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二章 第三話 入部2

用語説明w


ロン

黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる


ケイト

茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。したたかな性格のヤワラちゃん


ゴドー

鬼のゴドーの異名を持つ獣人男性。ケイト先輩の一年先輩だったが、留年して同期になった。好戦的な性格で、体格とセンスにも優れる。その実力はプロの格闘家を並み


()()()()()()()


ゴドー先輩に言われた、この言葉が心の琴線に触れた


だが、図星だった

図星を突かれて、俺はキレた



「…っ!!」


力任せのパンチを叩きつける



ゴドー先輩はがっちりとガード

そして、フックを俺の顔に叩き込む


…ふざけんな!


一発もらうが、そのまま組み付く


「うおあぁぁぁぁぁっ!!」


がむしゃらにゴドー先輩の胴を掴んで、思いっきり押し込む


意表を突けたのか、ゴドー先輩が一歩だけ下がる

だが、力負け



「はぁっ!!」


動かないなら、諦めてパンチを叩き込む



…俺は騎士としての才能が足りなかった

このままじゃ通用しないと思った

だから、騎士を諦めた


だが、戦うことから逃げたんじゃない

断じて違う


もっと強くなるために、騎士以外の道を選んだんだ


逃げたんじゃない!


セフィ姉に追いつくために

あの人の場所にたどり着くために


それなのに、こんなところで心が折れたら…

俺はどこにも行けなくなる


俺は、本当にただ逃げ出したことになっちまうんだ!



ガッ!


そのまま頭突き



強くなる

強くならなくちゃ


こんな所で、諦めてたまるかぁぁぁぁぁっ!



ドガッ!


「ぐぁっ…!」



ゴドー先輩の左が俺の額を撃ち抜く



やべぇ、だんだんとボーっとして来た

これが効かされるってってやつか


それなら…


俺は思いっきり力を込めてワン・ツー

ガードされるが予想通り


左足を踏み込み、続けて思いっきり頭を突き出す



ギリッ…!


歯を食いしばっての、渾身の頭突きだ



ゴガッ!


「うぁっ!?」



だが、ゴドー先輩は冷静に対処

左フックが思いっきり俺の頬を捉えた


口から液体が飛ぶ

唾液なのか血なのか…


関係ねぇ!

このまま、拳を握り込んで…


「………ぁぁああああっ!!」


俺はがむしゃらにパンチを連打


この距離なら当たる!

息が続く限り叩きつける!


だが、すぐにゴドー先輩の腕が割り込んでくる

後頭部を持たれ、首を引き付けて曲げられる


重心が崩された瞬間…



ズドォッ!


衝撃が腹にめり込む



下げさせられた視線の先に、ゴドー先輩の膝が突き刺さっているのが見える


「…ぁ……」


抵抗したいが、息が吸えない

体をピクリとも動かせず、俺は膝から崩れるしかできなかい


そのまま、畳の上で地獄の苦しみを味わうことになった




豪快にKOされたラーズとロンが、シャワーを浴びに行っている

多分、そのままトイレで吐いているだろうなぁ


「…初日からやりすぎだったんじゃないの?」

ケイトがゴドーに非難の眼を向ける


「やめるなら、その時だろ。誰でもいいってわけじゃねーんだからよ」


「でも、ロン君はある程度やってたみたいだけど、ラーズ君なんて未経験なのよ? それを、あんな…」


「ラーズは未経験じゃねーな」


「え?」


「パンチはちょっと齧ってたようだし、動きも戦い慣れてる。格闘技じゃないにしても、何かスポーツはやってただろうな」


「ふーん、そうなんだ。見込みは?」


「そりゃ、やらせてみてじゃねーか? ただ…」


「ただ、何?」


「どちらも面白そうではある」


「どっちが伸びそう?」


ケイトは言いながら思った

ゴドー(こいつ)が人を誉めるなんて珍しいなぁ…


「ロンは喧嘩早いと思ったが意外と冷静、ラーズはヘタレかと思ったら土壇場で噛みついてくる。どっちもいいんじゃねーか? …雑魚にしちゃ、だけどな」


「素直じゃないね。ただ、今日みたいな撲殺前提の稽古はやめてよね。怪我するし、続かなくなっちゃうから」


「どこが撲殺だ! 優しく手加減しただろーが」


「悶絶して血反吐を吐かせてたくせに」


「…水泳を教えるのに、最初に畳の上でクロールのやり方を教えるか?」


「何の話よ?」


「水に放り込まなきゃ泳げねぇだろ。まずは水に慣れさせねーと、泳ぎ方を習ったって意味がねぇ。格闘技だって同じだ」


「私が言ってるのは、水に放り込むやり方よ。あんたがやってるのは、わざわざ断崖絶壁に登って、十メートル下の海に突き落としてるの」


「…」


「あんたはプロレベルなんだよ? …手加減したとはいえ、あの二人はよくやった方だよね。ちょっと楽しみ」

そう言って、ケイトはに少しだけ笑った




・・・・・・




「痛ぇ…」


「あの人の拳、固すぎないか?」


「分かる。コンクリートでぶん殴られてるみたいだった」


「俺は蹴りがヤバかった…。金属バットみたいだったぜ」


ロンは足を引きずっている

蹴りを受けた場所が腫れあがって、アンデッドみたいな色になっていた



「…強かったな、あの人」


「バケモンだった…」


俺は騎士の力を失った


セフィ姉の奥義、ヤマトの特技(スキル)、フィーナの魔法

憧れ、羨んだ技能に、もう手が届かない


だが…

ゴドー先輩の拳は、それに匹敵する衝撃だった


生身で、あそこまでの威力

前に、数人の不良たちを一瞬でボコボコにした技量

俺達の攻撃をものともしないガード


凄かった…


総合空手か

俺も頑張れば、あの人みたいになれるのか?


