64. 授業と魔法訓練
Aクラスは、ランクAの魔法能力――初等の一年生にしてはだが――で構成されている。
魔法が優秀な生徒は遺伝的な者が大半で、それなりの一般教育が行われている家庭が多く、それほどい。
そのため一般教育が行き届いている生徒がほとんどだ。
カタカナのような表音文字は全員読み書きできるし、表意文字もある程度読み書きができる。
Aクラスは毎年優秀生だらけで、クラスごとに張り合わせるらしいのだが、今年は例外が三名に憂愁が二名も居た関係でバラスか、マトメるかでもめた。
ノルンバック家とウインダムス家、それと錬金魔法持ちで二属性持ちのライカちゃんからも一緒のクラスにとの要望があったので、最優秀生と優秀生の五人――俺様キャラのキジョーダン含む――をまとめることになった。
ある意味、今年の一A一組だけ特別クラスになってしまっている。
一月一六日緑曜日、授業初日。
一時限目の最初の授業となるのはクラス学習といって、ルイーズ先生のお任せ授業だ。
ミリア姉に聞いたら、遅れた授業や、イベント(オケアノス祭に参加)の練習など、担任の自由裁量だそうだ。
二時限目は国語の授業では、表音文字の読み書きの確認を行った後、金文に似た表意文字は初歩のおさらいをして終わった。
勉強のレベルはわかっていたけど、なんか疲れた。
三時限と四時限はランクAが二クラス、ランクBが四クラス、ランクCが二クラス、農村が二クラスの一学年合同の魔法練習だ。
一学期はこのように行ってから、二学期からランク分け(Aクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラス)で練習するそうだ。
移動は最初だからクラス全体で行ったが、これからは班で行動するそうだ。
魔法保護の長袖・長ズボン、ジャージのような運動着に着替えて、第二大魔法練習場に集合した。
戦闘訓練をするわけではないので、防具やヘッドギアは無しだ。
「自分の持っている属性で習いたい魔法の申告をしてください。新たに属性が現れた人はその時に申し出てくれればいいですから、現時点で所持している魔法属性で習いたいものに限ります」
全員には用紙が配られていて、名前を書いて“有る”と“習う”に“〇”を付けるだけだ。
内緒なものは記入しなくてもOKだそうだ。
学校としても、魔法属性を把握しても特別に罰則があるわけでもないので、内緒なものは未記入でOKだそうだ。
氏名 セージスタ・ノルンバック
有る 習う
―― 火魔法 〇 〇
―― 水魔法 〇 〇
―― 土魔法 〇 〇
―― 風魔法 〇 〇
―― 光魔法 〇 〇
―― 闇魔法
―― 時空魔法 〇
―― 錬金魔法 〇 〇
―― 身体魔法 〇
―― 付与魔法 〇 〇
―― 補助魔法 〇 〇
僕が提出したのは、以上の内容だ。
隠す気のない属性はそのうちにバレるだろうから、秘匿するのは闇魔法だけだ。
時空魔法と身体魔法は魔法練習では対象外なので“〇”を付けなかった。
属性魔法持ちのランクAといっても全員属性魔法ができるわけじゃない。ましてや一年生ならなおさらだ。
現時点属性魔法は発現しただけのレベル0で、使えない人もかなりいる。
まずは生活魔法があやしい人、要はレベル1以下で使いこなせない人が集められ、第三魔法練習場に連れていかれた。
僕とミクちゃんとルードちゃんがルイーズ先生に呼ばれた。
「ここでの魔法練習は魔法核と魔法回路がレベル2なるための指導を行うのが主な目的です。
ミクリーナさんとルードティリアさんは四年生や五年生に行われる特別プログラムを行っていただく予定ですが、それでよろしいですか?
