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三章 第三十四話 召喚術3

用語説明w

ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ


レイコ社長

ゴーストハンター資格を持つ有限会社クサナギ霊障警備の社長、ドワーフの女性で童顔だが年上。クサナギ流除霊術を修めた凄腕だが、社長の割に威厳と権限は少なめ


ホフマン

クサナギ霊障警備の社員、魚人の男性で元ゲリラ兵の経歴を持つバウンティハンター。ゴツい体格と風貌で、見た目は完全にあっちの人。銃火器のプロでバウンティハンターの資格を持つ


「それじゃあ、どうすればいいんですか!?」


俺は、だんだんと短くなっている蝋燭を前に大きな声を出す


え、怖いんだけど!

蝋燭が尽きたら、俺達は喰われるってことだよ!



「落ち着いてよ。悪魔は負の感情が好物。恐怖や焦燥は、悪魔の力を増すだけ」


「…」



時間だけが過ぎていく


徐々に蝋燭が短くなっている


それを、震えながら見ている中学生の三人


絶望感が半端ない



「おい、間もなくゴーストハンターが来てくれるぞ! すぐに教室から出てこい!」


その時、教室の外から大声が聞こえる

数人の教師の声だ


「先生! 魔法陣から出られないんです!」


ガラッ…


「もう大丈夫だ、今のうちに…」


教室の扉が開き、先生が顔を出す


「先生………!?」


駆けだそうとした中学生を、レイコ社長が止める


そして、祓い棒を一振り

すると…



「あっ…!?」


開いたと思っていた教室のドアは閉まったまま

空気は重く、薄暗い教室のままだ


「悪魔の騙しのテクニックだよ。人間の見たい状況を見せて、自分から魔法陣を出るように誘導する」


「そ、そんな…」


希望を目の前で奪われ、絶望する中学生


「さすがですね、レイコ社長」


俺も、完全に騙されたのは秘密にしておこう


「こっちもプロだからね。悪魔との契約を甘く見ちゃダメ。悪魔を送り返さないと絶対に逃げられないし、悪魔も人間を逃がさないよ。外からの助けは諦めて」


「それじゃあ、どうすれば…」


「悪魔は私たちの言葉をある程度理解している。だから…」


俺はレイコ社長とヒソヒソと話す


「ホバーブーツを使おう。そして…」


「ま、魔法陣を!?」


「あとはラーズ次第。…取り込まれないでね、普通に死んで魂ごと魔界へゴーだよ」


「…」


「あんたたちは、これ。絶対に焦らない。私が合図を出すから」


「は、はい…!」



俺は、ホバーブーツをチェック

そして、ドラゴンブレイドを構える


レイコ社長も、祓い棒を掲げて霊力を練る



「もう一度言う。チャンスは一回、絶対に焦らないこと」


「はい…!」


男子中学生が、蝋燭を持ち上げて頷く


「よし…やりなさい!」


レイコ社長の声で、男子中学生が息を吹きかけて蝋燭を消す

その瞬間、魔法陣の機能が停止


俺にも、今まであった黒いもやを遮っていた壁のようなものが無くなり、魔法陣の中に流れ込んでくるのが分かった



「グオォォォッ!」


目の前に巨大な腕が出現

耳障りな唸り声が響く



さっき魔法陣に突っ込んできた腕と違い、廊下で俺達を引きずり込んだ大きさ

これが本来の大きさなのか



俺はドラゴンブレイドを投げつける

同時に、レイコ社長が霊力を込めた霊札を投擲


ボッ!



ズガァァッ!


