邂逅
まずは明日の王族との面会。
ネット小説が参考になるかな?
王族や家臣を信用させて、王太子を籠絡させる。
小説のヒロイン、もしくは悪役令嬢のように、王太子の婚約者におさまりたいところ。
婚約者に収まれば、ある程度の権力を握ることができる。
それに、私を止めようとする高潔なご令嬢が見つかるかもしれない。
でもそれをするには、まず情報がいる。
その情報をどう集めるかだけど……
ゆるい風が頬を撫でて、髪を揺らす。
心地いい風に頬を緩め……ハタっと気づいた。
……あれ?
窓、開けてないよね?
ソファからサッと立ち上がり、少しずつ扉に向かって後退りする。
「こんばんは、お嬢さん。いい夜だね。」
窓際に立っていたのは、1人の男性。
全身真っ黒な服で、顔を半分隠している。
いかにも、怪しい侵入者だ。
「……誰?」
「俺はファルクス。暗殺一族『ノア』の長だ。」
「私を暗殺しにきた……わけではなさそうだけど、何の用?」
「一目惚れしたんだ。」
……は?
あり得ないセリフに固まっていると、彼――ファルクスは、一瞬で距離を詰めてきた。
両手で頬を包め込まれ、撫でられる感触に、我にかえる。
「……ひ、一目惚れ?」
「あぁ……その恨みと憎しみ、あらゆる負の感情を混ぜた混沌とした闇の目。美しい……」
うっそりと微笑みながら、ファルクスは私の目を覗き込んでくる。
私の目より、よっぽど混沌とした闇の目をしながら。
ファルクスは、私の目尻を撫でながら、うっとりとため息をつく。
「この美しい目に惚れたんだ。くり抜こうかと思ったけど、君の激情を含めて欲しくなっちゃってね。ただの目には用はないから。」
優しそうな手つきで、不穏なセリフを吐く。
きっと今まで、彼が望んだことは全て叶ってきたのだろう。
今回も叶うことを疑っていない。
「さあ、一緒に行こう?ここに用はないだろう?」
「それは困るわ。」
私が拒絶すると、雰囲気がガラリと変わった。
冷たく鋭くて、まるで針の筵にいるみたい。
「拒否しているのではないの。今は行けないと言うだけよ。やることがあるの。」
空気の圧が緩んだ。
「ふーん。話して。」
「私は、私をこの世界に連れてきた奴も、呼んだ奴らも憎いの。私が奪われたように、あいつらから奪ってやりたいの。それが終わるまでは、一緒に行けない。」
「終わったらいいってこと?」
「ええ。抜け殻になった私でもいいのなら。」
ファルクスは視線を下に向けて、しばし考え込んでいる。
「いいよ。君の闇は、この世界にいる限り消えないだろうし。少しなら待ってあげる。この国がどうなるか面白そうだ。」
彼の言葉に、ひとまずホッとした。




