁を殴る。

 殴った壁は土砂となり、入ってきた入口をすっぽりと塞ぐ。

  再び空気が揺れるような音を聞き、身を翻して、地面に降り立つ。

  殴った壁、先程いた場所にナイフが突き刺さっている。


「‥‥‥これであなたと二人きりですね。隠れるのは宜しいですが、既に私には通用しません。」


「既にこれも通用せぬか。なら、別の手でソナタを殺めてから『魔力塊の樹液』を取りにいくまで。」

  再びその人物が姿を現す。

 やはり、音がしないがそれは既にタネが分かっている。

「【風】魔法ですか。」

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