迫る脅威
遅くなりましたが更新します。
ネスクは走りながら、辺りを確認した。
逃げ惑いながら避難するドルイドの人達、
それを先導する若い兵士の人達。そして、破壊された家に火の手が上がる。
前方では既に魔物と交戦している兵士の人達がいる。
どうやら若者を避難誘導に、先立つ者が魔物の群れの対処に回しているようだ。
「それで、‥‥‥‥ネスクよ。何か策はあるのかのう?」
横を走るミレドが話し掛ける。
前回同様、
ネスクとミレド、クーシェとポーアの二手に別れた。以前一緒に対処したためその方がお互いの手の内が分かる。その方が都合が良いからである。
「さーてな。
‥‥‥‥まだ具体的な対処法は考えてない。
ただ。これだけの魔物を一つにまとめておくことなんて、そう簡単な筈がない。
どこかに群れを指揮する魔物か、何か別の物がある筈だ。まずはそれを潰す。」
既に大量の魔物が侵入してきている。あちこちで数人の兵士が戦っているが、数が多すぎるためこちらが消耗するだけ。ジリ貧である。
前方で戦っている兵士の一人が魔物の勢いに押されて前方で転ける。
そこをすかさず、魔物が襲おうと牙を剥く。
「ひ、ひい!!だ、誰か!!!」
魔物の威圧感で兵士が悲鳴を上げる。
ネスクは速度を上げて急行。
「【加速】」
腰に下げる愛刀の柄に手を添える。
そのまま魔法で加速してスピードを上げ、
そのままの勢いで魔物を通り過ぎる。
ネスクが刀を鞘に戻す音と共に魔物が二つに斬れて兵士の人を通り抜けた。
ネスクはそのまま別に迫る魔物を切っていく。
●◯●◯●◯
「‥‥えっ、俺、生きてる、のか?‥‥‥‥何で?」
魔物の返り血を全身に浴びながら、自分の無事に混乱している。あと一歩遅れていたら、その兵士の言うとおり、頭から喰われて無惨な姿へと変貌していた。
「大丈夫かのう、おぬし。」
その兵士に声を掛けて手を差し伸べる。
「へっ?え、せ、聖龍様!?あなた様が私を?!あ、ああ、ありがとうございます!!」
兵士がお礼を言ってくるが、お礼を言う相手が違う。
「妾じゃなくて、ネスクにいうんじゃな。」
尻餅を付いた体勢から起こしながら言う。
そして、転がっている剣を地面から取り渡す。
「えっ?あなた様、でなないので、すか?」
兵士は驚愕の表情を浮かべる。
「うむ、おぬしを助けたのはそこで闘っておるネスクにじゃ。」
首をくいっとしながら、後ろで魔物を切り伏せていくネスクを指す。
「だから、後で礼を言うじゃぞっと!!」
後ろに裏拳を飛ばす。そこに魔物の頭がめり込むように突撃してきて吹っ飛ばす。
魔物が吹っ飛び後ろに控えていた魔物を巻き込んで飛んでいく。
「数が多いのう。隙あらば襲ってくるということかのう。これは確かに何かあるのう。」
手刀の形を取り魔物に斬りつけていく。
ミレドへと牙を剥いた魔物が解体されていく。
「何、ぼさっとしておるんじゃ!!
おぬしも早う他の救援に向かわんか!!ここは妾がする、じゃから、さっさと、行け!!」
ネスクとミレドの戦いぶりに呆けていた兵士を一喝。そして、拳に魔力を込めて魔物で黒く染まった一角へと叩き込む。
他の兵士のいる所への一本道を作ってやる。
「!!、は、はい!!お願いします!!」
他の兵士を従えて、助けた兵士が一本道を走っていく。その兵士へと尾に針のような物がある魔物がその棘を飛ばす。
「【盾】」
兵士と飛来する棘の間に透明な壁が出来て針を弾く。
「【護身盾の棘】」
透明な壁が変化し、攻撃を加えた魔物に刺のような何かを飛ばし魔物を襲う。何かが通過したかのように魔物の体にぽっかりと、空洞を作り魔物を確実に狩り取る。
「援護はここまでだ。いつまでもこいつらを
ここにのさばらせる訳にもいかないからな。
一気にやる。」
ネスクが呟く。魔物の返り血で体中に魔物の血がベットリと付いている。愛刀も魔物の血が剣先から地面に滴り落ちている。
「奇遇じゃのう。妾も同じ事を考えておった。
流石は、我が弟子!!考えることは同じじゃのう?」
ミレドがネスクの背後に華麗に飛び下りる。
ミレドの服も返り血で赤い跡を残し、その手には魔物の血がベットリと付く。
背中合わせの二人を魔物が取り囲む。魔物は魔力の強い者を襲う性質を持つ。先ほどからの攻撃で魔物達は特大の餌に釘付けとなり、兵士達を見向きもしなくなった。
「‥‥‥死ぬなよ、ミレド。」
「はっ、誰に物をいっておるんじゃ、おぬし?これでも何千年も生きておるんじゃ!
このぐらいで怖じ気づく筈なかろう!
それに‥‥‥前のアヤツよりかは全然、楽勝じゃ。」
背後で闘気を感じる。声が嬉々としている。この状況を楽しんでいるのだ。
更に、ミレドの魔力が上昇していく感じがする。
「‥‥‥‥‥確かにな。アレを経験したら、幼稚に見えるな。それじゃ、行こうか!!」
背後のミレドに安心感を感じる。これほど頼れる師匠(相棒)はそういない。
刀を構え直して魔力を更に解放する。
「【深淵へと誘う霧】」
ネスクの魔力が霧となって魔物の群れを包み込む。
背中合わせとなった二人が視界ゼロの霧の中で動く。
「【鋭爪】」
ミレドが自身の武器を作る。
「「【纏・雷】」」
ネスクとミレドの体から、雷が発せられて二人の速度が上昇する。
そして、魔物の駆逐が更に過激になっていく。
ミレドとネスクの駆逐が始まりました。
因みに、グラス団長もミレドやネスク方面にいますが、その話は後にします。次回は、ポーアとクーシェ側からの話です。