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三章 第十話 工事現場が除霊現場2

用語説明w


霊札:霊力を込めた徐霊用の札


レイコ社長

ゴーストハンター資格を持つ有限会社クサナギ霊障警備の社長、ドワーフの女性で童顔だが年上。クサナギ流除霊術を修めた凄腕だが、社長の割に威厳と権限は少なめ


ビアンカ

クサナギ霊障警備の社員、ダークエルフの女性で元軍人、圧縮空気を推進力として利用するホバーブーツという変わった装備を使う。武器はククリナイフとハンドガン


ピッキ

クサナギ霊障警備の社員、ノーマンの男性でシステム管理と運転、操縦担当。ゲーム感覚で情報端末や車、MEBを動かす。風貌は古のオタク、運転中以外はござる口調の人見知り


俺は眼の前の石像を観察する


今のところ、ピクリとも動かない

普通の石像のように見える


しかし、霊力が分かるレイコ社長は、あれがゴーレムだと言った



「…どうします?」

俺はビアンカさんを振り返る


「よし、実践訓練だ。まっすぐに走り抜けろ」


ビアンカさんが石像の眼の前を示す


「えっ、俺がですか!?」


「もちろんだ。大丈夫、ラーズはセンスがいい。ホバーブーツにもう乗れ始めているのだからな」


「だから、全然乗れてませんってば! 真っ直ぐ進むだけでも吹っ飛ぶんですよ?」


「普通は、その真っ直ぐが出来るのに数ヶ月かかるんだ」


「え…」


「さっさと行けぇぇっ、誰が口答えを許した!」


「ひぃっ、はい!」



ボッッ!



俺はビアンカさんの怒鳴り声で、思わずエアジェットを吹かす


靴底のエアで体が浮き、摩擦を失った俺の体がスーーーッと進み出す



「え?」


その途端、石像が音もなく腕を振り上げる


そして、流れるような動きで石の太い腕を振り下ろす



「うおぁぁぁっ!?」


ドゴォッ!



焦ってエアを噴射


その勢いで俺はゴーレムパンチを奇跡的に回避

ゴーレムの股の下に飛び込み、ゴロゴロ転がって通り抜ける


やっぱり全然乗れねーよ、ホバーブーツ!



「動き出した! 近づく生物に反応してるよ」

レイコ社長が祓い棒を構える


「どうする、社長?」


「ビアンカが気を引いて、ピッキが抑える。そこで私とホフマンで霊的構造を破壊する…って感じ」


「了解」



ゴーレムとは、人形と呼ばれるカテゴリに属する存在


似た存在に、電子回路とアルゴリズムによる判断を行うロボットがあるが、それとは全く違う存在だ


最大の違いは、魔力によって作られた疑似的な魂を内包すること

この擬似的な魂という霊的構造によって魔力回路を制御、非生命体である石などの体を動かしている



「ちょっ…」


ゴーレムが、股を抜けた俺を振り返る

そして、また剛腕を振り上げる



俺は逃げるために立ち上がる

だが、焦ってエアを出してしまい、自ら摩擦を無くしてすっ転ぶ


あ、喰らう…

これ、死ぬかも…


一瞬、思考停止

どこか他人事で世界を眺める



「ぁ…」


そして、焦りが湧き上がった瞬間…



ブオォォッ!


「うげぇっ!?」



襟首を掴まれてお疾走

首吊りみたいになりながら、俺は颯爽と走り抜けたビアンカさんに助け出された



「ビ、ビアンカ師匠ぉぉぉっ!」


「どうした、泣きながら」


「し、し、死んだかとぉぉぉっ!」


「部下を見捨てる師匠がいるか。情けない、泣くんじゃないよ」



ちょっとだけ、チビッた…

こ、怖かった、怖かったよぉぉ!


ビアンカさんの胴に縋り付いて、ちょっと涙ぐむ


そんな俺の頭を抱くビアンカさん

その胴は引き締まり、完全に軍人の体だった




ガッ!


ガキッ


ガガガッ!



大きな音がして、振り返ると小型のMEBとさっきのゴーレムが組み合っていた

MEBに乗っているのはピッキさんだ



ゴガァッ


MEBが腕を横振り

ラリアットで石像をなぎ倒す



「プ、プロレス技?」


「MEBのマニュピレーターで石を殴ったりしたら、すぐに壊してしまうからね。ガードが付いた前腕部で殴るのセオリーさ」

ビアンカさんが教えてくれる



MEBとは、乗り込み型のロボットのこと

身体拡張機構の略で、人間よりも長い腕や高い身長を提供する機械だ


そのサイズは様々であり、クサナギ霊障警備にあるものは小型タイプ

身長二メートルほどの身長であり、ボディ内のシートに座って操縦する


腕足もモデルによって様々であり、下半身がキャタピラーや四本脚

腕もショベルカーや鉄球、五本指などに付け替えられる



「こんなもんかぁぁぁっ、来いよオラァ!」


ガガガッ



ピッキさんが煽りながら、ゴーレムと両手を合わせて組み合う


斜めに押し出し、ゴーレムを崩す



ゴッ!


