63. 爆発魔人とクラス委員長
一月一五日黄曜日。
ヒーナ先生に付き添われ、ミリア姉と一緒に登校。
ミリア姉が朝から「いい、絶対に騒ぎなんか起こさないでよね」と、しつこくするもんだから、家を出るのがチョット遅れた。
僕を何だと思っているんだ。いやになっちゃう。朝からげんなりだ。
まあ、それでも始業の五分前には教室に到着。
「おはよう」
「おはよう」
校門でミクちゃんと遭遇。
ミクちゃんのバッグにも真っ赤な髪のアクセサリーがぶら下がっている。
最初が肝心とミクちゃんと一緒に元気に挨拶をして教室に入る。
「おはよう」「おはようございます」
「「…「おはよう(ございます)」…」」
けっこう席が埋まっている。
ライカちゃん、と数人が挨拶を返してくれたのだが、
「げ、爆発魔人!」
胡乱な声とともに、クラスメイトがビビりだす。
ああ、あいつ、二属性発動のやんちゃな俺様だ。
しかし、なんだ、その中二テロリストみたいなネーミングは。…僕のことなのか?
ミクちゃんとライカちゃんは別にして、ビビリ系がほとんどで、数人がごくごく普通だというよりどうでもいいといった感じだ。
「爆発魔人! でけー顔すんなよな! おい、俺様の話を聞ーてんのかー!」
あー、何だこいつ。やんちゃな俺様は粋がり系なのか。うざい。無視、無視だ。
「しかとしてんじゃねーよ!」
粋がりやんちゃが、僕の肩をむんずとつかんで来ようとしたので、肩を軽くいなした。
見てなくてもそんなの当然わかる。
粋がりやんちゃが、バランスを崩したようでよろけて、こけて机にしたたかに頭をぶつける。
まあ、勝手に転んだんだ、僕の所為じゃない。
粋がりやんちゃが涙目で起き上がってくる。
「よ、よくもやりやがったな」
今度は殴りかかってきた。
簡単に避けたら、握りこぶしを握ったまま、自滅で突っ込んで、また転んだ。
「てめーふざけんじゃねーぞ!」
起き上がって、また絡んできた。
言葉は威勢がいいが、声が震え、涙を流している。
「なに言ってんのよ、あなたが勝手に絡んで、勝手にこけただけじゃない。あなたバカ」
粋がりやんちゃを、辛辣になじったのがエルフのルードちゃんだ。GJ。
今度はルードちゃんにつかみかかっていったら、手首を取られてねじられ盛大にひっくり返った。
そりゃそうだ。魔法核と魔法回路が“2”になる頃から強さが格段にアップする。レベル2の魔法を使うルードちゃんが、レベル1にやっとの粋がりやんちゃを一捻りなのは当然のことだ。
一瞬シーンとした後に、ワハハハ…、ギャハハハってクラス中に笑いが派生した。
粋がりやんちゃが「おぼえてろよ!」と捨て台詞を吐きながら、真っ赤になって教室を飛び出していった。
そして不思議なことに…でもないか。男子二人が何かわめきながら粋がりやんちゃの後を追って教室を出ていってしまった。
「おはようございます。誰かが出ていったみたいですけど、何かありましたか」
ルイーズ先生が教室に入ってきて、首をかしげる。
全員口をつむぐ。関わりたくないんだろう。
先ほどルードちゃんが言った通りで、僕からしたら、覚えておけって、家に帰って思い出し笑いをしろってことなのかと思ってしまうほどだ。
でも、うざい奴に絡まれたもんだ。対策でもしておくか。いいものもあることだし。
「トイレか何かでしょう。しばらくすれば戻ってくるでしょうから」
ルイーズ先生の改めての「おはようございます」でホームルームが始まった。
全員をフルネームで呼び、確認していく。
エルフの女の子がルードティリア・ナルア・フィフティーナって長い名前だった。
茶色の髪に猫耳、瞳が真っ青の女の子が、
「パルマーダ・コルノン、半猫人ですニャ」
流石、異世界キターッ、ニャ、ニャだぞ、歓喜に叫びだしそうだった。頑張って思い留まったけど。
真っ白い髪に真っ赤な瞳で兎耳の女の子が、
「…ビットリア・ププアン、は、半兎人です」
あちゃー、まあ、さすがに語尾のピョンはないか。ざ、残念。
二人の獣人、もとい、半獣人も試験で見かけて、なんとなくだが覚えている。
出ていった三人の男子はキジョーダン・ノルボーン、ガラクーダ・オルン、ブゾン・サラータだってことが判明した。
ルイーズ先生が、どうしましょう、と思案しだしたところに、
「このクラスの生徒のようなので連れてきました」
魔法学校の管理官、日本風にいえば用務員さんに連れてこられた。
粋がりやんちゃがキジョーダンで、残りの二人はその腰ぎんちゃくのようだ。