それともレベル2までで習得したい魔法とかがありますか?」
「はい。特別プログラムでお願いします」
「ウチもそれでいいわ」
「二人とも魔法陣の購入希望が提出されていませんが間違いありませんね」
「はい」
「母さんの方が多いし、ここのは、少ないのは何で」
「(はあ)、魔法陣はよく使われる一般なものをまとめたものです。
それではそういうことでよろしいですか」
「「はい」」
「それでセージスタ君ですが、どうしますか?
特別プログラムでもおさまりませんので、しかもこれだけですか…」
僕が提出した用紙を見て、ルイーズ先生が頭を抱えている。
「先生をやってほしいくらいです」
穏やかじゃない呟きも漏れてくる。
「冒険者ギルドの方に確認したのですが、本当にギルド会員で魔獣を狩ってるんですよね」
「はい」
「どれほどの魔獣を……いいえ、いいです。
この印をつけた魔法属性でレベル2、いえ、レベル3に達していないものはありますか」
「いいえ」
「念のために訊きますが、魔法陣の購入希望もありませんでしたが、それでいいんですね」
「はい」
「セージ君もそれ以上持っているということですか」
「……えー、随分少ないんですね」
ルイーズ先生にジト目で迫られて、つい漏らしてしまった。
「そうですか。…(はあ)…、
自主練で気が向いたら誰かの魔法の手伝いでもしてください。
それでいいですか」
それがルイーズ先生の下した結論だった。
しばらくミクちゃんとルードちゃんの魔法練習を見ていたが、今日は魔法量の確認のようで、どの程度までが発動できる限界かを先生が認識することだった。
魔素や魔法の感知に長けた先生がついての指導のようだ。
他のところは何をやっているかと思えば、魔法陣を持ってない生徒も多いようで“複写”をしている生徒もいる。
“複写”できるのは全生活魔法、火魔法が“ファイアー”、水魔法が“ウォーター”、土魔法が“サンド”、風魔法が“ウインド”、光魔法が“ライト”、錬金魔法が“合成”、付与魔法が“イメージ付与”、補助魔法が“イメージ補助”と各属性ともレベル1の魔法一つだけだ。
“複写”させてもらってるのは、入学に当たって無償で“複写”させてもらえる魔法陣だ。
さすがに魔法回路の複写もビジネスになるだけあって、簡単には開示できるものじゃない。
それは学校でも同様だ。
もちろん学校で購入したものは、同級生への複写は禁止だ。
一応罰則(罰金)もある。
レベル3まではセットで“複写”できる一覧が入学案内にあったけど、僕の持っているものより数がかなり少なかった。
もちろん、魔法回路のサイズ的に全部を直ぐに“複写”できない生徒の方がほとんどだ。卒業まででってことだ。
ミクちゃんにレベル2の魔法陣を“複写”させてあげた時にも驚かれたから、多分僕の魔法陣の数は他人よりかなり多いことは間違いないう。
あと、ルードちゃんのママさん、多分エルフがどんな魔法陣を持ってるか気になるんだけど。
魔法回路のレベルの足りない生徒は、自分の魔法回路を出して、サイズを比較しながらの“複写”だ。
悔しそうに“複写”を断念する生徒もいる。またの機会だ。
かたや先生の指導で“ファイアー”、“ウォーター”、“サンド”、“ウインド”を放っている生徒もいるが、たどたどしく安定しない魔法だ。