霊力の爆発が悪魔の腕の指を一本吹き飛ばし、巨大な腕を押し戻す



「…」


だが、すぐに悪魔の腕が再生

迫って来る



「よっしゃー!」


「火!」


「は、はい!」



女子中学生が、ライターで蝋燭に火を灯す


すると、すぐに魔法陣の機能が再起動

差し込まれていた悪魔の指先を吹き飛ばした


悪魔の腕は姿を失い、また黒いもやへと戻る



「グオォォーーーーッ!」


悪魔が激情を雄叫びにして叩きつける



「無駄よ!」


だが、レイコ社長が持っているものを見たのか、悪魔の意思が動揺



それは、悪魔を呼び出した悪魔の本だった


俺達の作戦


それは、魔法陣を解除して悪魔に襲わせる

そして、一瞬だけ全力で抵抗する


これは陽動作戦で、その隙に俺がホバーブーツでジャンプ

教室の端にある悪魔の書を掴んで戻って来る作戦


ホバーブーツのエアジェットなら、一っ飛びで帰って来れる

転倒のリスクはあったが、何とか戻って来れたぜ



「諦めなさい、悪魔よ。呼び出した呪文が分かれば、送り返すのも簡単だからね!」


プログラミングをする際、ソースコードが見れない状態で改変や制御を行なうのと、その逆とどっちがやりやすいか


答えは明白

レイコ社長が悪魔の本をめくり、何やら呪文を唱え始める



「グオォォーーーー…」


雄叫びと怒号


悪魔である黒い力、不穏な空気に動きが起こり、回転しながらどこかへと吸い込まれていく



「………」


気がつくと、いつの間にか教室の窓から日光が差し込んでいた



「あ…」

「光が…」


ガラララ…



教室のドアが開き、さっきのミミガという女子中学生が先生と一緒に立っていた



「ふー…、悪魔を押し戻せた。助かったぁ…」


「はい…」


俺とレイコ社長は、どっかりと床に座り込む


泣きながら喜ぶ中学生たちを眺めながら、日光の素晴らしさを実感していた




・・・・・・




クサナギ霊障警備



その後、警察によって中学生に悪魔の本を渡したという人物の捜査が開始された


後の鑑定で、蝋燭には人の脂、そして、悪魔の本の表紙に使われている皮は人間のものだったことが判明

あの本は、正真正銘、本物の降霊術、しかも悪魔を呼び出す儀式召喚の呪物だった



「他にも、同様の霊障事故が起こってるんだって」


「あの中学生みたいなですか?」


「ええ。危険な呪物を渡して、想定外の霊障を引き起こした事例があるそうよ」


素人に本物の呪物を渡して、悪魔を呼び出させる

それが、どんなに危険な事か


爆弾を渡すようなものだ

誤って爆発させたら、何人の被害者がでることか



「前に公安の人が来ていた時、霊障が増えてるとか言ってましたけど…」


「それが人為的だった場合は、かなり危険な事よね」

プリヤさんが言う


人為的に霊障をに起こす

それが本当だったらとんでもないことだ


「とりあえず、今回も無事に帰れてよかった…。悪魔、ヤバすぎでした」


「あの力で、まだ顕現してないんだからね。多分、上位悪魔だよ」

レイコ社長が言う


「顕現って何なんですか?」


「何らかの方法で受肉することだよ。あの状態では、まだ悪魔の世界から通信で力を送っているだけなの。でも、肉体を持っちゃったら、それはもうモンスター。ゴーストハンターじゃ手に負えないから、モンスターハンターや騎士を要請しないとダメだね」



俺は騎士学園時代、低位の悪魔とダンジョンで戦ったことがある

低位とは言えモンスターであるに事に代わりは無く、戦うためには闘氣(オーラ)や魔法、特技(スキル)が必要だった


つまり、顕現された時点で軍の装備くらいは必要だということだ



「ラーズ、お前にプレゼントを用意したぞ」


「はい?」


ホフマンさんに呼ばれて、俺は立ち上がる


「ここじゃダメだ、上に来てくれ」


そう言われて、俺は二階に上がる



「これだ」


ホフマンさんは、ゴトッ…と重い音がする包をテーブルの上に置いた


「開けていいですか?」


ホフマンさんが頷いたので、俺は包を開ける

すると、中には…


「リ、リボルバー…」


「この銃はオールドホクブ。小型のリボルバーで、携帯性に優れている銃だ」


「な、何で銃が?」


「ラーズたちが現場に行っている間に来た客ってのが、そっちの人間でな。小型の扱いやすい銃を頼んでいたんだ」


「そっちの人…」


え、怖いんですけど


「現場では、時に個人の火力が必要になる時がある。なんせ、化け物相手の商売だからな」


「はぁ…」


「だから、貴重なバイトのラーズにプレゼントだ。仕事中は使ってくれ」


「あ、ありがとうございます。でも、いいんですか? 普通は許可とか…」


「仕事中なら大丈夫だろう。ただ、プライベートで持ち帰るなよ、普通に銃刀法違反だからな」


「は、はい!」



ホフマンさんのマシンガンに比べたら、とても軽いリボルバー、オールドホクブ

歴史のある名銃だそうだ


「これがホルスターだ」


「ホルスター、かっこいい」


ドラマとかでよく見るやつだ!



「いいね、ラーズ。携帯用小型杖にホバーブーツ。そしてリボルバー。後は霊札を使えるようになれば…」

上がって来たレイコ社長が言う


「リボルバーの射撃訓練に行かないとな。慣れないと危ない」

ホフマンさんが言う


「ホバーブーツの訓練もまだまだだ。やることが多いな」

ビアンカさんが言う


「ウーム、それでは拙者はMEBの運転でも…」

ピッキさんも便乗


「よしよし。しっかりとバイト君を囲い込んでいる。我が社は安泰だ」


「プリヤさん、普通の方法で人を増やしましょうよ」


「こんな危ない仕事、そうそう人なんて来ないのよ」



気が付くと、俺は社員の包囲網に搦め取られている気がした


霊障の増加 三章 第十八話 メンテナンス

ホフマンさんのプレゼント 二章 第三十三話 ホバーブーツ1

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