表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/374

三章 第一話 夏休みの終わり

用語説明w


フィーナ

ノーマンで黒髪、赤目の女子。ラーズの義理の妹で、飛び級でハナノミヤ聖女子大学に進学。クレハナの王族であり、内戦から逃れるために王位を辞退して一般家庭に下った。騎士の卵でもあり、複数の魔法を使える。最近はラーズの怪我の治療によって回復魔法の腕が上がっている


カエデさん

ラーズ達のアパート、メゾン・サクラの管理人で、黒髪ノーマンの優しいお姉さん。ラーズの好みだが、しっかりと既婚


「あっついなぁ…」


「アイスー…」


「いや、食べてたじゃん」


「足りないよ、全然」


「…」



あっという間に夏休みが終わり

帰省を終え、俺とフィーナはシグノイアにあるメゾン・サクラへと帰って来た



「フィーナちゃん、ラーズ君、お帰りなさい。実家は楽しかった?」


カエデさんが、麦わら帽子をかぶって出迎えてくれる


「はい。久しぶりにゆっくりできました」


「フィーナは春の連休に帰ったじゃん」


「それから三か月くらい経ってるでしょ」


そんな俺達を見て、カエデさんが微笑む


「カエデさんは、実家とかには帰らないんですか?」


「私は、まだいいかな…」

カエデさんが、ちょっとだけ遠い目をする


「何かあったんですか?」

フィーナが尋ねる


おいおい、お前!

話し辛いことかもしれないのに、しれっと聞くなよ!



「それがね、私の両親ったら実家に帰ると、子供はまだか、子供はまだかってうるさいのよ」


「そうなんですか」


「子供なんて授かりものなのに、いつもいつも…」


「自分たちのペースでやりたいですよね。旦那さんにもプレッシャーになっちゃうし」


「そうなのよー。フィーナちゃん、女の子だから分かってくれるのね」


「分かりますよー。男なんて、いつもは気づきもしないのに、いざとなったら委縮したりしますもんね」


フィーナ、何言ってんの?


それよりも、さすが女子

すぐにおしゃべりの花を咲かせられるってのは羨ましい…


「フィーナちゃんったら、若いのにいろいろ経験してるのね」


「そんなことないですよ。全然…」


フィーナの視線に合わせて、カエデさんも顔を向ける

その先には俺がいた


「あぁ…」


「鈍感なのに繊細なんですよ」


「兄妹でも、そう感じるのね。でも、男の子ってそういうものかも」


「そうなんですか…」


「ちょっと、フィーナ。何の話をしてるんだよ!」


「ラーズが鈍感で気弱でバカだって話だよ」


「バカは付け加えてるじゃねーか! ほら、戻るぞ。カエデさんにこんな暑い中で待たせるなって」


「ラーズ、カエデさんばっかりにいい顔するんだから」


「人聞き悪すぎぃぃっ!!」


そんなフィーナを引きずって、俺達は微笑むカエデさんと別れて部屋に帰って来たのだった




「そう言えば、午後はどうする?」


「図書館でも行こうかな。涼しいし、勉強もあるし」


「試験終わったのに勉強? 珍しい…」


「必修が一つ追試になったんだよ。ほっとけ」


大学の前期試験は夏休み前


選択科目は単位を落とすだけで終わるが、必修科目はそうはいかない

そのため、点数が足りなかったものは補修試験を受けなければならない


もちろん、大幅に合格点に足りない点数ならば、補修なんて救済措置は無い



「結構勉強してたのにダメだったんだ」


「ダメだったんだよ、恐ろしいことに」


「本当に勉強したの?」


「…あの科目だけ抜けてたんだよ」


「うっかりだね、相変わらず」


「相変わらずって何だ」


そんな時…



ピンポーン


チャイムが鳴る



「何だろう。はーい」


俺がドアを開けると、外にはゴーグルをした男性が立っていた

細長い段ボールを持っている


「お届け物です」


「あ、ありがとうございます」


「ここにサインをお願いします」


「はい」


俺が荷物を受け取ると、男性はお辞儀をする

そして、二階の俺達の部屋の前の廊下の柵を乗り越えて外へと飛び下りる



「えっ!?」


男性の手には、宙に浮いた箒

これ、魔法の箒か!



