二章 第二十六話 カフェ
用語説明w
フィーナ
ノーマンで黒髪、赤目の女子。ラーズの義理の妹で、飛び級でハナノミヤ聖女子大学に進学。クレハナの王族であり、内戦から逃れるために王位を辞退して一般家庭に下った。騎士の卵でもあり、複数の魔法を使える。最近はラーズの怪我の治療によって回復魔法の腕が上がっている
ロン
黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる
「ラーズ、大丈夫?」
「無理、頭痛い…」
武部会の後、俺は朝帰り
「臭っ、えっ、酒臭っ!」
「…」
酒を浴びて来たんだから当たり前だ
うるさいフィーナを無視し、俺はなんとかシャワーを浴びる
そして、布団にダイブした
「ラーズ、もうお昼過ぎたよ」
「うぅ…」
フィーナに呼ばれ、俺は布団から這い出る
そして、冒頭のやり取りに至る
「どんだけ飲んだのよ…」
「飲んだとかじゃない、浴びてきたんだ」
「何それ」
「フィーナ。世の中には知らなくていい、知る必要がない世界が存在するんだ」
「それが昨日の飲み会?」
「うん。酔っぱらいも、度が過ぎれば狂人だって分かったよ」
「ふーん…。大変そう」
「ああ、とんでもない世界だったよ」
その分、ロンと助け合い乗り切るという面白さもあった
ヤベーのにやられるほど、下は結束するもんだ
「ね、ラーズ。これから出かけようよ」
「え、今から? 体調が酷いんだけど」
「大学で聞いたカフェに行ってみたいの」
「カフェか…。ちょっと、そういう気分じゃないなぁ」
「えー、美味しかったら、セフィ姉に教えてあげたかったのに。茶葉に拘ってるみたいだから」
フィーナが口を尖らせる
「セ、セフィ姉のためか…。それなら、仕方ない」
「何それ。私はダメでセフィ姉ならいいってこと?」
「いやいや、セフィ姉にはお互いに世話になってるだろ。少しは恩返しって意味だよ」
「…」
フィーナが、明らかにイラッとしたのが分かった
その瞬間の閃きに言い訳を託す
ちょっと睨んでくるフィーナの視線には気が付かないふりだ
「ん? どうするよ。行かないのか」
「…行くよ」
訝しがりながらも、フィーナが立ち上がった
「それで、どこまで行くんだよ」
「えっとねー…」
フィーナの案内で隣の駅へ
一駅なのに、全く違う街
とても新鮮だ
「こっちは、完全に住宅街だな」
「でも、海が見えるカフェやレストランがあるね。おしゃれ!」
フィーナが嬉しそうにキョロキョロする
しばらく進むと、恋人岬と書かれた看板があった
「なんだろ、これ」
「…縁結びのパワースポットだって」
「近くにこんなのあったんだな」
「そうだね。行ってみる?」
「俺は別に…。恋愛は自分で頑張らないと」
「つまんない男。もてないくせ」
「おいおい、フィーナさん。何を言ってるんだ。俺だって、大学入ってからはいろいろあるんだぞ」
「…えっ、そうなの?」
「まぁな」
「何があったの?」
フィーナがジッと見てくる
「女の先輩がさ」
「先輩が?」
「…優しくしてくれた」
「なーんだ、そんなことかぁ。くだらない」
「ほっとけ」
なぜか、ちょっとホッとしたように見えるフィーナ
何を安心してやがるんだ
俺だって、これから出会いくらい…
ケイト先輩、デートとかしてくれないかなぁ
「あった、あのお店だよ」
フィーナが言う
その先にはロッジ風のカフェがあった
「よし、入ろう」
「うん」
俺達は、やっと見つけたお目当てのカフェに入っていった
「モンブラン、美味しい」
「ミルクティーも」
「セフィ姉は喜びそうか?」
「うーん、どうだろう。眺めはいいけどね」
セフィ姉は紅茶が好きすぎて、知識と技術はプロ級だ
カフェ巡りも好きなのだが、満足する紅茶には出会えていないとか
「あ、そうだ。ラーズ、私ね」
フィーナが顔を上げる
「どうした?」
「一度、クレハナに戻ろうと思うの」
「え、何かあったのか?」
フィーナは、元クレハナの王族
だが、うちの養子になってからはクレハナに帰っていない
その理由は、クレハナの内戦のためだ
実家ではあるのだが、危険なため気軽には帰れる状況じゃない
「ううん。受験勉強に集中するためにずっと帰ってなかったでしょ。その後も、引っ越しや入学で忙しかったし」
