神子
「まずは自己紹介をしましょう。私は神殿で神官長をしております。先ほどの場所にいたものたちも、みな神殿の関係者です。」
自己紹介という割には、名前を教える気がないのね。
随分と舐められているようね。
「私はラーネットと呼んでください。」
「では、ラーネット様とお呼びしましょう。」
いい名前でしょう?
ラーネット、なんて。
今の私にぴったり。
私の名前を呼ぶたびに、あなたたちは少しずつ呪われていく。
知らないうちにね。
全部暴露する時が待ち遠しいわ。
「ラーネット様をお呼びしたのは、理由があるからです。この国は魔物の住む森が近くにあります。魔物は瘴気を発して、土地を汚していきます。当然、水や作物も。それを浄化し、土地に祝福を与えてくださるのが神子様なのです。」
「先ほども言った通り、何の力も持っていませんが……」
「大丈夫です。神子様の力は、祈りや願いによって発動します。ラーネット様、光を願ってみてください。」
「はい。」
水を掬うように両手を合わせ、『光よ』と願う。
すると、両手の上数センチに、光の玉が浮かんだ。
願うだけで叶うなんて、便利ね。
これならわかりやすいわ。
私が呪うことを願えば、呪えるということでしょ?
怪しまれずに、実行できる。
「できた……」
ホッと、声を漏らす。
「やはりラーネット様は、間違いなく神子様です!」
「おめでとうございます!」
「素晴らしい!」
興奮して、口々に声を漏らす神殿の人たち。
……ばっか、みたい。
「ありがとうございます。……あの、私は何をすれば?」
「1日1回、この国の瘴気がなくなるように、豊かになるように願っていただければ、と。」
「それぐらいでしたら……」
「おお!ありがたい。お優しいあなたが神子様でよかったです。衣食住はこちらで用意いたしますので、ご安心ください。何かしたいことがあれば、なんでもお申し付けください。それから、今日はお疲れでしょうから、明日王族のみなさまと面会いただきます。」
「え?王族ですか?礼儀作法を知らないんですが……」
「構いません。神子様の方が実質上の立場ですから、多少の間違いは問題ありませんので、ご心配なく。」
「それなら……わかりました。」
「それでは、我々はこれで。ごゆっくりお休みください。」
「はい。」
全員が部屋から出て行って、本当に気持ちが緩んだ。
力を抜いてソファに頭を預けると、これからのことについて考え始めた。
魔物、瘴気……
これが私にとって、味方になる存在。
この国から瘴気をなくせばいいのだったら、どこかバレない場所にストックできないかな?
魔物と瘴気をどこか見つからない場所にストックして、蠱毒のように強い魔物と瘴気を作り出す。
生き残った魔物と瘴気に呪いをかければ、強力な呪術になるはず。
そして、呪いには生贄が必要。
今後の生活で、より高潔な生贄を探そう。




