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神官はスイートな名前が多いのか?

 いろいろと満喫したのち部屋に戻ったら、扉の前に人影があった。

 はて、誰か来る予定なんかあったっけ?

 ウサミにも心当たりはないようで、私を背から降ろして(途中でへばっておぶってもらってた)フィーに押し付けたのち、耳をピコピコさせつつ声をかける。


「よかった。どこほっつき歩いてんのかと思ったよ。探す手間が省けた」


 大きいほうの影が片手をあげて答え、そのままゆっくりと近づいてきた。逆光で見えづらかった顔がはっきりすると、メイド三人娘がちょっとだけ跳ねる。もう、可愛いなあ。


「ヒドイいい方だなあ、トリー」


 昨日友達になった騎士のトリスタンことトリーだ。ここの騎士団の四番隊隊長って言ってたし、ウサミたちがお辞儀する程度には偉い人みたいだ。フレンドリーに接してるのが申し訳ない気もするが、まあ友達だからよし。


 しかし、アポなし突撃されるほど親しいかと言われればそこまでではない。なんといってもまだ知り合ったばっかりだ。まあそれ言ったらここの全員知り合ったばっかか。最初に会ってから2.3年くらい経ってる気がするが気のせいだな。


 遅くまで寝ていたので昼ごはん食べたばっかりだけど、時計は15時を回ってる。何代前の聖女かわからないけど、こっちでも3時のお茶は存在するから、お茶のお誘いに来たのかな?

 ちなみに、今の季節なら日没は18時半くらい。辺境は昼が12時間で夜が24時間だから暗くなってからが長い。一日36時間、食事4回って習慣になかなか頭が慣れないんだよね。体はこっち製だから問題なく受け入れてるんだけど、24時くらいもっかい食事が入ってって、違和感がすごい。


「いや、茶の誘いじゃなくて、仕事」


 なんだ仕事か。

 雑に浮かんだ色々を振り払いつつ、仕事って何と聞こうとしたら、トリーの隣にいた人がぺこりとお辞儀した。

 あ、そういえばもう一人いたっけ? 慌てて頭を下げるも、相手に阻まれる。


「聖女様に置かれましてはご機嫌麗しゅう」


 丁寧な口調だけど、なんというか、とんがってる。

 紺色の長い服を着たその人は、同年代の友達からは『若年寄』って呼ばれてそうな、よく言えば渋み悪く言えば老け顔だった。いや、人を外見で判断しちゃいかんってのはわかるんだけど、笑顔もなんか胡散臭い。腹黒気取った厨二病患者みたいな雰囲気につい笑みが漏れる。

 ああ、なんかこの感じ懐かしいな。

 前世でもこんな人いたよ。取引先の二代目で、なにかと突っかかってくる若い男の子。男の子って言っても30代頭くらいだけど、私のが年上だったから男の子でいいのだ。先代がやたら私を贔屓にしてたのが気に入らなかったのか、重箱の隅突くみたいに小さな粗を見つけては電話してきて後輩たちに嫌がられてたっけ。


 誰? と目でトリーに聞く。面倒なので本人には効かないよ。

 もちろんわかってるのか、トリーは苦笑しつつ、その人の頭上に拳骨を落とした。


「痛っ! な、なにするのですか!?」

「それはこっちのセリフだ。メイに何喧嘩売ってんだよ?」

「け、喧嘩なんて売っていません!」

「じゃあ態度を改めろ。こんなのでも砦を二度も救った聖女様だぞ」


 あらら、涙目になっちゃったよ。こういうところも二代目にそっくりだ。もう二代目でいいか。

 って、こんなのってなんだよ、トリー……。心の声駄々洩れだぞ、後で〆る。


 などと思っていたら、二代目は小さく舌打ちをしつつ、再度私に頭を下げた。そんなことしてるとまた拳骨落とされるのに、あ、落ちた。さすがトリー、裏切らないな。


「こ、こほん、私は、ペスタの神官で、今はワ神官長の下で研修をしているサン=オントウと申します」


 三温糖か。和三盆と言い、神官はスイートな名前が多いのか? いや、この世界の神様がダイレクトに甘いもの好きなのかもしれない。


 ちなみにペスタは辺境伯の領地にいくつかある町の一つで、王都からこの砦に来るまでの唯一の街道が走ってるために雰囲気がちょっとだけ王都よりなんだそうだ。ちょっとだけってところがポイントなんだろう。イメージ的には新幹線が止まる駅がある地方の町、みたいな感じか。


