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また秘書が消えた

  財務省の玄関階段を結城と恋三が走って下りて来る。

待っていたタクシーに結城が乗り込む。

後を追いかけて、恋三が乗る。

結城は焦りながら、


 結城「奥田さん、わりーッ! 次、国交省お願い!」

 奥田「はい」


二人の息が弾んでいる。

結城は息を整え恋三を見て、


 結城「ハ〜、忙しーいッ! 何時だ」

 恋三「十時五十分です」

 結城「・・・桃井ッ」

 恋三「ハイ!」

 結城「・・・マッチはよせ」

 恋三「ハ?」

 結城「あんな偉い人の前で居酒屋のマッチでチャッチャやられたらウチのオヤジ(先生)が『凄く貧相』に見られる」

 恋三「え? あ、・・・ハイ・・・」

 結城「ああ見えても一応は財務の副大臣に指名されてるんだからな」

 恋三「すいません」

 結城「・・・そうは見えねえけどな・・・」

 恋三「あの~・・・僕、タバコはやらないもんで」

 結城「なに?」


口答えをする恋三を結城はキツイ目で睨んで、


 結城「 ・・・オマエに秘書の三点セットを教えてやる」

 恋三「エ? そんなモノ有るんですか?」

 結城「そんなモノ有るんでか? 何だ、その言いぐさは! よく覚えて置け。『ライター・クツ・ベルト』! この三つッ! なんぼ銭が無くても良い物を格好良くッ! 議員秘書だからな。忘れるな」

 恋三「へ〜え。なんか『ホストクラブ』みたいですね」

 結城「なに?」

 恋三「あッ、いや、ハイ! 勉強になります」

 結城「おい、松永に電話!」

 恋三「ハイ」


恋三はポケットからスマホを取り出す。


 恋三「もしもし」


松永の声が。


 松永「ハイ、お世話に成ります。門松康正事務所です」

 恋三「松永さんですか?」

 松永「あッ、恋サン? お疲れさまです」

 恋三「こちらこそ」 

 松永「は?」


松永は恋三の『こちらこそ』と言う奇妙な電話の応対に一瞬、躊躇する。


 恋三「あの、これから国交省に行きます。何か有りますか?」


松永は咳払いをして、


 松永「ヴン! それが十三時からの『国防を考える会』ですが本人に確認した所、やっぱり『出席せず』です。それと、・・・ちょっと結城さんに代ってくれますか」

 恋三「ハイ、ちょっとお待ち下さい」


恋三は結城を見て、


 恋三「あの、松永さんが結城さんに変わってくれと」

 結城「くれと?」

 恋三「あ、いや、下さいと」


恋三は結城にスマホを渡す。

結城はキツい目で恋三を見ながら、渡されたスマホに目を移す。

そしてそのスマホを舐める様に見て、


 結城「オマエ、良いのを使ってるな・・・。14か?」

 恋三「いえ、16のプラスです」

 結城「プラス?」


松永の声がスマホから漏れる。


 松永「もしもし、結城さん。モシモ・・・」


結城はスマホを耳にする。


 結城「聞こえてるよ~。どうした」

 松永「混線したかと思いましたよ」

 結城「コンセン?」


松永は焦った口調で、


 松永「あの、青木さんと連絡が取れないんです」

 結城「取れない? ・・・誰が運転してるんだ」

 松永「本人(代議士)でしょうね」

 結城「ホンニン?」

 松永「ハイ。さっき連絡を取ったら本人(代議士)の声で『ウルサイ、運転中だ!』 と言って切れました」


結城は驚いて、


 結城「え~えッ! で、十一時十五分の陳情団は?」

 松永「会館に待たせてあります」


結城は舌打ちをして、


 結城「またか・・・分かった。すぐ戻る」


結城はスマホを恋三に渡し、呆然(ボウゼン)と宙を見ている。


 恋三「どうかしたんですか?」


そして運転中の奥田の肩越しに、


 結城「奥田さん、わりいッ! 議員会館の第一に戻ってくれる?」

 奥田「え? ・・・はい」


恋三が心配そうに結城を見て、


 恋三「何か遭(ア)ったんですか?」


結城はため息まじりに、


 結城「また、居なくなった」

 恋三「イナクナッタ?」

 結城「運転手だよ」

 恋三「えッ! 青木さんが? どうしたんでしょう」

 結城「消えたんだよ」

 恋三「消えた?」

 結城「あのオヤジには困ったもんだ。あの性格は一生、治んねえな」

 恋三「で、誰が運転してるんですか?」  

 結城「本人だよ~、ッたく。また車ん中で『魚売り』の説教でもしたんだろう。おい、計画は変更だ。オマエは十三時の党本部! オレは陳情団を連て国交省に行く。それから十八時の勉強会(I先生の財政研究会パートツー)はオマエが代わりに行って来い。オレとの同行はこれで終わりッ! ほんとに面倒見切れね~よ、あのオヤジは」

 恋三「アノ~・・・」

 結城「何だ!」

 恋三「その間、僕は」

 結城「そんな事は自分で・・・」


結城は恋三の顔を睨(ニラ)んで溜め息まじりに、


 結城「・・・中堅のゼネコンでも廻って『当選の挨拶』でもして来い」

 恋三「え~? 僕、会社の場所が分からないです」


結城は恋三をキツイ目で睨(ニラ)み、


 結城「その辺の本屋で四季報でも買って来いよ」

 恋三「シキホウ? 領収書はもらって来ますか?」

 結城「リヨウシユウショ? オマエなあ・・・」


結城は呆れた顔で恋三を見て、


 結城「もういい。アイポン16のグーグルで調べればみんな出てるよ!」

 恋三「あ~、そうか。でも・・・」

 結城「デモ、何だ!」


結城が恋三を睨(ニラ)む。

恋三は心細そうに、


 結城「あ、いや、分かりまた」


                         続く

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