三章 第二十一話 オープントーナメント2
用語説明w
ゴドー
鬼のゴドーの異名を持つ獣人男性で空手部の先輩。ケイト先輩の一年先輩だったが、留年して同期になった。好戦的な性格で、体格とセンスにも優れる。その実力はプロの格闘家を並み
ケイト
茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。したたかな性格のヤワラちゃん
さぁ、いようよ俺の試合だ
相手は…
「ディアウスか。お前の相手、強いぞ」
「え!?」
「東玉流のジュニアチャンピオンだ。前に見たことある」
「えー…」
「お前のブロックの優勝候補だ。ぶっちぎりのな」
「…もうちょっといい情報ないんですか? 弱点とか」
「確か、空手とボクシングをやっている。そしてレスリングも齧ってたはずだ。打・投・極の全部ができるタイプだな」
「隙がないじゃないですか…」
「まぁ、ごちゃごちゃ言ってないで全力をぶつけてこい。お前の実力じゃ事前情報なんて邪魔だ」
そう言って、ゴドー先輩は俺のオープンフィンガーグローブをテープでグルグル巻きにした
「赤、ディアウス選手! 白、ラーズ選手!」
呼び出されて、俺は試合場に入る
相手は俺よりも身長が高い
ガタイがいいというよりは、手足が長くモデルみたいな体系だ
「ふぅー…」
初試合だ
めちゃくちゃ緊張する
足元がフワフワ
考えがまとまらない
「ラーズ、気合だぞ!」
「頑張って!」
ロンとケイト先輩の声が聞こえる
「始め!」
レフェリーの声で、俺達は同時に構えた
お互いに見合う
バシッ!
鋭いジャブが飛んでくる
こっちもジャブを返す
パパン!
今度はジャブ二つを返される
ガードの上からパンチが重ねられる
くそっ、手数が多いし腕が長い
こいつもパンチが得意なタイプだ
ケイト先輩を襲ったクソボクサーを思い出す
あいつよりも、距離と手数は上
だが、カウンター狙いという感じではない
「しっ…!」
ローを返す
だが、アッパーやフック
長い腕から多彩なパンチが繰り出される
追撃ができず、蹴りが単発で終わらされる
パパン!
「くっ…」
左ジャブから左のフック
俺はガードの隙間から、相手の右拳を確認する
右が来る
これの打ち終わりにミドルを…
ズドッ!
「がはっ…!?」
右ストレートを警戒した
だが、飛んできたのはボディストレート
鳩尾を打ち抜かれ、痛みと苦しさが突き抜けた
こ…れ…、まず…
効いた…
「ガードを下げるな!」
ゴドー先輩の声
「…っ!!
ゴッ…!
渾身のストレートが飛んでくる
ゴドー先輩の声で、ギリギリ腕を挟んだ
だが、腕ごと顔が弾ける
頭がぼーっとする
ほぼ直撃だ
「危ない…!」
「バカが、腕入れてなかったらKOされてたぞ」
ケイト先輩が悲鳴を上げ、ゴドー先輩が言う
「ラーズ、しっかりガードしろ!」
ロンが叫ぶ
「相手の選手、パンチが上手いよ」
ケイト先輩が、心配そうに見守る
ドッ
バシッ
ディアウス選手がパンチのラッシュ
ガードの上からストレートを叩きつけられ、ジャブやフックを重ねられる
俺は必死にガード
亀になって耐える
距離が遠い
入ろうとすると、ジャブを連続で当てられる
かと言って、この距離だと俺のジャブは届かない
「ラーズ君、このままじゃ完封されちゃうよ」
「まったく…。ラーズ、蹴りを返せ! パンチが得意なやつに付き合うな!」
ゴドー先輩の声で、俺は腕を突き出しながら、思いっきりミドルキック
「ちっ…」
ディアウス選手の手が一度止まる
俺は、すかさずローとジャブ
「最後は蹴りまでだ!」
ゴドー先輩が指示を出す
相手の腕のほうが長い
この差で、俺のパンチだけ届かない
ドシッ
「ぐっ…」
だが、パンチから繋げたローが届く
更にミドルも
蹴りをフェイントに、フック、ストレート
不思議だ、急に攻撃が届くようになった
ドスッ
「うぉっ」
相手のフックと俺のストレートがかち合い、腕が交差する
「そこだっ!」
「大腰!」
ゴドー先輩とケイト先輩が同時に叫ぶ
