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ファイブ・セコンド(Five Seconds)  作者: 中矢良一
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第28話「巡り逢う」



有里は過去に一度、資料館の展示場へ、出土した実際の埴輪を観にいった。

復元品にはまるで興味がなかった。


常設展示場には、実際に出土した馬埴輪と20cmほどの人埴輪が石膏のブロックのような物の上に置かれていたが、人埴輪の顔には西洋人とも東洋人とも言えない、あえて表現をするとすれば異国人、それを思わせる彫りの深い目の作りが施されていた。


甲冑模型は、室町から江戸時代に戦で使われた権威を象徴するような豪壮な物とは異なる、頭と体を敵の剣から守るための単純な防具であった。


有里がこの仁醍王墓陵古墳を訪れるのは、これで4回目であった。


村井洋介とは遠縁にあたり、洋介の祖父母宅には、この地を訪れるたびに、父田中利一から預かった土産物を携えて、挨拶に出向いた。


地元の人間は、このような歴史的に重要な意味を持つであろう古墳であっても、富士山を目の前にする地方の人々と同じように、一度もそこを訪れたことのない場合が多く、洋介の祖父母も、生まれてこの方、前方後円墓どころか仁醍王の名前さえ知らず、また訪れたこともない、と、過去に有里が立ち寄った時にそんな話を聞いたことがあった。



                *



有里が資料館に着く30分ほど前に、レイ・ルヒと村井洋介はその前からタクシーに乗り込みそのまま大阪市街へ向かった。


一樹はその直後資料館に着いた。有里はこの場所に来ていると思ったからだ。


そこでタクシーに乗り込む変装したレイ・ルヒと村井洋介を見た。

例によって5秒前の光景であった。


タクシーは、時計の秒針がすっと移動する、いつもの感覚に似た感じで、やはり一樹の網膜からすっと消えた。しかし、一樹は慌ててその車を追うよりも、ここで有里が来るのを待とうと思った。タクシーのナンバーもはっきりと記憶に残ったので後からその行き先を探ろうと思った。


有里に会いたい気持ちがどこから来ているのか、大阪くんだりまで女一人を追ってきた自分に正直になるとするなら、やはり、この先警察を退職した有里と一緒になりたい・・・


「田中利一・・・か」


一樹は資料館の入り口で独り言を言った。


「父がどうかしたの??」


ぼうっとして立ち尽くしている一樹の横から、有里が朗らかな顔で一樹に話しかけてきた。



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