こっちをにらみつけてくるけど、可愛らしいものだ。
一回、三人をメガホッグの前にでも立たせてみたいものだ。
「入学式でも伝えましたが、魔法を人に向けて放つと皆さんが子供っていっても重い罪になってしまいます。
警備兵に連れていかれて牢屋に入れられちゃいますよ。
よーく、覚えておいてくださいね」
先生なりに何かを感じたんだろう。
教室を飛びだした三バカを順に見て、言い聞かせる。が、三バカは先生と目を合わせない。
オイオイ、僕を見る必要はないでしょう。あちゃー。
正当防衛のような概念はある。ただし過剰防衛のような考えはない。魔法や特殊スキルがあるので下手をしたら死ぬ。手加減なんて不可能だからだ。
いざとなったら真実の水晶などで、正当性は後でも証明できるってこともある。
まあ、確かな証拠で正当性の証明ができればそれに越したことはないが。
◇ ◇ ◇
オーラン市は人口四万七千人程度、周囲の二つの街と農村を加えると八万五千人程度となる。
子だくさんということもあって、同い年の子供は約二千人ってパパが教えてくれた。
人族が大多数を占めるオーラン市、その人族の半数以上が生活魔法が使えるようになる。
人族に限ると魔法が使える人の三分の二から四分の三程度が属性魔法が使えるようになる。一属性でレベル1ってことも含めてだから、程度の差はあるがだ。
あ、あとこのこともパパに聞いたんだけど、ここ数年は魔法ができる人が増加してるんだって。
六才の時点で魔法に目覚めるのは三分の一程度、そして魔法の才能は遺伝によるところに依存するところも大きい。
二千人の子供の約半数の三分の一として、六才で魔法に目覚めるのが約六七〇人といったところだけど、魔法が使える人が増えているっていうから、七〇〇人より多いんじゃないかな。
その全てが魔法学校の入学を希望するわけじゃない。
近隣の二つの街では魔法学校は無いけど魔法科があってそこに入学するし、街の近くの農村は、その街の学校に通う。
オーラン市にも一般の学校が三校あって、そこにも魔法科がある。
就学中に魔法に目覚める子も居るので魔法科は必須だ。
そんなこんなもあって魔法学校の入学希望者は毎年三二〇人から三五〇人程度だそうだ。
今年は三七六人の入学とやや多めの生徒で、一一クラスに分かれている。
一クラス大体三五人だ。
今年はランクAが二クラスで、ランクBが四クラス、ランクCが三クラス、農村の子供用が二クラスだ。
セージのクラスはランクAの第一クラス、“一年A一”クラスで、クラスメイトは三六人だ。
マリオン国では属性持ちは強い魔法が放てるとして専門教育が必須で、魔法学校もしくは一般学校の魔法科で正式に魔法を学ぶ必要があり、違反者には罰則もある。
農村から通学――別カリキュラム。村からの送迎で、赤曜日から緑曜日までの四日間の寮生活――させるのには、寮のある魔法学校しかないため必然的に魔法学校になる。
ちなみに近隣の二つの街では、魔法の専門学校が無く、一般学校の魔法科となるので一般学校に寮がある。
就学途中で属性魔法に目覚めても同様だ。
農村の魔法持ちは少なく、属性持ちとなるともっと少ない。
魔法学校に就学する人が少ないのはそういった理由がある。学年が上がっても増える生徒はそう多くない。
農村では幾つかの農村が小さいながらも共同学校を設けている。
属性魔法無しの生活魔法だけだと、その農村共同学校に通う子がほとんどだ。
またオーラン市内の魔法学校と一般学校の五年生には職業訓練のようなカリキュラムが組まれるため、農村からそれを目指して市内の学校に就学する生徒も、まれだがいる。
街の子供でももっと専門的に魔法を習いたくて、寮に入って一般生徒として魔法学校に入学する子もいる。
就学期間が過ぎて属性魔法に目覚めたら、一年以内に兵舎で定期的に行われる一般講習を受けることになる。
講習内容は魔法力のコントロール方法と、魔法使用関する法律の説明だから、一週間のカリキュラムだ。
本格的に学ばなくてもいいのには理由があって、就学期間が過ぎて魔法に目覚めた人のほとんどが、魔法レベル1で止まるので、それほどの脅威とみなされないからだ。
反して早めに魔法に目覚めた人は、高い魔法レベルが習得できるからということで学校教育となる。
◇ ◇ ◇
ルイーズ先生からカリキュラムの説明によると、オーラン魔法学校だけでなく、マリオン国の学校全ては四学期制だ。
一月から四月が一学期。
五月から八月が二学期。
九月から一二月が三学期。
