都市の合間
――――――――――――――――――――――――――――――
覗き込むと、彼のセピア色の髪がさらりと流れた。
海面にぶつかる刹那で気を失った青年を夜通しここまで運んで早数時間。
一向に目覚めないけれど、強制労働を受けていたひよっこの体なぞそんなもの。
もうしばらくは眠ったままだろう。
仰向けに寝転ぶ痩せぎすの身体。意識を落とした彼の顔には大きな丸眼鏡がかかっている。気絶とは思えない程穏やかに眠っているというのに、それを取り払わなかったのは、ひとえに恐ろしかったから。
羽織る外套の裾を伸ばす。一見何の変哲もないけれど、これはイブツ。あの物置で、私は確かに気配どころか存在さえ誰にも悟られるはずはなかった。
それなのに――――――
雑音が私の思考を邪魔している。
テレビからは近辺の港で起こった海難事故の詳細が繰り返し流れ続けていた。
エンジンからの発火とされているけれど、それならばあの時、ホルムに教われる寸前を狙ったかのように起こった爆発だって奇妙だ。
まるで誰かが意図して爆発を起こしたかのようで。
私の下で眠りに落ちる青年は普通だ。
どこにでもいる無難さで……それどころかこの都市においては、あらゆる点が平均より劣っているだろう。
私が手を差し伸べなければ、あのまま都市に溢れる悪意に食い潰されて終わった命。
それなのに、どうして私はその澄んだ眼差しを恐れている?何故その視線を懐かしく想うのか?
今は目蓋に隠された瞳が脳裏に過る。茶色の光彩は爆発の余波に照らされると鈍い赤に染まっていた。
もしも、彼が何かの手がかりになるなら。
捨て置く訳にはいかなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――
一旦区切りです。
続きがまとまったら更新します。