「確かに」
「だから、一度、戻ろうと思ったの。来月の大型連休で」
「あー、なるほどね。父さんと母さんには言った?」
「うん。そうしたら、ドース父さんに顔を見せてきなさいって」
「そっか。どうやって帰るんだよ」
「セフィ姉が送ってくれるって」
「それなら安心か。でも…」
「どうしたの?」
「いや、一人って寂しいなって」
「えっ!?」
フィーナが驚く
「だって、二人でご飯食べたりテレビ見たりしてたのにさ。あっ、それなら…」
「何?」
「俺、免許取りに行こうかな。フィーナがいない間に、合宿で」
「免許って、車?」
「そうそう。バイト先でも、免許取ってくれって言われてたんだよね」
「そうなんだ。私も免許取りたいな」
「フィーナも取ればいいじゃん。俺が先に取ったらドライブ行こうぜ。レンタカーで」
「…楽しそうだね。でも、大丈夫かな」
「何が?」
「ラーズの運転、怖そう」
「失礼な!」
俺達は、カフェを堪能した
・・・・・・
講義 技術文明史
講師が教壇に立つ
「人類の歴史とは、技術の歴史である」
物質文明の大いなる転換点、産業革命
熱エネルギーを動力に変える、蒸気機関の発明である
この技術によって生産力が爆発的に増え、科学の進歩が飛躍的に加速した
「続いて、魔法文明だ」
魔法文明の転換点は、魔石の利用方法の発明だ
それまで魔法とは人類が構成し、発動する必要があった
しかし、魔石に魔法を封印することによって、構成済みの魔法を持ち歩けるようになった
発動に魔力を必要とせず、強力なモンスターに大量に魔法弾をばら撒けることで、格上のモンスターに対するジャイアントキリングが可能となり、人類の支配地域の拡張に成功することとなった
「ここまでは、惑星ウルの物質文明と惑星ギアの魔法文明のそれぞれの転換点。そして、最後にペア構成後の魔法科学文明の転換点だ」
それは、魔力・電力相互変換理論
物質文明で作られる大電力を魔力に変換するための方法だ
大規模構造魔法などの発動を行う魔力は、一個体の人間には不可能
一個人の魔力では生成できる魔力が圧倒的に足りないからだ
この理論は、発動に必要な膨大な魔力を発生させ、高次元生命体とも渡り合う手段を生み出した
実際、例を上げるなら…、
終末戦争アポカリプスの神らしきもの
トライアングルウォーの三体の魔王
その他、複数の魔大戦
などなどを人類は勝ち抜いている
「なぁ、技術文明史って難しくねーか?」
ロンが愚痴る
「そうか? 俺は結構面白いけど」
「ラーズ、歴史が好きなんだよな。失敗したよ」
この授業は、俺がロンを誘った
寝坊の時などに助け合うためだ
「まぁまぁ。出席して試験を頑張れば単位くれるからさ」
「そりゃ、どんな授業だって同じだろうが!」
ロンがブツブツ言う
ロンはいいやつだ
そして、部活の練習は真面目だ
だが、勉強は全然しない
真面目なのに勉強嫌いとは、これいかに
「技術文明史の教授、結構ヤベーらしいぜ」
ロンが言う
「えーと、オーギュスト教授だっけ」
「そうそう。ゼミが人気なくて有名なんだってよ」
「へー」
「へーって、人文学部の教授だぞ。ラーズが四年なった時に選ぶかもしれないってのに」
「そ、そうなんか。ロン、体育学部のくせによく知ってるな」
「こっちの学部に聞こえるくらいは、変わってるってことだろ」
「…」
俺達は道場へ
「そうだ、ロン。来月の大型連休に免許合宿行こうぜ」
「急だな! けど、まぁ、いいか。それが終わったら、俺もバイト探そうかな」
「俺のバイト来る?」
「お化けは嫌いだ、絶対に行かねー」
「清々しいな」
ズドォッ!
ドッパン!
ドゴォッ!
道場から、すげー音が響いている
中を除くと、ゴドー先輩がサンドバッグをぶっ飛ばしていた
「サンドバッグ踊ってる」
「やっぱ、あの人おかしいよな」
「…お前ら、後で腹筋背筋百回追加だ」
「み、耳良すぎ!」
「ラーズ、何言ってんだ!」
「ロンだって思っただろ!」
「…」
俺達は道着に着替える
今日の稽古もしっかりと疲れ切った
一章の最初の部分を序章に移動して、閑話を挿入しました
未読の方は一読お願いします
少し直したりしていますが、内容に変わりはありません