一三月から一六月が四学期。
一年一六か月のバルハライドならではだ。
二学期と四学期の終わりには長期休暇が、一学期と三学期の終わりには短期休暇がある。
どこでも一緒だけど、学期末の試験もあるそうだ。
案内で学校施設の説明も受ける。
ロッカーの割り当て、そして学生証を使用して個人登録を行う。
首に掛けるものが、魔宝石のネックレスに冒険者ギルドカード、そして学生証と三つもあってチョット邪魔なので、冒険者ギルドカードと冒険者ギルドカードは必要に応じてアイテムボックスから取り出すことにした。
トイレなどの案内の後、大講堂に三つの小講堂。…中講堂無いんだ。
第一と第二の大魔法練習場から始まって数多くの練習場を周った。
第一大魔法練習場の防護シールド、ちゃんと直っていました。
「爆発魔人、また壊すなよな!」
「魔法を飛ばすこともできないアナタには、一〇〇年経っても無理でしょうね」
キジョーダン。うざい。
ルードちゃん、なんで好戦的なんですか。
エルフってみんなこうなの?
更衣室とその使用方法も聞いた。
魔法を学ぶ練習場は、一番最初にヒーナ先生から学んだ、魔法の一覧にのっとって振り分けられる。
<古代魔法>
― 生活魔法 基本無属性(無属性魔素)(透明)個人差有
― 火魔法 火属性(火魔素・熱魔素)(赤)
― 水魔法 水属性(水魔素・液体魔素)(水色)
― 土魔法 土属性(土魔素)(茶色)
― 風魔法 風属性(風魔素・移動魔素)(黄緑色)
<中世魔法>
― 光魔法 光属性(光魔素・治癒魔素)(白)
― 闇魔法 闇属性(闇魔素・精神魔素)(灰色)
<新世魔法>
― 時空魔法 時空属性(時空魔素)(紺)
― 身体魔法 強化属性(無属性魔素)(透明)
― 錬金魔法 錬金属性(物質魔素)(銀色)
― 付与魔法 付与属性(干渉魔素)(黄色)
― 補助魔法 補助属性(干渉魔素)(黄色)
<その他>
― 無属性魔法 無属性魔素(透明)個人差有
魔法属性の目覚めの多くが古代魔法といわれる火・水・土・風の四魔法なので、それを合同で練習するが、一年生はまずは生活魔法からだ。
それが合同練習では人数の関係で第一大魔法練習場や第二大魔法練習場となる。
その属性を持たずその他の魔法属性しか持たない生徒は特別となる。
幾つもの属性を持っていれば本人の習いたい魔法を優先して練習することが可能だ。
クラスごとの行われる魔法練習で使用されるのが第三から第八の魔法練習場だ。
光魔法は“光魔法練習場”で、錬金・付与・補助魔法は“新世魔法練習場”となる。
「あれ、身体魔法や闇魔法、それに時空魔法は無いんですか」
「闇魔法と時空魔法は“光魔法練習場”で光魔法と一緒に練習します。
時空魔法の属性を持っている先生はいますので現在は先生の関係でそうなっています。
闇魔法の属性持ちはオーラン魔法学校にはいないので、仮で“光魔法練習場”に割り振られていますが、教えることは教本があるだけです」
「身体魔法はグランドで学びますが、そちらは体育の授業の受け持ちです。
身体魔法が使える人は早くて最上位学年の五年生くらいからですので、体育の授業で教えるのも五年生からとなっています」
「昨年暮れに三年生で身体魔法に目覚めた生徒がいましたが、本人と話し合いがもたれ、今年度いっぱいは自宅学習で済ませるとのことになりました。
セージスタ君は、入学試験の時、ショートスピアを勢い良く投げていましたし、すでに身体魔法の属性も習得済みですか? ただし、そうだとしてもセージスタ君のレベルを教えることはできない可能性がありますので、学校との相談となります」
ミリア姉のことだ。ルイーズ先生こっちを見て、ニヨニヨしないでください。わかってるんでしょう。まったくもう。
それにしても最初っから教えられないし、相談ってひどくない。
「それともセージスタ君は錬金魔法や闇魔法も含む、全属性持ちだったりしますか」
「え、えー……」
「内緒でいいんですよ。練習したくなったら言ってくださいね」
藪蛇だった。
ルイーズ先生は僕から視線を切り替え、みんなに語り掛ける。
「魔法の使い方としては、複合魔法や合成魔法といって、魔法を組み合わせて使うことができます。
魔獣と戦うにはその魔法をいっぱい勉強して、複合魔法や合成魔法を使えるようにならないといけません。
上級魔法学校では、セージ君が言った身体魔法で体を強化して、色々な魔法を使いながら模擬戦闘などもします。
