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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
2章 亜人連合国騒乱編
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一日千秋

 

「‥‥‥‥ん」


  混濁する意識で目が覚める。

 まだ頭が眠気でボーッとしているが、どうやらここは神木の根らしい。


 上を見上げるとヒカリゴケの光が差し、天井を突き抜ける神木の幹が目に入る。


  ふと、重みを感じて右に目を向けると、


――隣でクーシェが寝息を立てて寝ている。


 体を包むようにふさふさの尻尾が彼女の前にあり、もたれ掛かっている。


「えーと、これは一体どういう状況なんだ?」

 

  クーシェが右にいるのは確認したが、


――左を向くとポーアがいる。そして、足を伸ばしていたのだが、自分の足を枕代わりにしてミレドがいる。


  それも、全身何故か血塗れ。

  それを見て、血の気が引いたが、呼吸と血の渇き具合を見て返り血であることは分かる。


(ミレドは一体、何処で何をしていたんだよ...。心臓に悪いから服くらいは変えてくれよ!!)


  ネスクの心臓が止まりそうになったのは、

露知らず、ミレドは幸せそうに寝ている。

 ポーアも疲れていたのかぐっすり眠ったまま起きない。


 両手に花、足にも花である。


『オオヅキ様、起きたのですか?』


  頭に少女の声が響く。ソフィアだ。


(ソフィアか?ああ、起きた。あれからどれくらい寝ていたんだ?)


『あれから三時間程です。ご命令通り、魔力供給を維持しつつ内部の魔力管理を行っておりました。これからも如何いたしましょうか?』


 ソフィアが指示を仰いでくる。少し考える。



(うーん、今現在の状況を知りたい。患者の容態はどうなっている?)


『重傷者は現在おりません。

まだ一部の人が毒に侵されておりますが、

粗方毒は抜けております。

 今現在は合併症として発症しております

『汚血』の治療を行っている最中です。

―――しかし、これも時間の問題です。

ですので、八割の患者が既に軽い症状へと変わっております。』


  俺達が寝ている三時間の間に

殆どの患者の状態が改善されているのか。

ヘイズさん達、優秀だな。


  内心で彼らの凄さに感心する。

 そして、指示を出す。


(ソフィア、その二割の人への供給は続行。

それ以外は供給をカットしてくれ。後は徐々に俺の魔力回復に回してくれ。)


『了解しました。では、これより実行に移ります。』

  夢の出来事を思い出す。

(ソフィア‥‥‥‥‥)


『何でしょうか?ネスク様。』

  ソフィアの起伏の無い声が返ってくる。


(ヒサカキに、夢で会ったよ....。)


『‥‥‥‥そうですか。あの子、元気にしてましたか?』

  動揺してはいないようだが、それでも少し答える時に間があった。


(ああ、ソフィアに会いたがってた。

 なあ、ソフィア。ヒサカキに会うことは出来ないのか?)


『‥‥まだリンクの安定の目処が立っていませんので、まだ会うことは不可能です。』


(‥‥‥‥そうか。)

  やはりまだリンクの安定が出来ていないのか。

 時間がかかる事は想定していたことだ。こればかりはどうしようもない。


『‥‥‥‥しかし、あの子が書庫の領域に入るのであれば可能です。オオヅキ様が承認して頂ければこちらから入庫する手続きをします。』


(えっ。……という事は、会えるのか?)


『‥‥‥‥はい。』

  その言葉にびっくり仰天である。

諦め掛けていたのだから。


(分かった。次に会った時に伝えておくよ。ヒサカキ、喜ぶだろうな。)


『はい。では、私はこれにて。』

  通信はそこでプツリと切れる。

 上機嫌なのかその声はどこかウキウキしていた。

(仲のいい姉妹だな‥‥‥。)


「ん?」

  左手の中に違和感があることに気づく。


 手を広げてみると楕円形の緑の石のような物がはめられたチェーンの付いたネックレスが手に収まっていた。


(そういえば、戻る前にヒサカが何か渡してきたな。ということはこれがそうなのか?)


  美しいエメラルド色の石がキラキラと

手の平で輝いている。目が吸い寄せられそうな程にキレイである。


(ポーアに渡すのは後にしよう。)

  横で寝ているポーアを見ると今起こすのは悪いと思う。


「‥‥‥‥‥‥‥動けない。」

  左はクーシェに肩を貸し、右もポーアに肩を貸し、足はミレドが占領中。


――皆寝ていて動けない。


「まあ、良いか。俺もまだ少し、寝よう。」

  そのまま、二度寝する。


 それから、もう二時間、ネスク達は寝るのであった。


 ******


「‥‥‥‥‥‥」


  いつになく上機嫌なソフィアがいつも通りに本を読む。表情はいつもと変わらないが雰囲気がぽかぽかとしている。

  周りにお花が咲いているかのようにほんわかとしている。


「‥‥‥‥‥あ、このお菓子、美味しそう。」


  本に載っているお菓子が目に入り口に漏れ出る。イチゴや桃、キウイなど様々なフルーツが一口サイズに切られトッピングされたタルトの写真が写っている。


(ヒサも確か、甘いお菓子が好きでしたね。ヒサが来るまでに一度作ってみましょう。)


  ヒサカキと再び再開できる日を待ち遠しく思いながら、パラパラと本を捲っていく。


「~♪~~♪」

  ホール全体にソフィアの鼻歌が響きわたるのであった。

眠る皆とソフィアの話がちょろっとでした。

妹思いのソフィアの可愛らしいシーンを書いてみました。

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