表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
104/347

戦力強化と進行開始 後半

前回に引き続き、後半です。

「ぜえ‥‥‥はあ、‥‥‥はあ、‥‥はあ」


  息が上がる。

 始めてからずっと休憩することなく、彼等の相手をしているため意識が朦朧である。



  最初の突撃を回避して少しずつ、けれども確実に一人ずつ相手をしている。


「「「やあああっ!」 」」

  再び兵士が切りかかろうと迫る。それも全方位から同時に迫る。


「っ!!」

  瞬間、足に魔力を付与させる。

 四方向全てから構えていた木刀が振り下ろされる。



振り下ろされるもそこには誰もいない。


  彼等の頭上を回転しながら飛び、背後に降り立つ。地面に足が着くと同時に前方にいる彼等の方へ踏み込む。


「すぅ‥‥‥‥はあ!!」

  足に移していた魔力付与を木刀に戻す。

 木刀に纏った魔力が拡大して木刀の丈の何倍にも大きくなる。それを彼等に振る。


「「「「うがっ!!」」」」」


 四人同時に薙いだ方に吹き飛び動かなくなる。



 かなり威力は弱めたため、死んではいない筈だ。


「ぜえ、‥‥‥ぜえ、これで、最後か?」

 

  周りを見渡す。全員倒れ伏している。うめき声を上げている者や意識はあるが痛みで立ち上がれず動けないでいる者、様々だ。


「おぬしにしては時間が掛かったのう。」


 背後から声が掛かる。

 元凶であるミレドだ。ミレドの開始の号令から三時間は恐らく経過している。


「当たり前だろ!お前と違って本気で殺りに来てたんだから!!」


  何故ここまで時間が掛かったかというと、兵士全員が殺りに来ていたため。

 ミレドの時より剣筋が鋭く、多少の戦闘不能にしても、意識を奪わない限り倒してもゾンビのように湧いてくる。


  ミレドの時には使用しなかった魔法の類いも使用し、今まで訓練で培った連携で攻めてくるため非常にやりにくかった。


「まあまあ、落ち着け。‥‥‥それ、水でも飲むかのう。」

  どこから汲んできたのかいつの間にか竹の水筒を持っていた。それを渡されて飲む。


  水が冷たくて美味しい。


「因みに先程、妾もそれで飲んだからのう。」


「ブッ?!」

  口に含んだ水を盛大に外に噴射してしまう。


「‥‥がっ、げほっ。おい、ミレド!!」


「ぬっ?おお、すまぬ、すまぬ。まさかそこまでとはのう。初々しいのう、おぬしは。」


  小悪魔じみた笑顔をしながら、謝る。


 全然、謝れている気がしない。

 気管に入ったためにむせる。


(絶対わざとやってるだろ。)


  ミレドの様子から推察する。そうこうしていると、兵士の人達が起き上がれるようになったのか。段々と立ち上がり始める。


「派手にやってるな。」

  見知らぬ声が聞こえて振り返る。


「こうでもせんと、こやつらは強くならんからのう。それに手段を問わずに飛びっきり強くして欲しいと頼んできたのは、おぬしじゃろ?‥‥‥のう、"団長殿"」


  振り返ると体格がガッチリしている男の人が倒れている人を避けながら、こちらに歩いて来ていた。顎髭を携えたその人物、他の兵士の人達より強いのは一目瞭然である。


「まあ、確かに言いはしたが、ここまで俺が一応育てたこいつらをボコボコにするとは聞いてなかったからな、驚いた。」


  ドルイド特有の植物が肩から脇腹を通り、絡み付いている。


そして、軍の礼服を身に纏っている。


「この人は?」

  ミレドに聞く。


「おぬしは初めてじゃったな。

こやつは、"グラス・レルムル"じゃ。今回、

こやつらを強くしてくれと頼んできた奴じゃ。ここの騎士団長をしておる。」

  ミレドに向いていた視線を男へと向ける。


「俺はグラス・レルムルだ。ミレド様、

この坊主があなた様の"噂の弟子"か?」

 グラスがミレドに聞く。


「噂は知らぬが、そうじゃ。今倒れておるこやつらをここまでしたのはこやつじゃ。」


「‥‥‥‥‥ほう。」

  顎髭に手を置いて観察してくる。

 興味深そうに目を上から下へ前後させて、観察される。

  (何か嫌な予感がする。)


「えっと、俺はこの辺で‥‥‥‥。」

  物凄い嫌な感じをしたためこの場を立ち去ろうとする。


 背後を見せてその場を離れようとする。

 しかし、


「待て、坊主。‥‥‥俺と一試合やらないか?」


「‥‥‥‥‥‥はい?」

 背中を見せていた姿で肩に手を回されて進めなくなる。予感が的中してしまった。


 ****


  薄暗い森の中を大勢の人数が列を為して進軍する。その列の中心にナザラが玉座のような椅子に腰かけて、ボロボロの服に首枷を嵌め込まれている人達に背負わせて運ばせていた。


  ナザラが外交の際に密かに入手した奴隷である。種族は様々だが、この中には同じ国の民であった筈の種族も混じっていた。

「ゲフンゲフン、人を上から見下ろすのは良い眺めだ二。」


  ナザラが見下ろしながら、辺りを一望する。

 暗がりの森の中を進む。


「そろそろ着くだ二な。おみゃーら準備を怠るんじゃないだ二!!もし、負けて戻ってくることがあるのだ二なら、その時はおみゃーらも奴隷としてこき使ってやるだ二よ!!覚悟するだ二!!!」

  ナザラの一喝で全員が身震いをする。


「おい、()()の準備も出来てだ二か?」

  ナザラが声をかけると椅子を担ぐ奴隷の横に黒装束の黒いフードを被った人物が現れる。


「はい、準備は出来ております。次いでにもう一つの()()の準備も調整出来ております。では、私も所定位置に着きます故、これにて失敬します。」

  そのまま暗闇に消える。


「ゲフンゲフン。

奴らの引き釣る顔が浮かぶだ二。

グフ、グフフフフフ、今夜が楽しみだ二。」

  醜悪な笑顔でナザラの顔が一杯になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