このオーラン魔法学校では、単体の属性魔法をいっぱい練習して、大きくなって複合魔法や合成魔法をできるようになるための練習を行っていきます。
身体魔法や複合魔法、合成魔法を目指して頑張りましょう」
要は基本と、魔法核や魔法回路を成長させるってことだ。
食堂も各学年用があって、お弁当持参でも構わない。
明日からはミリア姉と一緒にお弁当を持参する予定だ。
図書館に音楽室に美術室、特別教育室なんてのもあった。
錬金魔法・付与魔法・補助魔法があるからか科学室や化学室が無い、教科からも理科関係は無く、代わりに魔法学や生き物なんて教科がある。
上級学年になると魔道具が教科に組み込まれるけど、オルジ兄の教科書を見たけど基礎だけみたいだ。
エルガさん曰く、最高技術は魔電装置なので、初等教育でも教えるべきだそうだ。
そのマジカルボルテックスを扱えるのが上級魔法技術師で、錬金魔法と付与魔法が不可欠だから、もっと錬金と付与の教育に力を入れ育成に努めるべきだって、少し前に息巻いていた。
教室に戻ると、
「これから六人組の班を作ってもらいます。
魔法の練習などのための班なので気の合いそうなお友だちと組んでかまいません」
クラスメイト三六人、全部で六班だ。
僕はミクちゃんとライカちゃんで、まずは固まると、ルードちゃんが、
「私はここに参加する」
と強引に入ってきた。
バチッとミクちゃんと火花が散った。…気がした。
こんなに気合の入ったミクちゃんは初めて見た。でも嫌ってるわけじゃなさそうだ。
初対面がかなり多い。
幾つかが六人の班を作り、僕のところが四人組で、三人組が四チームで、二人組が一チーム。
「しばらくして、合わないようならまた再編成をします。
明日からの授業がありますので、まずは班を作ってみてください」
そうなると二人組とだ…よな。
「こっちにおいでよ」
「一緒になりましょう」
「はい、よろしくお願いしますニャ」
「…お願いします」
ライカちゃんとミクちゃんの誘いに、嬉しそうに半獣人の女の子二人組が駆け寄ってくる。
魔法が苦手な獣人は多いが、半獣人になるとそれがかなり軽減される。が、人族からすれば苦手な半獣人は多い。それでも男性より女性の方が魔法宅性は高いとされる。
Aクラスには獣人の女子は数人いるそうだが、男子は一人しかいないそうだ。
あくまでも僕の印象だが、魔法が苦手な獣人(半獣人だが)ってこともあって、二人はなんとなく敬遠されていた。
まあ、僕たちも敬遠されて、っていうか、僕が敬遠されてたみたいだけど。
「ぼ、僕セージスタ、セージって…呼んでね」
って、メッチャ、ハズイ。須田雅治にとっては毎回の試練だ。
みんなで挨拶をすませる。
ミクリーナ・ウインダムス、ミクちゃんは、基本おっとりしてるけど自己主張もできるようになって、頑張り屋のしっかり者になった。
見た目のかわいい系は相変わらずだ。
髪はウインダムス家伝統の真っ赤だ。
ライカ・ポラッタ、ライカちゃんは家族そろって端正な顔立ちで、知的な美人系。
逆恨みからの襲撃で、出会った時には精神的に不安定なところはあったけど、現在は落ち着いている。
時たま頑固で強気が出るけど基本冷静な性格で、錬金術師の家系からか観察力が鋭い。
髪は家族そろって紫。
耳の尖ったエルフのルードティリア・ナルア・フィフティーナ、通称ルードちゃん。
小柄で可愛らしいんだけど、相反して目つきがきつめだ。そして目つきからも分かるけどる激情家だ。
髪は緑。
茶色の髪と体毛に猫耳、瞳が真っ青な半猫人のパルマーダ・コルノン、通称パルマちゃんは、見たそのまんまの活発そうで、しかも天然交じりだ。
語尾が“ニャ”だって。やってきました異世界。
真っ白い髪と体毛に真っ赤な瞳で兎耳の半兎人のビットリア・ププアン、通称ビットちゃんは、癒し系で、控えめのようだ。
全員個性的だが、美人といって間違いが無い。
そこに僕みたいに、凡庸な容姿が混ざるのは気が引ける。
ちなみに僕の髪はダークブルーで母親似、平凡華奢、目と顔立ちが父似は相変わらずだ。
多大なレベルアップで細胞だけが変貌したように強靭になっている。おかげで身体強化をしていなくても一般人からしたら身体強化レベル状態だ。
女子五人に男子が僕一人か。ハーレムってことにはならないってことは保証できるけど、男プリーズ……ってそんな趣味もないからね。
まあ仕方ないか。僕も含めてみんな六才(今年七才)、女の子を気にする年齢でもないよね。
あれ、女の子で早い子じゃ、好きとかってあるのか?
