エピローグ
つきあい始めて一ヶ月後、気になって聞いてみた。
「先輩、なんで、わたしの告白にOKしたんですか?」
先輩は、逆に真顔で聞き返してきた。
「あれ、やっぱり告白だったんだよね?」
「先輩、相変わらず、失礼ですね」
「ボクに失礼なことを言わせるなんて、寺本だけだよ」
先輩は笑う。
最近、「寺本さん」から「さん」が取れた。
「で?」
「ん? なに?」
「なに、じゃなくて、だから、なんで告白にOKしたんですか? って」
「ああ」
先輩は、まじまじとわたしの顔を見た。
それから、半分笑いながら言った。
「寺本、面白いから」
「…………先輩」
「にらむなよ。ほめてるんだからさ」
「へえ~」
先輩はわたしの頭にポンと手をおいて、にっこり笑った。
陽菜に見せる優しい穏やかな笑顔でもない、世間のみなさまに見せるような優等生の笑顔でもない、他の誰にも見せることのない、いたずらっこのような素の笑顔。
わたしにだけ見せてくれる、素の表情。
「先輩、好きです」
「ありがとう」
先輩はまた、面白そうに笑った。
「ボクも寺本のこと、好きだよ」
え!?
思いもかけない言葉にポカンとしてると、先輩はくすくす笑った。
「あ、もう! からかって~」
「いや。ボクは嘘は言わない」
それは陽菜の次に、かも知れない。
そう思いながらも、顔が赤くなるのを感じた。
ドラマチックでもなんでもない、小さな小さな恋物語。
ちょっとだけ普通ではない、規格外の恋物語。
わたしと先輩の恋物語は、きっとまだ始まったばかり。
これから、まだまだ続いていく予定にしている。
《 完 》
これで「12年目の恋物語」は全編終了となります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
続編の「13年目のやさしい願い」も公開していますので、よかったら読んでやって下さいませ。