体内の魔素や魔法力の循環が悪いだけじゃなく、魔素や魔法力の不足している生徒も多い。
「そこの君、何をやっている。ちゃんと授業を受けなさい」
適当に見学してたら、先生に怒られちゃった。
「ルイーズ先生に自習をしてなさいって言われたので、みんなが何をやっているのかなーって思って見学していたんですが」
「ルイーズ先生は何をやってるんだか。まあいい、君は火魔法の所持者か…ああ、そうか。それじゃあ、チョット魔法を出してみなさい」
「はーい」
<ファイアーバレット>
火球散弾を的にぶつけた。
周囲の生徒や先生が目を見張る。
「ああ、君がノルンバックか。その程度じゃ冒険者としてはまだまだだな。
…………<メガファイアーキャノン>……(はあはあ)、これくらいは(はあ)やらんとな」
声を掛けてきた若い男の先生で、対抗心を燃やしたのか、息が荒く、汗を掻いて必死で的に向けて放った“メガファイアーキャノン”は、レベル7の複合魔法だ。
見事に巨大な炎を上げて的を粉砕する。
なんだか満足してるようだけど、まだ魔法核や魔法回路が“7”に達していないのか、かなり無理をしたみたいだ。
そして、目つきで僕をあおってくる。
「そうですか。…<メガファイアーキャノン>…これでいいですか」
僕は魔法力マシマシで“メガファイアーキャノン”を的に向けて放つと、先生の物より巨大な炎を上げげ、的を一瞬で飲み込んで消滅させた。
えっ、と言って若い男の先生が固まってしまった。
「……だからノルンバック君はレベル8以上だって職員会議で報告があったじゃないですかー、聞いてなかったんですか?」
絡んできた先生が、隣の温和な女性先生がため息交じりに呆れられていた。
「また練習場を壊すなよ、爆発魔人」「「爆発魔じーん」」
三バカの声はムカつくけど、まあ無視だ。
「ノルンバック君ちょうどよかった。
レベル2か3でいいからチョット二、三発、見本で適当に撃ってみてくれないかな」
温和な女性先生から声が掛かった。
「またやるんですか?」
「ああ、サッキのは参考にならないけど、同い年の子が綺麗に複合魔法を放てるってところを見せてもらえると助かります」
「はーい」
まあ、サービスだな。
「<ファイアーマグナム>」
大きな火球が的に飛んで焼く。
「<水弾>」
大きくきれいな水球が的に飛び、ビシャッと水が飛び散る。
「<クロッドショット>」
石の散弾が水が飛び散った的に飛び、的をズタボロにする。
「<ウルトラエアハンマー>」
圧縮空気弾が的に飛び、的を大きく揺さぶって、根元を折った。
“ファイアーマグナム”、“水弾”、“クロッドショット”は、火と風・水と風・土と風の複合魔法、いわゆる攻撃魔法でレベル3だ。
“超圧縮空気弾”だけは風単独魔法だけど風の複合魔法ともいえる魔法だ。レベル5だ。
「ノルンバック君ありがとう。
皆さんも練習次第ではノルンバック君のような魔法が撃てるようになり……えー、なれるかもしれませんよー。頑張りましょう」
そこは断定してあげようよ。
ありがとうねー、と頭を下げセージに礼を言う先生がみんなに笑顔を向ける。
いいのか、これで…って、あ、レベル5は高学年でもまず無理か。ごめん。
「先生、僕“メガファイアーキャノン”を撃ってみたーい」
「わたしも」「僕も」
あれ? 見本にならなかったのか?