まあいい、棚上げ、棚上げだ。
問題なのが残った三人組の四チーム。
三バカと男子が二チームで女子が一チーム。
男子が二チームが班を作ろうとしてるが、女子チームが三バカじゃ絶対に嫌だとわめいている。そりゃそうだ。
あんな乱暴な人と、絶対にイヤー! と、とうとう女子二人が泣き出してしまった。
そりゃそうだ、俺様と組め! って言ってる奴なんか無理だ。
ルイーズ先生がなだめすかし、何を言ってもダメなようだし、それは他の男子二チームに行っても同様だった。
また、キジョーダンをたしなめるも、キジョーダンも態度を改めない。
お手上げ状態だった。
結局、六人チームの五つの班と、三人チームの二つの班となった。
僕たちが一班だ。
◇ ◇ ◇
「クラスのまとめ役として、ミクリーナさんかルードティリアさんのどちらかにクラス委員長、もう一人が副委員長をお願いしたいのですが、いかがでしょう」
「ワタシはいいですが」
「あのー、どうして私たちなのでしょう?」
「それは、お二人が魔法レベルが、このクラスで非常に高いからですね」
「それなら俺様がなってやる!」
「キジョーダン君、どうもありがとう。でも、しばらくは黙っていてくださいね」
「なんでだよ!」
「乱暴な言葉も慎みましょう」
キジョーダンが、ルイーズ先生にチョットにらまれ、フン、とふてくされる。
「最初のクラス委員長は毎年そのクラスの、最高の魔法レベルの人がなるのが習慣になっています。
それでも家庭の事情などの関係でできない人がいます。
その時には二番目の人が委員長になります。
今年はセージスタ君がダントツの一番ですが、家庭の事情で学校を時々休もことになっています。
それで二番目のお二人にお願いしようと思っています」
「先生、家庭の事情ってなんですか?」
「それは申し上げられませんが、校長先生立ち合いで許可されたことです。
それでミクリーナさんとルードティリアさんはいかがでしょう?」
「ウチはめんどくさいのはいいから、委員長はミクリーナさんでいいわ」
「え、……あのー、ルイーズ先生、私たち二人が副委員長で、セージちゃんが委員長っていうのはダメなんでしょうか」
「そうですね……」
「わたしたちがサポートしますから」
「そうですか。いいでしょう。セージスタ君もそれでいいですか」
「え、…ええ、ハーイ」
ミクちゃんのプレッシャーに、負けてしまう。
「うん、ウチもそれでいいわ」
「俺様は、爆発魔人がクラス委員長なんて、いやだぞー!」
「「そうだ」」
キジョーダンの発言に、ガラクーダとブゾンが賛同して息巻く。
「爆発魔人ってなんですか! 先生怒りますよ!」
またもにらまれるが、フン、で我関せずだ。
「他の皆さんはどうですか」
「いいです」「はい、かまいません」
賛同する人が散らほらと居る。
そして、めんどくさいことが自分に来なければOKという雰囲気が大半だ。
「それでは良いと思う人は手を上げてください」
数人が手を上げると、バラバラと手が上がる。
三バカ以外と俺だけがだ。…こんなことでもこいつらと一緒ってのは嫌だ。
「はい、がんばります」
思わず手を上げ、宣言していた。
「セージスタ君、ルードティリアさんとミクリーナさんよろしくお願いします。
はい、はくしゅー」
パチパチと、拍手の中クラス委員長になてしまった。
席も班でまとまったから、周囲女の子ばっかりだ。
ミクちゃんとライカちゃんは慣れてるけど、常時これだけ囲まれていると緊張する。
やっぱ、しくじったのか。