十三 京都と言えば
「うわぁ、観光客だらけじゃん」
日本人カップルに着物を着た外国人。狭い道に何百人という数がぎゅうぎゅうに詰まってゆっくり動いている。このエリアは小さな店がたくさんあり、食べ歩きが人気だ。京都と言ったらこれ、まである。
しょうじは死神と顔を見合わせる。
「俺らもやるか」
「うん」
気づけば二人も人の波の中、みたらし団子を食べながら歩いていた。
「どこ寄ろうか?」
しょうじは人の壁の隙間から店の中を覗こうとする。ギチギチになった人の塊が出来たり崩れたりでとても歩きづらい。
「あ、見てみて、箸買えるよ!」
死神はある店を小さく、人に当たらないように指差す。
「いらねぇよ、どうせ死ぬんだから」
二人は進みたい方向に人の間をすり抜ける。
「あーん、姿見せるんじゃなかったー。今からでもトイレに行って消えようかな」
人に見られる状態となり、押して押されるのを後悔する死神。だが、しょうじに手をつながれる。
「ふぇっ?!」
しょうじは彼女のいったいどこを掴んでいるか気づいていないようだが、死神にはとても自信のある行動に見えた。その少しした偶然の男らしさ。
「お前だけ楽はさせねぇよ」
ただ台詞がどうも残念であった。
「ほら、京都と言えばあれだろ?」
「分ぁかったよ、ちゃんと歩くって」
死神は彼の手を振りほどいた。暑く感じるのは人ごみのせいか、日差しのせいか、それとも別の何かか……
「京都と言えば?んー、抹茶とかじゃない?暑いから抹茶アイスとか食べたいかも」
死神は冷たいアイスを求めてしょうじに着いて行きながら店を見ようとする。背の高い外国人に埋もれてよく見えない。
「ちが、いや間違ってはないけども……京都と言えば」
しょうじは死神を連れて人の波を外れ、ある店に入る。
「八ッ橋だろっ!」
しょうじは八ッ橋が大好きなのだった。
入った先はもちろん八ツ橋の店。日本で一番歴史の深い、あのチェーンだ。
「これだよこれ!」
しょうじは試食をしながら言う。次から次へと口に詰め込んでいる。
「これください!あとこれも、あれも!それも!どれも!全部ほしい!」
あと五日半で死ぬ男の暴走をだれも止められはしない。
「ん、なにこれおいしい!」
死神も試食してはほっぺたを触っていた。
「な?な?死神にも八ッ橋の良さが分かったか!」
「おお、分かるわかる!」
死神もしょうじが会計にもっていこうとしている大量の箱の山の上に新しいのをのせる。
「あっ、それはダメ」
「えっ?」
しょうじは死神の乗せた箱を取って元の場所に戻す。
「俺、やわらかいのしか好きじゃないんだ」
「あら……そうなの」
八ッ橋が大好物でも、固い八ッ橋は好きじゃないしょうじであった。
「硬いのはダメだよ。ダメ」
「はい……すみませんでした」
お会計をして店を出る。
両手に袋、何箱分もの八ッ橋が入ってる。
ちょうど二人は使われていないベンチに差し掛かる。荷物を降ろし、足を休ませる。
「ホテル出てから初めて座ったんじゃない?」
死神は足を伸ばしながら言った。
「いや、お前バスのこと忘れてないだろうな」
「あっ、まだ怒ってるの?恥ずかしがり屋さん」
「言わなきゃよかった……」
二人は抹茶アイスの店を見つける。すぐ反対側だ。
「しょうがないな、行ってきてやるよ」
「うち、バニラと抹茶のミックスね」
死神の注文を聞いてからしょうじはアイスを買ってきた。
「ほら、溶ける前に食べるぞ」
「うん。あれ、ちょっと形変じゃない?」
死神のアイスはどこかの観光客の背中に少しついてしまったかもしれない。だって、人が多し、仕方がないものは仕方がない。
「あー、だから溶けてるだけだって。早く食べなよ。舌で形でも整えとけ」
二人はペロペロとソフトクリームアイスを食べた。
「やっぱりこれよ!」
京都と言えば八ッ橋なのはしょうじ。死神は抹茶アイスらしい。
二人ともコーンまですべて食べてしまった。
「じゃあ、この八ッ橋をデザートにちょっとだけ……」
しょうじは一箱開ける。
「アイスクリームの後にデザートなんて聞いたことないぞ」
そういうが、死神も八ッ橋が欲しいのだ。
最初はひとつだった。でも二人で食べているのだから二箱かなと。そしたら味の種類のために三、切りのいい数で四、五、六……
気づけばさっき買った八ッ橋はすべてなくなっていた。
「はっ?!もうないだと、俺の八ッ橋が……」
分けたことを少し後悔しているかもしれない。
しょうじはゴミを片づけてリュックにしまう。東京や他の日本中の都市同様、京都もゴミは持ち変える制度の様だ。
そのとき、悲鳴が聞こえる。
「きゃぁぁーっ!」
人々が突然横に避ける。道の真ん中を開けて。そしてその道の真ん中には狂ったように走ってくる男がいるではありませんか。その男は刃物らしきものを持てちて、真っすぐしょうじ目掛けて走っているようだ。
「危ない!」