「目標はそうだとしても今のみんなの実力では、できたとしても、きっと気絶しちゃいますよ。
まずはレベル1の魔法が撃てるようになって、それでノルンバック君が、たった今見せてくれた魔法が撃てるようにならないと“メガファイアーキャノン”は撃てるようになりません。
気分が悪くならないように、ユックリと休んでから、…あー、君、まだ魔法を使うのは早い…」
魔法量が“10”前後しかない生徒がほとんどで、残量が“5”程度になると気持ちが悪くなる。
下手をしたら二回か三回で気持ち悪くなる生徒がいたっておかしくない。
一人の生徒の顔がみるみる青くなってしまい、先生が慌てだす。
僕はその隙に、その場を離れようとした。……が。
光魔法練習場を覗くと、二人が光魔法の“ライト”を練習していた。
声を掛けられないうちに新世魔法練習場に入っていく。
予想通りライカちゃんが先生と一対一で錬金魔法を練習していた。
さすがに初日から錬金魔法や付与魔法・補助魔法を練習しようとする人は、ライカちゃん以外いなかった。
属性所持者は多分いると思うけど、練習できるレベルにないってことだろう。
ライカちゃんは、魔法核・魔法回路、そして錬金魔法が“1”になったのはついこの前って言っていた。
試験の時には本当に“1”になりかけだったんだろう。
「君も錬金魔法を習いたいのかね」
人当たりの良さそうなおじいちゃん先生に声を掛けられた。
「あ、セージちゃん」
「セージ? おお、君がセージスタ・ノルンバック君かね」
「はい」
「錬金魔法はできる…いや、何か見せてくれるかね」
「ええ、いいですよ」
僕はテーブルに置いてある鋼鉄の棒を手に取り、
<高精度加工Ⅱ><高精度成型Ⅱ>
レベル6の錬金魔法を発動して、棒を薄く平たくしてリボンを結んだ。
ちなみにミスリル鋼硬などのミスリル合金やアダマンタイトを加工・成型するには、レベル6の高精度加工Ⅳと高精度成型Ⅳじゃないといけない。
金・銀・銅などの柔らかい金属が自由自在に変形できるのが高精度加工Ⅰと高精度成型Ⅰだ。
もちろん上位の魔法を使えば下位の金属加工などはできるしより精密に加工が行なえる。
それと魔法が使えても金属加工などが下手な人は上位の魔法を必要としたりもする。
ライカちゃんが練習しているレベル1の錬金魔法の“合成”は、液体を均一に混ぜる魔法だ。
試験で使った“変形”は最下級の金属魔法でもあって、効果は少ないが柔らかい金属――粘土などでもOK――を曲げたり伸ばしたりできる魔法だ。
魔法はイメージ力による効果で、個人差が発生する。
低レベルの魔法で金属を加工するのは難しいが、ライカちゃんは両親の仕事を目の当たりに見てきた所為か、錬金魔法との相性は良い。
入学試験でライカちゃんが銅線を伸ばして見せたことに、試験官が驚いたのにはそんな訳があった。
「そこまでですか。ここで習うことは何もありませんね。
今度機会があればわたくしの実験室に来るといいでしょう」
「はい、ありがとうございます」
初等でも魔法学校の先生で研究論文を書いている先生はいるそうだ。
今度いってみよう。
第二大魔法練習場に戻って、頼まれて何回か手本にレベル7級の魔法を放って練習は終わった。
お弁当を食べ、午後の授業となる。
五時限目の音楽は一年生はしばらく合唱だ。
六時限目は生き物で、穀物から草木、動物に魚介類、そして魔獣と生活に密着する物を学ぶ授業で、一年生はオーラン市近隣の植物や動物、それに魔獣について学んでいく。
ようは生活を取り巻く生物環境の勉強だ。
初日からみっちりと授業があるのは、兄や姉が一緒に通っている子がかなり多く、一緒に帰宅するために同じ時限数の授業を受けている方が都合が良いからだ。
ヒーナ先生の迎えに、ミリア姉と一緒に帰宅した。
なんだか疲れた。
ちなみにヒーナ先生やホーホリー夫妻、それに新入所員の冷めた感じのする美人のデトナーさんと、優男で髭にこだわりある魅力的なおじさんのアランさんもオーラン市の自警団として交代で定期的活動している。
他の商店なども協力的で、おかげでオーラン市の治安は良好な状態を保っている。
◇ ◇ ◇
今週はボティス密林へのホイポイ・マスターの交換はホーホリー夫妻と、新入所員のデトナーさんとアランさん、そしてリエッタさんとレイベさんが行っている。
僕は学校には仕事で休むことは申し入れてはあるし、校長先生お墨付きの許可証もあるけど、学校に慣れるまでのしばらくは学校優先でってことになっている。
ただ、いざとなった時にはエルガさんのテクニックと知識が現地で必要になってしまう可能性がある。が、強さが低いエルガさんが、魔獣が増えているボティス密林に行ける訳はない。
そうなると各種錬金ができ魔石を付与してきた僕か、エルガさんと一緒に作業してきた技術的な面でのリエッタさんとなる。
現地でチョットした対策や改造は僕とリエッタさんが行なってきているし、これからも当分それは続く予定だけど、現状はリエッタさんがフル稼働だ。
それと幾つものフェイクバッグにいっぱいのルルド水のお土産で、僕はルルドキャンディーの製造機になってしまった。
オーラン市からの直接購入って、もう嫌だ。…って思っちゃうけど、僕って頑張っちゃうんだよね。
ヤッパ、社畜、ブラック体制は治らないのかな?