すかさず、ピッキさんがラリアットでぶん殴る



すげー、まるで怪獣大決戦だ


「ピッキの奴、ノッてるな。大丈夫そうだ」


ホフマンさんが、肩に担いでいた筒を降ろす

それ、ロケットランチャーってやつか?


「使わないんですか、それ?」


「弾薬もタダじゃない。ロケット弾は特に高いからもったいない」


「そうなんですか…」


「霊札のほうが安いからなぁ。霊札の材料は紙で、クサナギ流除霊術の宗家で安く仕入れられる。できるなら、レイコ社長に仕留めてもらったほうがいい」


「いや、分かりますけど、大丈夫なんですか?」



ドゴン!



衝撃音が響き、ピッキさんのMEBが吹き飛ばされる


ゴーレムの体当たり

巨体による威力は、まるでダンプカーに突っ込まれたような衝撃だ



「ラーズ、フォローに入るぞ」


「えっ、また行くんですか!?」


ビアンカさんの言葉に、俺は固まる

さっきのがトラウマになってるよ!?



「ピッキがやられるぞ。前を通るだけでいい」


そう言うと、ビアンカさんがエアジェットで一気に飛び出す



ブオォォッ!


そして、ゴーレムの周囲を高速でグルグルと回る



ズン!


ドン!



ゴーレムのパンチが空を切り、地面にめり込む

ビアンカさんのスピードに、全くついていけていない



「ビアンカさんの動き、凄い…」


「ラーズ! そこから奥の方へ進め、真っ直ぐでいい!」


「は、はい!」



ビアンカさんに怒鳴られ、俺は慌ててエアジェットで跳ぶ



ブオォォッ!


「う、うわっ!」



よろよろと地面を滑る

すると、ゴーレムが反応


俺を追って走り始める



「えぇぇぇっ!?」


ゴーレムが俺に両手を広げて飛びかかる体勢になる


そして、俺の目の前は、壁のように切り崩された崖になっていた


お、追い詰められてるじゃねーかぁぁぁっ!



まずい、バランスが取れなくて躱せない!

俺はとっさにエアを止める


両足で地面に着地

すぐさま、横っ飛び



ドゴォッ!


俺の脇をすり抜けて、崖にゴーレムが突っ込む



「よくやった!」


ビアンカさんの声



その後ろから、ピッキさんのMEBが飛びかかる


「っしゃぁぁっ!」


ゴーレムを背中側から羽交い締めにして、地面に押し付けるように押さえつける



「社長ぉぉぉっ!」


「分かってるよ!」


ピッキさんの声で、レイコ社長が走ってくる


うんしょうんしょと、暴れるゴーレムの背中に登り、頭に手を添える



ギギィッッ!


ゴッ


グオォォン!



ますます暴れるゴーレム

ピッキさんのMEBが無理矢理押さえつけ続ける


「何をしてるんですか、レイコ社長は」


「ゴーレムの調査だ。暴れ始めた原因を霊力で読み取るのさ」


「そんなことができるんですか?」


「ああ見えて、クサナギ流除霊術の凄腕だからな」


「ああ見えて、意外だよなぁ」


「コラー、ホフマンとビアンカ、勝手なこと言うな!」



ボシューーーッ!



レイコ社長が、霊札を貼り付けてゴーレムの魔力回路を破壊

ゴーレムが元の石像に戻って沈黙した




・・・・・・




「つ、疲れた…」


「ラーズ、ホバーブーツ乗れてたじゃないか」

ビアンカさんが俺の肩を叩く


「まっすぐだけですよね…。しかも、フラフラしちゃって安定しません」


「この短期間で、あれだけ乗れれば大したものだ」


「そ、そうですか?」


褒められるのは、悪い気がしないけども


「自身を持て、ラーズ。ホバーブーツは難しいが、なかなかの上達だ」


「あ、ありがとうございます」


「だが、さすがに上達が早すぎるのも事実だ。どこかでホバーブーツのような高速移動の乗り物を使っていなかったか?」


「高速移動ですか…」


そんなもの、別に…


いや、あるな

もしかして、あれか?



「ビアンカ、ラーズ! 行くよー!」


「どこにだ、社長」

ビアンカさんが顔を向ける


「今回の元凶の退治だよ。この工事で、この先の木を切ろうとした時に、ゴーレムが暴れ出したんだって」


「木?」


「呪いの木ってやつだね。今回の事件の親玉だよ」


レイコ社長が得意気に立ち上がった



MEB 二章 第二十九話 免許合宿1

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドラゴンエッグと感覚が似ているからこその上達速度か。これからホバーブーツを長く使い込んでいくわけだけどドラゴンエッグが復活したら学生時代より使いこなせる用になりそうだね
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