地獄に落ちた天使
朝起きたら、ママがいなかった。
週末だし、またゆっくり眠れるってラッキーと思った。
「マリア、ママはどこか知ってるのか?」
「知るわけないじゃん」
「そうよ。春彦さん。あの人なら、すぐに帰ってくるわよ」
お婆様の言葉に迷いはなかったから、私もパパもそうだねと安心してた。
夜になっても、次の日になっても、週末が過ぎて、月曜日が来てもママは帰ってこなかった。
パパから、マリアがママに言いすぎるからと言ってたけど、パパだって、同じじゃん。
ママがいなくなってすぐに夏休みに入った。
意地っ張りなママよね。みんなに心配かけて。
パパが週末だって言うのに、会社に呼び出されて慌てて出て行った。
帰って来たパパから、「会社が不渡り出した。もう、おしまいだ」と床に崩れ落ちた。
家中の電話が鳴り響いる。
パパが言うには、パパの会社は、ママの両親の会社なんだと言ってた。
パパが社長でも、パパは社長だけど、雇われ社長だから、何にも力はないって。
ママが会社の本当の経営者だって、初めて知った。
「な!!二人が結婚するときに、会社の名義は全てあなたにするって言ってたじゃない」
「母さん、何をしたんだ!!」
「え…会社を担保にちょっとお金を借りただけ「それは公文書偽造で詐欺だ。なんてことしてくれたんだ!!」
もうおしまいだ、俺も会社も全ておしまいだ。ブツブツと狂ったようにパパが壁に向かって呟いてる。
お昼前に警察が集団で自宅にやって来ると、段ボール箱に次々と書類を入れて行った。
夏休み開ける前に、パパのお願いで私は隣の県にある高校に転校させられた。
今まで貰ってた月3万のお小遣いもナシって言われた。
家も、差し押さえられて、引っ越した。
安いアパート。
お化けでも出そう。
もっとムカつくのは、お婆様。
私の宝飾品を全て転売してた。
自分のは一つも手離さないで。
「老い先短い年寄りから、物を強奪しようとするんじゃないよ。そんなことを考えるくらいなら、早くご飯を作っておくれ」
私は高校に行きながらも、パパに紹介されたバイト先でバイトした。
お金なんて持ったことないのに。レジ打ちでお金を握らされて、手のひらが痒くなった。
カード決済すればいいじゃない。
今まで持ってたカードは全て残高不足になってた。
これじゃあ、コスメも何も変えないじゃない。
一ヶ月間足が棒になるくらいに働いて見た。初めは渋い顔をしていた店長も「すぐに根をあげて辞めるかと思ってたけど、根性あるじゃないか。まだ若いんだ、頑張れよ」
初めてお給料に嬉しかった。
なのに、お婆様が全て銀行口座から降ろしてた。
学校から家に帰るとお婆様が新しい服を着て姿見の前に立ってた。
「もう、こんなのしか買えなくなって、恥ずかしくて表も歩けないわ」
「どこで買ったの?」
「何ですか、マリアさん藪から棒に」
「どこから、その服を買うお金を得たんですと聞いてるんです!」
額に筋を立てて聞く私にお婆様は次の服を楽しそうに自分に当てて、姿見の前でポーズをとってた。
「銀行に決まってるでしょ」
バカじゃないのと鼻で笑ってた。
「パパのお給料も、私のバイトのお金も全部、そんなことに使ってしまったの?!」
図星を指されて、顔を朱に染めたお婆様はため息をついた。
「ああ、たったあのくらいの金額でこんなに騒ぐなんて、情けない」
さすがは理沙子さんの娘ねの言葉を聞いた途端、ブチっと私の中の何かが切れた。
気がつくと、目の前に広がるのは、赤く広がる液体に塗れたお婆様だった。
お婆様がすべての元凶なのよ。
ママがいなくなったのも、家を追い出されたのも。
私は殺人未遂で重要参考人として任意同行になった。
未成年という事と義理の祖母からの虐待という事で、私は保護観察処分になった。
パパは面会には来なかった。
面会に来てくれたのは、ママだった。
「ママ…「私はあなたのママじゃないわ」
何で?
怒りと驚愕で見開く私の目に映ったものはDNA判定の書類。
私はパパともママとも血が繋がってなかった。
「あなたのママは死んだのよ…」
狂ったようにケタケタと笑いながら面会室を後にした。
ママはいなかった。
最初からいなかった。
私が欲しかったのはままだけだったのに。
ママ…
一気に書き上げたので、もし抜けてるところがあったら、コソッと教えてください。
書いていて、精神的にきつい内容でした。
リハビリのつもりだったのに…