ちなみに他の人にもマジックキャンディーを作ってもらったんだけど、僕の作ったやつと明らかに効果が落ちるんだ。結局マジックキャンディーは僕が全部作っている。
◇ ◇ ◇
一月一七日白曜日、授業二日目も、時たま三バカに絡まれることもあるが特段変わったこともないが、授業では“魔法学”と“生き物”というものもあった。
二時限目の算数は一桁の足し算に引き算と、あまりのレベルの低さに頭が痛くなりそうだった。
三時限目の魔法学については、魔法訓練で学んだことの座学によるおさらいだ。
もちろん魔法全体についての話もあるので、様々な属性についての基礎の基礎を学んでいく。
午後の五時限目と六時限目は体育で、今日は健康診断だ。
身長一一九.五センチメル、まだ一二〇センチメルに届かない。ガッカリ。
◇ ◇ ◇
一月二〇日青曜日。
エルガさんからやっと電増魔石にOKが出た。
チョット長かった。
電界効果型トランジスタもどきの電増魔石だ。
でも、電圧を掛けると魔法力で電流を止めるって、ファンタジー過ぎておかしいだろう。
まずは同じ電増魔石の正規版、同一性能の物を多数作成することになった。
かなりめんどくさい。
慣れてきたとはいえ、歩留まりは二個一、いや、三個一が良いところか。
まあ、ここまでくれば、小型のマジカルフォンも完成間近だそうだ。
頑張るか。
ちなみにエルガさんは【特殊スキル】の“解析”が“2”になったそうだ。
メッチャ喜んでいた。
◇ ◇ ◇
そして黒曜日の休日となる。
一週間が六日で短いのもあるが、休日が一日ってのが物足りない。
週休二日が懐かしい。
◇ ◇ ◇
そう思っているうちに一月一九日赤曜日、二週目の授業となってしまった。
まあ、先週は入学式や学校案内などがあて二日間しか授業が無かったけど。
赤曜日は午後の五時限目と六時限目が魔法訓練で、二度目になるとやることが無い。
ルイーズ先生に「図書館に行ってもいいですかー」と尋ねたが、「ダメです」と断られてしまった。
チョットふて寝をしてたら、「サボってないで練習をしなさい」だってさ。
「思いっきり魔法を放っていいんですね」
「いえ、ダメです」
「他の人はみんな思いっきりやってますよね」
「いえ、それはそうですが」
「では許可が降りたってことで」
「チョット待ってください」
「じゃあ、どうしろって、僕だけ練習ができないのは不公平でしょう」
そう、僕は全力の魔法を止められている。
イメージ文字化も現在できる範囲はやってしまっていている。まあ、こんな人目につくところでできる作業でもないし。
「練習するなら練習場なので思いっきりやりますよ。当然でしょう。そうじゃなければ練習になりませんし、ボティス密林に機材の確認に行くんですから」
狩りに行けない八つ当たりだってのもあるけど、二時間もやることが無いとどうしようもない。
わざわざ全力の魔法を撃たないように注意しされたことにも腹を立てている。
そんなことは僕もわかっているのにも関わらず、前回の練習も適当にやっていたしだ。
ちなみに僕と若い男の先生が放った“メガファイアーキャノン”に、怖がってしまった生徒がいたそうだ。
あの時には気づかなかったけど、そんな生徒もいたそうだ。
でも僕に教えることじゃないよね。
それに目指すのは高レベルの魔法なんじゃないのかな。