「うおぁぁっ!」
俺は相手の胴を掴んで、真後ろへ投げる
スープレックス気味に一緒に倒れる
だが、ディアウス選手はレスリングもやっている
一気に海老の動きで俺の下から抜ける
「あいつ、寝技もできるのかよ」
ロンが言う
ディアウス選手の隙が見当たらない
立ち技も寝技も、総合力が高い
「ラーズ、サイドを取られるぞ!」
ディアウス選手が俺の脇を刺す
脇に腕を入れられた状態で、俺が不利な体勢だ
グイッと力を入れられ、ディアウス選手が体を起こす
二人して膝立ちの状態に持っていかれた
しかも、真横から組まれ、逆に俺が寝転がされる
「…っ!!」
その瞬間、俺は抵抗をやめる
自分から寝て、右足をディアウス選手の左腕に絡める
オモプラッタ
腕絡みとも呼ばれる、肩関節を足で極める関節技だ
「うおぉぉっ! あいつ、ディアウスを極めるぞ!」
「さっきは投げてたぜ。誰だよ、あれ」
ディアウス選手の知名度で、この試合のギャラリーが増えている
「ラーズ、相手の腰を持て!」
ゴドー先輩が言う
「くっ…!」
その瞬間、ディアウス選手が前回りに回転
前転の要領でオモプラッタから脱出する
「馬鹿野郎、にわか仕込みの技が試合で極まるか!」
「あー、ちゃんと教えておけばよかった!」
ロンとケイト先輩が頭を抱える
お互いに距離を取り、俺とディアウス選手が立ち上がる
また、スタンドからだ
ドッ!
「うっ…!」
力の入った左ジャブ
ドン!
ゴッ!
ストレートからのワン・ツー
更に、大振り気味のフックとアッパー
ディアウス選手がパンチを振り回す
まさか、オモプラッタで怒ったのか?
ディアウス選手のストレート!
これを止めて打ち返す!
ドスッ…!
コヒュッ…
また腹を打ち抜かれた
呼吸が止まったのが分かった
くそっ…、またボディストレートかよ
あ、これ、呼吸が出来ない奴だ
「あー、上手かったな」
「わざと強打を上に集めて、意識を顔に向けさせてのボディかぁ」
ゴドー先輩とケイト先輩が呻く
ディアウス選手が動く
それが見える
まずい、もう一発もらったら耐えられない
ゴッ…
「うおーーー!」
「倒した!」
歓声が上がる
ディアウス選手が尻餅
俺が呼吸を放棄して出した左フック
それが、眼の前のディアウス選手の顎を打ち抜いたのだ
だが、俺も腹のダメージで動けない
そのまま、膝から崩れる
「ラーズ、立て! 相手は効いてるぞ!」
ロンの声が聞こえる
だが、体が動かない
苦しい
息ができない
呼吸が出来ない
「あのボディストレート、どっちかというと正拳突きよね」
「空手出身だけあるな。真っ直ぐで効かせる突きだ」
ケイト先輩とゴドー先輩が話す
正拳突き
空手で一番有名な突き
突き手と逆の手を引き、腰の回転や体重を乗せ、かつ、拳の捻りを加える
更に、突いた瞬間に体の関節を締めることで衝撃の貫通力が増す
反面、ストレートよりもモーションが大きくガードも下がる
対武器の際は腕でのガードが意味をなさないため、威力を上げることに特化した武術の突きだ
「う…、くっ…」
先に立ち上がったのはディアウス選手
だが、その足が震えている
「ラーズ君!」
「ここからは根性だぞ! 立て!」
「ラーズ、諦めるな!」
三人の声援
「ヒュー…ヒュー…」
俺は、腹を抑えながら立つ
「ファイト!」
レフェリーが俺達を見て試合を再開する
だが、痛い…
苦しい…
限界だ…
「見合うな、行け!」
ロンの声
「相手も効いてるよ!」
ケイト先輩の声
…心が折れた
もうやりたくない
くそっ…
勝負所なのに、足が出ない
「テメーの意思で試合に出たんだろう! 勝手に折れるな!」
ビクッ…
「…っ!?」
ゴドー先輩の大声
俺は慌てて前に出る
腕が重い
足が重い
ドッ…
ストレートをやっとのことで打つ
ピピーーー!
「やめ!」
笛が鳴り、レフェリーが俺達を引き離す
意味が分からず俺がレフェリーを見る
すると、タイマーの残り時間の表示がゼロになっているのが分かった
ここで時間切れだった




