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三章 第三十二話 召喚術1

用語説明w


レイコ社長

ゴーストハンター資格を持つ有限会社クサナギ霊障警備の社長、ドワーフの女性で童顔だが年上。クサナギ流除霊術を修めた凄腕だが、社長の割に威厳と権限は少なめ


プリヤ

クサナギ霊障警備の社員、魔族の女性で営業、経理、交渉(恫喝)担当。スーツが似合うキャリアウーマンで実質の経営者(黒幕)


ビアンカ

クサナギ霊障警備の社員、ダークエルフの女性で元軍人、圧縮空気を推進力として利用するホバーブーツという変わった装備を使う。武器はククリナイフとハンドガン


ホフマン

クサナギ霊障警備の社員、魚人の男性で元ゲリラ兵の経歴を持つバウンティハンター。ゴツい体格と風貌で、見た目は完全にあっちの人。銃火器のプロでバウンティハンターの資格を持つ


ピッキ

クサナギ霊障警備の社員、ノーマンの男性でシステム管理と運転、操縦担当。ゲーム感覚で情報端末や車、MEBを動かす。風貌は古のオタク、運転中以外はござる口調の人見知り


クサナギ霊障警備



出勤すると、事務所にはピッキさん一人しかいなかった


「こんにちはー。ピッキさん、今日は受付ですか?」


「拙者にそんなことは不可能。話しかけられても、心を無にして無視し続ける所存でござる」


「それ、ちゃんと対応するよりも心の強さが必要じゃないですか?」


俺は、自分の席に荷物を置く


「今日は依頼は無しですか?」


「入ってないでござるな」


「他の皆さんはどうしたんですか?」


「二階で何かやっていたでござるよ」


ピッキさんは、サモナーの杖というモンスター育成ゲームに熱中


「クソが、ハメ技ばかりかましよってからに、絶対に絶対に駆逐してやるでござる! このクソが! このクソガァァァァ!」


ネット対戦で、どうやら連敗中のようだ

俺は、階段で二階へ向かう


すると、レイコ社長の部屋をプリヤさんとビアンカさん、ホフマンさんが覗き込んでいた



「あのー…」


「うわっ、な、なんだラーズか」

「脅かすなよ」


ビアンカさんとホフマンさんが振り向く


「あの…」


そんな二人が、懐に手を入れている

多分、何かを握っている


「危なく弾くところだった」


「やっぱり、それって銃なんですね!?」


「後ろから声かけちゃダメだ」


「あんたら、どっかのゴルゴですか!」


この人たちは、普通に拳銃を持っている

危なくて、簡単に声もかけられないよ



「ラーズ。今、レイコ社長が除霊中よ。ちょうどいいから見ておきなさい」

プリヤさんが振り返る


「あ、はい」


レイコ社長の除霊、ちょっと気になる!


「でも、こんな部屋の中で除霊をするんですか?」


「前から何度も挑戦してる絵画の除霊。ちょっと厄介な霊が取り憑いているのよ」


「呪いの絵ってことですね」



霊障の一つに呪いというものがある

魔属性の効果であり、霊体にとっての毒

生命力を低下させて、酷い場合には死に至る


霊力には魔属性と聖属性という属性が存在する

電力の持つプラスとマイナスの概念に近い


悪霊が取り憑いた呪物は、基本的には魔属性に片寄った霊力に満ちており、これを瘴気と呼ぶ


「瘴気は放射性物質に近いからね。いつの間にか霊体が破壊される場合もあるの。この絵のクラスだと、触ったら死ぬかもね」


「そ、そんなにヤバい絵なんですか!」



レイコ社長の倉庫の奥には、布が掛けられた一枚の絵が立てかけられている


レイコ社長が歩いて行って、布を取り去る


絵は、微笑む貴族の女性の肖像画

豪華な衣装に身を包み、優しそうな表情だ



「…」


だが、なんとなく分かる気がする

もしかしたら呪いの絵という前情報のせいかもしれないが、どこか不気味な雰囲気が伝わってくるのだ



「この世に恨みを残し、未だに彷徨う哀れな存在よ。未練を捨て、次の…」



ウオォォォーーーーーーーン


「…っ!?」



凄まじい雄叫びが貫く


耳で聞いたんじゃない、魂で聞いた、そんな響きだ



「ちっ、この…」


レイコ社長が、瓶に入った水を勢いよくかける

だが、その水は絵まで届かずに霧散



シュウゥゥゥ……


その直後、倉庫の入口の脇に置かれた盛り塩が崩れていく



パチン!

パキン!