…なれれば、俺もフィーナ達、騎士の卵を羨んだりしなくてもよくなるのかな



「おーい」


振り向くと、ジャージを着た巨乳が走って来た


「ケイト先輩?」


「これから、ちょっとだけ時間ある?」


「ええ、大丈夫ですけど。ラーズは?」


「もちろん大丈夫」


そして、もう一つの衝撃

それがケイト先輩(この人)


セフィ姉とは違う魅力


でも、がっかりされたくない

情けないと思われたくない


俺の男の小さなプライドを、これでもかと刺激して来る人



「それじゃあ、簡単にこの大学のスポーツ棟と旧部室棟を案内してあげる」


「あ、はい」


ケイト先輩が、俺達の前に立って人懐っこい笑顔を向けてくる


いい…



「…」


チラッと見ると、ロンも同じことを思っていそうだった




ケイト先輩が、新しい武道館に入っていく


「やぁーーー!」

「面ーー!」


大きな声が響いている

剣道部のようだ



「この一階道場は板の間。剣道部がよく使うんだけど、マットを引いてフェンシング部が使ったり、奥では伝統派の空手道部も使ってる。他にもいろいろかな」


伝統派空手とは、寸止めの流派だ

俺達が入った総合空手部とは違い、有効な一撃に対してポイントを付与して競う剣道やフェンシングに近いルールだ


「思ったより広い…」


「あの奥でやってるのって?」


「あれは居合道と杖術じゃないかな」


「いろいろあるんですね」


「うちの大学の武道や格闘技系は、数が多くて有名なんだよ」


「そ、そうだったんですか…」


部活のことなんて、全然調べなかったから知らなかったな



「二階に上がるよ」


ケイト先輩に連れられて階段を上がる


「上は畳の道場。柔道部や合気道とかね」


「あっちでやってるのは?」


手前では柔道部が技を掛け合っている

しかし、奥では寝転がって組み合っている人たちがいる



「あっちは寝技の練習だね。GJJと高専柔道かな」


GJJとは、グラレイド・ジュウ・ジュツの略

惑星ギア発祥の護身術で、柔道から枝分かれして発展したもの


寝技が主体の格闘技であり、普通は不利となる、上を取られて倒された状態でも下から極め技を狙っていくことができる

総合格闘技でも必須の技術だ


「高専柔道って、普通の柔道とは違うんですか?」


「高専柔道は、柔術と同じように寝技の比率が高いの。他の部活と合同練習しやすいのは、うちの大学の特権だよ」


「あっちのは?」


「レスリングとサンボかな。青いマットを引いて試合場をつくってるんだよ」


格闘技によって試合場の広さが変わって来る

そのため、試合場のサークルが描かれたマットが用意されているんだ



「最後はこっちだね」


ケイト先輩が階段を降りていく

一階を経由して地下へ


すると、地下にも広い部屋が並んでいた



「ここは、リングとかサンドバッグとか打撃系の部活で使う場所。そして、あっち側がウェイトトレーニングのエリアだね」


なるほど


リングがいくつか作られていて、ボクシングやキックボクシング、防具をつけた空手などが殴り合っている

その奥には複数のサンドバッグがつるされており、黙々と叩いている学生がいた


旧道場にもサンドバッグはあるが、こっちのは新品

壁も新品で気持ちがいい


「靴を履いて蹴るとかもありなんですか?」


「あれはサバット。靴を使っていい蹴り技主体の格闘技だね」


「あの、縄を腕に巻いてるのは?」


「ラウェイかな。頭突きありで、ほぼ素手で殴り合う。さすがに過激すぎて、あの人たちも同好会みたいなものだと思うよ」


やべぇルールの格闘技もあるんだなぁ…



「そして、最後にあそこ」


「うわっ、金網だ」


「オクタゴンのMMA(総合格闘技)用ケージだよ」


そこでは、俺達が使ったオープンフィンガーグローブを付けた男たちが組み合っていた



「格闘技系の部活、本当に多いっすね」

ロンが感心して言う


「この武道場だけじゃないよ。外には相撲部の土俵もあるし、体育館ではジークンドーとか八極拳、カリやシラットみたいな武術系が練習もしているし」


「凄い…」


「ラーズ君とロン君が上達すれば、合同練習もするからね! さ、これで案内はお終い。今日はお姉さんが学食を奢ってあげよう!」

そう言って、ケイト先輩が階段に走り出す


「えっ、はい!」

「ありがとうございます!」


俺達は、慌てて追いかける


部活、頑張るぞ!


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