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二章 第七話 バイト3

用語説明w


ホフマン

クサナギ霊障警備の社員、魚人の男性で元ゲリラ兵の経歴を持つバウンティハンター。ゴツい体格と風貌で、見た目は完全にあっちの人。銃火器のプロでバウンティハンター資格を持つ



ホフマンさんが、ぶっとい腕で俺の首を抱える


「…っ!!」


崩落する天井の真下から全力で跳ぶ



ダンッ!

ビキッ…


ドゴォッ!!


ホフマンさんの大柄な体が力強く着地

天井からは砕けたコンクリートが落ちてくる



「あ、危なかっ…」


「…やられたな、クソ悪霊が」


俺とホフマンさんは同時に目を見開く

亀裂が、天井だけでなく床にも走っていやがった



ゴガガガガッ!


「ぎゃあぁぁぁぁっ!!」



俺とホフマンさんは、崩落した床と共にさらに下の階へと落ちていった




・・・・・・




「生きてるか、新人」


「生きてますが、新人じゃないです」


「ん? 新しくうちの会社に入ったんじゃなかったのか」

ホフマンさんが尋ねる


「いえ、バイトの面接に来ただけですよ。でも、やめとこうと思います」


「こんなエキサイティングで高収入なバイト、他に無いぞ?」


「命を金に替えるつもりはありませんって…ゴホッ」



落ちて来た瓦礫から何とか這い出す

砂埃が酷い


ホフマンさんが庇ってくれたおかげで、怪我はなかった


「ここまでポルターガイストが強いとはな。もはや、サイキックだぜ」

やれやれと、ホフマンさんが階段に座り込む


仕事は終わりだ

外からは、ウーウーとサイレンの音が聞こえる


パトカーか消防車だろう

これだけビルが壊れれば、そりゃ通報もされるわ



ちなみに、ポルターガイストとは霊体が物体に干渉する現象だ

エネルギー源は、恨みなどの感情のエネルギー

精神と魂を引き付ける精力(じんりょく)


精力(じんりょく)は、通常は霊力と練ることで魔力を合成し魔法に

又は、氣力と練ることで闘力を合成して、闘氣(オーラ)として使う


精力(じんりょく)を、単体で使うことは少ない


だが、その精力(じんりょく)を単体で使うサイキッカーと呼ばれる者がいる


精力(じんりょく)で物体に干渉する能力がテレキネシス

精力(じんりょく)で情報を読み取るのがテレパス

これらの技能を合わせてサイキックという


実はフィーナもサイキッカーであり、テレパスが得意

条件が揃えば、人の思考を読み取ったり、自分の思念を届けたりすることができるらしい


悪霊となった霊体は理論的な思考が失われることが多く、魔法の構築などは出来なくなりやすい

その反面、感情を暴走させたり、本能や生前の習慣に従って動く


その際、その感情エネルギーを使ってポルターガイスト現象などのテレキネシスを使うことがあるのだ


これは、魔法とは違う種類の攻撃だ



「あ、生きてた! よしよし、偉いぞ!」


階段を降りて来た社長が、俺達を見つける


「社長、仕留め切れてなかったな?」


「大丈夫だよ。事前情報よりもかなり強い悪霊だったから、この責任は依頼主にある! 私たちに責任は無し、追加報酬もゲット!」


「それなら、まぁいいか」


「いいの!?」

俺はホフマンさんに思わず突っ込む


死にかけたんだよ!?

絶対、霊札をケチったからだよ!



「それじゃあ、依頼主の所に行ってくるね。二人は車に戻ってて!」


レイコ社長が走っていく


「しまったぜ。今日はビアンカを呼んでおくべきだった」


「誰ですか?」


エレベーターが止まってしまったため、俺達は一階に向かって階段をよろよろと降りていく


「今日は休みだったが、もう一人戦闘補助の社員がいるんだ。怖い女だが、腕はいい」


「女性で、こんなヤベー職場で働くなんて凄いですね」


「元軍人でな。面白い靴を使うんだ」


「面白い靴?」


どんな靴なら、あの悪霊と戦えるって言うんだろうか



やっとのことで、ビル前の大通りに停めていた車にたどり着く


「ほら、お疲れさん」


「あ、ありがとうございます」

ホフマンさんが、自販機でジュースを買ってくれた


「お前、大したもんだな」


「何がですか?」


「普通、ああいう悪霊を見たら、ビビッて動けなくなるもんだ。だが、普通に戦っていただろう」


「あー…。それは、モンスターにはちょっと慣れているだけですよ」


俺は、騎士学園の卒業生であることを説明する

そして、チャクラ封印練によって、その力を全て失ったことも



「…サエという、見習いのゴーストハンターの娘が言ってた奴だったのか、ラーズは」


「そうです。サエは騎士学園の同級生でした」


「どうして騎士になるのを辞めたんだ? あいつら、銃弾は効かないし、モンスターとも平気で力比べをする。俺達なんかより、よっぽど安全に仕事ができるってのに」


「全員が全員、そんな凄い騎士になれるわけじゃないんですよ。闘氣(オーラ)の強さだって限界はありますし、魔法が強くなれば闘氣(オーラ)が弱かったり、逆もまたって感じで」