「あれ、空輸運送だよ。珍しいね」

フィーナがドアから顔を出す


「魔法の箒でやる運送屋さんか。凄いな」


すでに、魔法の箒は隣の家の屋根の上へ

次の届け先へと向かっていく


「魔法の箒の下に荷台がついてる。運送業ようにカスタムしてるんだね」


「あの人も、魔力使える魔法使いってことだよな」


魔法の箒は魔力をガソリンとして使う

そのため、魔力を有して魔法の箒の定型魔法に注ぎ込むという技能が必要なのだ


ちなみに定型魔法とは、魔力を決まった方法に使う特殊な魔法のこと

あらかじめ構築済の魔法構成に魔力を注ぎ込むことで、誰が使っても決まった結果を得ることができる


だが、魔力自体を持たない俺には、この定型魔法も使うことができないのだ



「あっ、やっと来た!」

フィーナが荷物を開けて喜ぶ


「何なの、それ」


フィーナは、魔法陣のようなものが描かれた布を広げている


「これ、練習用の魔法陣だよ」


「練習用?」


「魔法構成を阻害する魔法陣なの。この上で魔力を練っても、魔法構築がしにくいんだって」


「それでどうするんだよ」


「阻害環境で魔法を構成することで、構成速度や正確性を上げる練習になるの。自主練習したくて、騎士団の人に借りたんだ。まさか、空輸運送で送ってくれると思わなかったけど」


「そうか、フィーナは龍神皇国の騎士団で魔法を練習してるんだもんな」


こんなちんちくりんのくせに、Bランクの騎士の卵

数々の魔法を使いこなし、喧嘩でブイブイ言わせている不良共を一瞬で殲滅する人間兵器なんだ



「ラーズ、明日は?」


「部活の練習だよ」


「夏休みなのに?」


「そうだよ。むしろ、夏休みの方が練習が多いんだって」



東玉流総合空手部

夏休みに入ってからも、しっかりと練習があった


更に、柔道部へと出稽古も頻繁に行われており、休む暇はない



「ゴドー先輩、暑すぎませんか?」


「夏だからな」


「武道館の方はクーラーついてますよ」

ロンも頷く


「こっちは旧道場だからな」


「…あっちの道場でやりましょうよ。借りられるんですよね?」



ゴガッ!

ドゴッ!


「ぐぁっ!?」「あうっ!!」



「ごちゃごちゃうるせぇ。暑い中でも水分取りながらやるんだよ。さっさと終わらせりゃいいだろうが」


「酷い…」

「鬼…」


「よし、休憩終わるぞ。サンドバッグを持って、膝を左右百回だ」


「えっ、五十回ずつも!?」

「このヘロヘロの時にですか!」


「アホ、右百回、左百回だ」


「…!」





………





……









「ラーズ、大学に入ってから忙しいよね。部活にバイトにって」


「充実してるって言ってくれ。…正直、もっと休みたい」


「つまんないよ、ずっと出かけててさ。帰って来れば怪我ばっかりだし」


「あの怪我は、ホバーブーツの練習のせいだよ」



相変わらず、ビアンカさんのホバーブーツ訓練は、動いた途端にすっころんだり吹き飛んだり

プロテクターをしているのに、生傷が絶えない


フィーナの回復魔法には助かっている

擦り傷や打撲はまだいいが、足首や手首を捻ったり、爪が割れたり、練習を続けるのがきつい怪我が治るのは本当にありがたい



「気を付けてよ、いつか大ケガしそうだし」


「分かってるって」


「たまには、私に恩返ししてもいいんだよ?」


「…何がいいんだよ」



通常、回復魔法などは医療行為であり、特殊技能だ

つまり、資格を取れば回復魔法を行使して、対価を得ることができる


フィーナの回復魔法には感謝しかない

多少の怪我ならすぐに治り、また練習ができるのだから

しかもタダで


「ボーリング行きたい」


「今日?」


「今日。バイト代が出たラーズの奢りで」


「…なぜ知っている」



仕方がないか

行くなら善は急げだ


俺達は出かける準備をする

正直、俺も帰って来たその日に勉強などしたくない



「夏祭り楽しかったね」


「そうだなぁ…」


あっという間に終わった休暇

また始まる、部活とバイト


そして追試と後期の授業



俺達は、去っていくであろう夏を惜しむかのように、遊びに出かける


…その結果、追試の追い込みがやべーことになったのは言うまでもない




※ メゾン・サクラ周辺の位置関係



挿絵(By みてみん)


魔法の箒 一章 第五話 デスレース


遅くなってすみません、三章開始です

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