 まあ、相手が慇懃無礼だろうがなんだろうが、同じ土俵に乗る必要はない。私がいつも通りお辞儀をして名乗ると、並んでいるウサミたちは頬と耳をひくひくさせた。ウサミたちはサン=オントウ神官にあまりいい印象がないみたいだ。あとで話を聞いておこう。


 それにしても、サン=オントウ神官の雰囲気は最初に会ったときのカッちゃんたちに似てる。領主様たちや今ではすっかり仲良くなった西棟の皆さんと同じような目で見てはもらえないようだ。まあそうだよなあ、彼にとって私は不審者なんだろう。この砦に魔法石を譲ったからと言って全員が歓迎してくれるわけじゃない。むしろ何か下心があると疑う人がいるのはいいことだと思う。

 とはいえ、嫌われているとわかってる相手にわざわざ愛想を振りまくこともないよね。


「それで、神官様が私に何か用なの、トリー?」


 というわけで、いろいろ言ってるのを無視してトリーに話しかけた。

 大人げない? いいんだよ、外見若いんだし。

 サン=オントウ神官はあからさまにむっとした顔で私を睨んでる。トリーが苦笑しながら両手を上げ、まあまあと宥めた。


「ワ神官長が聖女様に用があるんだと」

「え、神官長様が!?」


 キュートでぽっちゃりころんなワ=サンボン神官長が呼んでるのか。なら仕方ない。

 それにしても昨日の今日でいったい何の用事があるんだろう? 砦の黒いのはみんななくなったはずだし、黒さんと黒姉さんのおかげで魔力不足はないはずなんだけど。

 あ、あれか? 明るい時に水門一緒に見に行こうって言ってたやつ。デキる男はデートの誘いも早いのね。素敵。


「なんか能力測定するって話だったぞ」


 あれ? 思ってたのと違う?

 というか、能力測定ってなんだ?


 顔に出てたんだろう。トリーが苦笑しつつ教えてくれた。


 この世界で生まれた人は10歳になると神殿で能力測定をする。具体的には神殿にある平たい板に手を振れると、体力とか知力とか魔力とかが最大100の数値で出てくるんだそうな。そこには産まれた時に神様からのギフトとして授かるスキルとか魔法の属性とかも出てくるんだとか。なんだそりゃ? 佳乃ちゃんが「ステータスオープン」とか言いながらゲームしてたのに似てるな。

 ちなみに、出てくるのはあくまでもベースなので、努力次第で数値を上げたり新しいスキルを身につけたりできるんだとか。だけどそのためにはマジで血がにじむくらいの努力がいるそうで、普通の人はそこまではしないんだって。

 まあそうだよね。私だってよほどのことがない限りしたくない。


「メイは自分がどんなスキル持ってるのか知りたいんじゃないかって、領主様が言ってたぞ」


 確かに!


「いいね! せっかくだし魔法も使ってみたーい!」

「適性があればいいな。って、メイ、すでに魔法使ってるって聞いたぞ。魔法石だって作ってたじゃないか」

「あ、そうだった」


 言われてみればお酒とかお菓子とかつまみとか出してたな。あれ、魔法だった。オーダー取ってる気分だったよ。

 魔法石のほうは聖女固有スキルって聞いてるけど、その辺詳しく聞きたいよね。


 ウキウキしていると、サン=オントウ神官はわざとらしいため息を吐いてこちらを見た。


「聖女の力の使い方がわからないとおっしゃっていたと伺っております。そこで神官長が直々に聖女様の能力を測定することで自らの能力を知り、解決の糸口につながればとの仰せでした」


 こないだの温泉宿で話したことをタッちゃん辺りがが報告したのかな。いろいろ考えてくれてるようでありがたい。さすが兄様(仮)。


「気遣いありがとう。楽しみだよ」


 にっこり笑ってお礼を言ったら、サン=オントウ神官はなぜか私から目を反らした。いろいろと言いたいことがあるお年頃なんだろう。隣にいるウサミたちが小声で『ヤッちまいましょう』と呟いていたが聞こえないふりをした。この程度でヤッちまってたら営業には行けないのだ。


 ウサミたちは不満そうだったけど、サン=オントウ神官がメイドさんたちを神官長様のところに連れていけないと言い張るので留守を任せた。サン=オントウ神官がなぜかマウント取ってニヤついている。こういうところも二代目そっくりだなあと苦笑してたらトリーが拳骨落としてた。教育係みたいだな、トリー。


「それじゃ行くか」


 トリーがスマートに差し出した腕を取り、私は砦の中央部分にあると言う神殿に向かった。






読んでいただいてありがとうございます。


すごく久しぶりに続きを書きました。昨年はいろいろとあって書くことができていなかったのですが、今年ぼちぼち行きたいと思います。

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