「それだって、今のラーズよりは安全だろ。今だって、コンクリートの塊が直撃してたら余裕で脳みそ飛び散ってたんだぞ。ヘルメットもしてないんだからな」


「…それは、ただ連れてこられた俺に言われても困ります!」



グイッと缶コーヒーを飲み、ホフマンさんが車のシートを倒して頭の後ろで腕を組む

そして、視線で俺に続きを促した


「…俺は、騎士を挫折したんですよ」


「挫折?」


「俺は才能が足りなかった。そして、覚悟も足りなかった」


「…」


「だから、一度逃げ出したんです」


初めて会った人に、何で俺はこんな話をしているんだろうか


ホフマンさんはおしゃべりじゃない

だが、聞き上手だ

穏やかに続きを促し、話しやすいようにしてくれる



「それなら、この職場はうってつけだ」


「…どういうことですか?」


そんなこと言っても、こんなヤベー職場で働いたりしませんからね?


「種族の不文律、三大不可避、聞いたことがあるか?」


「一応、騎士学園で習いましたね」



三大不可避とは、精霊やアンデッド、モンスターなどの、ある程度の知能や文化を持つ種族に共通する認識、不文律のこと


敵対、少なくとも攻撃を加えてはいけない三つの相手がいる

それは、竜族、巨人、そして国家だ



竜族とは、緩慢なネットワークを持つドラゴンたちの総称

高度な知能を有し、独自の言語や文化を持ち、人類とも協力関係にある


ドラゴンとは、全生態系の頂点に君臨する生物

多種多様な種がおり、成長度と能力によってそれぞれ六つのランクがある


その頂点たる(エンシェント)(マスター)(ドラゴン)ともなれば、神や魔神と呼ばれる高次元的存在と同列となるほどだ



続いて、巨人

亜種はモンスター化し、多くの種族が二つの惑星上に存在し、竜族と同様に一部は人類とも交流がある


その頂点である、巨神と呼ばれる存在は惑星の化身とも呼ばれ、惑星上にいる限り、ほぼ不滅の存在であるとか

通常の個体もドラゴン以上に強力で、その拳は、仮に騎士であってもやすやすと粉砕する



最後は国家

国とは、人類が作る組織の最大規模


資源の収集、加工を効率化し、脆弱な個体に過ぎない人類に竜族や巨人以上の力をもたらした

圧倒的な物資力と集団戦術、時代時代で生まれる英雄と呼ばれる者達の存在によって、数々の魔大戦に打ち勝ち、時に天災と同レベルの高次元生命体を撃退して見せるた


人類を、ペア(この惑星)の支配者に押し上げた組織構成だ




「それが何ですか?」


「人類がこの惑星で大きな顔をしてられるのは、国家を維持できているからだ」


「はぁ、まぁ、そうですね」


「それじゃあ、国家を維持しているのは誰だ?」


「それは…」


考えたことなかったな



「言っておくが、それは少数しかいない騎士なんかじゃないぞ」


「それじゃあ、何ですか?」


「簡単さ。騎士以外の一般人、その中でも戦闘職だな」


「…」


「こうやって町には日々、霊障が発生している。外ではモンスターが現れ、犯罪者たちが生まれているんだ」


「それはわかりますけど…」


「それらを取り締まっているのが軍や警察、そして、俺達ハンター資格を持つ一般人ってわけだ。騎士だけじゃ、無数に発生するトラブルに対処できるわけないからな」


「はい」


騎士の数は少ない

そのため、騎士はBランク以上の強力なモンスターなどの討伐を担当する


それ以外の、Cランク以下のモンスター、ゴースト、犯罪者たちは、騎士の力を持たない者たちの奮闘によって解決されているのだ



「俺達が使う技術は、騎士が使わない、見向きもしないものも多い。前に研修に来ていたサエも、勉強になったって言ってたぜ」


「なるほど…」


「騎士で挫折したって言ったか? それなら、騎士とは違う経験、技能を手に入れるのもいいんじゃないか?」


「…」


一理ある

興味が無いと言ったら嘘になる


「騎士になった仲間を見返してやれよ。この会社でな」


「…考えてみます」



ホフマンさんの言葉で、俺はこのバイトをやっていいかなと思った

…思ってしまった


そして、後で死ぬほど後悔するのでした、マル



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― 新着の感想 ―
[良い点] アンデッドは成り立ちの都合上都市のど真ん中でも出てくるのが脅威ですねえ。今作は街から出ることも無さそうだしそのうちバウンティハンターの仕事なんかも見れそう
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