“メガファイアーキャノン”が全力じゃないってことは棚上げしても、その辺の魔法を放てないんじゃさすがにやる気がでない。
ライカちゃんに付き合って錬金魔法だと破壊することはないが、ノルンバック・ウインダムス魔獣対策魔道具研究所の秘密にかかわることも多い僕の錬金魔法を見せたくないってのもある。それは付与魔法や補助魔法についても同様だ。
「それは学校が関知することではありませんよ」
「はい、それはわかっていますが、僕が練習できないのは学校の責任ですよね」
「そこは、みんなの練習を見て手伝ってあげるとか、いつもミクリーナさんやライカさんの練習に付き合ってあげてるそうじゃないですか」
「それこそ僕に対して持ち出すことじゃありませんよね」
「それはそうですが…」
「練習もダメ、何もしないのもダメ、やりたいことを言ってもダメ、じゃあ僕は何をすればいいんですか。練習しろっていうのなら僕は先生の忠告を無視して全力で魔法の練習を行います。先生も僕の意向を完全に無視しているんですから、僕も無視します」
周囲にも人が集まってきて、大ごとになってしまっている。
他の教師も案を出せないでいる。
そりゃそうだろう。授業としては特定の生徒を特別扱いをすることはできない。かといって規格外過ぎて特別な存在がいるのも確かなのだから。
一年生の会話か? って先生の呟きが聞こえてくるけど無視だ。
「ルイーズ先生、図書館いいんじゃないですか」
「それは……」
「ノルンバック君の言ってることももっともですし。生徒が怖がるから高位の魔法を使うなってのは無茶な話ですよ」
「他の先生もいかがですか」
ってことで、僕は一人図書館に向かうことができた。
始業の点呼と先生のお話、終業の点呼には練習場にいることが条件となった。
図書館に行ってみたはいいけど、新たな魔法陣は見つからなかった。
ただし、薬草や毒草、野草や樹木などのカラー図鑑が多数取り揃えられていて知識としては役に立った。
◇ ◇ ◇
そんな学校生活の一月二三日の白曜日。
週末に大きなボティス密林で地震が発生した。
翌日の黒曜日に、ボランドリーさんやニガッテさんを含む冒険者ギルドの調査隊が派遣された。
ホーホリー夫妻も同行してメモリーパッケージの回収を行なったけど魔獣の増加は確認できなかった。
ただ、魔素が急に増えたそうだ。
ララ草原境界の防御は強化されてはいないけど、オーラン市からは兵士と雇われた冒険者が駆けつけることになっている。
僕も同行を希望したんだけど、危険だからって許可されなかった。
いくら強くったって、六才(今年七才)じゃあダメだってことさ。
オーラン市には緊張感が漂ってはいるが、普通の生活が続いている。
パパやウインダムス議員(ミクちゃんの祖父)などは交代で市役所に詰めていて、いつでも即応できる体制を取っている。
ボティス密林を取り巻く環境は何かと騒々しいが、魔法学校はいたって平穏(?)だ。
まあ、三バカの騒々しいことを除けばだ。
そして、一年生も徐々にだが授業に慣れてくる。
◇ ◇ ◇
二月一日赤曜日、三週目の授業。
ミリア姉と一緒に学校に来たが、護衛はN・W魔研の新入社員のデトナーさんだ。
オーラン市の治安は良いとはいえ、魔獣氾濫の発生が間近に迫っているので、護衛と一緒の登校が増えている。
いつものように授業をしていると大きな地震があり、オーラン市の非常警報が鳴りひいびいた。
魔獣氾濫が発生した。