パシパシッ!


「うわわわっ!」



部屋中にラップ音が響き渡り始めた



「まだダメかぁ…」


そう言うと、レイコ社長が布を絵画にかける

すると、嘘のように不気味な雰囲気が消え、ラップ音も止んでしまった



「この絵画、呪いが強すぎて除霊が出来ないんだよね。ずっとお祓いをしてるんだけど、全然弱まらないんだ」

レイコ社長がため息をつく


「また失敗か。気長にやるしかないわね」

プリヤさんも言う



「レイコ社長でも除霊できない悪霊がいるんですね」


「そんなのたくさんいるよ。村一つを生贄にして地獄に取り込まれた賢者とか、龍神皇国の始原戦争時代のダンジョンとか、昔の処刑された武将の首塚とか、伝説級の怨霊とか。あんなの、絶対に手を出せないんだから」


「す、凄そうですね…」


「人間がエンシェントドラゴンに挑めないのと同じ。悪霊だって、勝てないものには勝てないよ」


「はぁ…」



「おーい、緊急連絡でござるよー!」


その時、一階からピッキさんの声が聞こえてきた


「き、緊急連絡!?」


「何ですか、それ」


「緊急の連絡よ!」


当たり前の説明をして、プリヤさんが走っていく

レイコ社長とホフマンさん、ビアンカさんは呪いの絵を布ごと縛って固定している



どうやら、この呪いの絵画は、人の目に触れた途端に暴れ出す悪霊らしい

そのため、神の力によって清めた布で覆い、保管しているのだとか

絶対に布がはずれないように、厳重に結んでいのだ



「分かりました、すぐに出ます!」


一階に降りると、プリヤさんが電話で話している声が聞こえる


「プリヤ、何だって?」


「レイコ社長、緊急出動よ。中学校で、オカルト研究部が悪霊を呼び出したって」


「呼び出したって…」


「素人が作った魔法陣が異界に通じて、悪魔のような存在に教室が取り込まれたんだって。このままじゃ生徒達が喰われる可能性があるらしいわ」


「…分かった、すぐに行こう。状況が分からないから全員で、装備を持って」


「すまない、社長。今日は、ホバーブーツレースの予選会で、これから早上がりしなくちゃいけないんだ」

ビアンカさんが謝る


「俺も、これからバウンティハンター時代のクライアントが来る。会社から離れられない」

ホフマンさんも首を振る


「私も、ホフマンと同席するわ」

プリヤさんも断る


「ちょっ、人の命がかかってるのに!」


「仕事だからね、行ける人員で頑張って。社長とラーズ、それとピッキの三人ね」


「拙者はパスでござる。学校などという忌まわしき場所に…」


「さっさと車を出せ。あんたにとっては、家と会社以外は忌まわしい場所だろ」

プリヤさんがピッキさんを蹴り飛ばす


「ラーズ、念のためホバーブーツを持って行け。それと持って来た霊剣もな。武器は多い方がいい」

ビアンカさんが、プロテクターの入った袋を渡してくる


「わ、分かりました」


「それじゃあ、すぐに出るよ!」


俺は、ピッキさん、レイコ社長と共に現場へと向かった




ファンファンファン!


ピッキさんの運転する車には、丸く赤いランプが天井に付けられた



「凄い! 刑事ドラマで見る奴ですよね、このパトライト」


「ふっふっふ。ゴーストハンターは、こういう現場にも急行するから、救急車やパトカーみたいに緊急走行ができるんだよ」


「それなら、いつも使えばいいじゃないですか」


「ダメだよ。あくまでも、使えるのはゴーストハンター協会から許可を得た場合だけだもん」


「め、めんどくさいんですね…」



ギャギャギャギャッッ!


「うわっ!?」



俺は話しながらも、後ろの席でプロテクターを着込む

ホバーブーツを使わなかったとしても、このプロテクターは役に立つ


峠の除霊で車で吹き飛ばされた時も、このプロテクターとヘルメットのおかげで大きなけがは無かった

信頼と実績の防具だ


もっとも、あの時は吹き飛ばされた後に崖から転げ落ちそうになって、危うく転落死だったが



「もうすぐ着くよ!」


「ピ、ピッキさんの運転が荒すぎて、全然着れないんですよ!」



「どけどけどけーーー! 拙者のお通りだーーー!」


パトランプとサイレンのコンボをいいことに、ピッキさんはものすごいスピードで赤信号を突き抜けて行った




レイコ社長の部屋 二章 第十五話 初出勤1

峠の除霊 二章 第三十三話 ホバーブーツ1

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