二章 第一話 授業開始
用語説明w
ロン
黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる
カエデさん
ラーズ達のアパート、メゾン・サクラの管理人で、黒髪ノーマンの優しいお姉さん。ラーズの好みだが、しっかりと既婚。
大学の講義が始まった
俺は選択科目の一つ、天地歴元年史を受講する
俺は人文学部だが、まだ知り合いは出来ていないため一人
ちょっと寂しいが、まだ必修科目が始まっていないため仕方がない
それに、講義と関係のない所でのトラブルが多い
具体的には、あのブラックマンバとかいう不良チーム
そして、ロンに絡んでいた先輩たち
モンスターと戦っていた騎士学園の方がよっぽど平和だったんだけど、この大学周辺どうなってんだよ
「この講義は、古代史の最重要テーマであるペア創成期に起こった、終末戦争アポカリプスを取り扱う」
教授が話す
ちなみに、歴史といっても種類がある
大きく分けて二つ、世界史と国史だ
その名の通り、ペア全体の歴史が世界史
それぞれの国に焦点を当てた歴史学が国史だ
俺は騎士学園に通っていたこともあり、各国の魔大戦や、それ以前の歴史が好きだったため、世界史の授業を主に選んだ
「有名な神らしきものと、二つの惑星に住む人類との総力戦。先人たちの勇気と流された血によって、今の我々がいる」
教授がスライドを写す
そこには時代区分が書かれていた
世界史は大きく分けて五つの区分に別れている
原始・古代・中世・近代・現代
これは、ペアが構成されてから約四千年が経っていることから、一つの学問として扱うことに無理があるからだ
最初は原始史学
これは、ペア構成前の時代であり、先史時代や旧世界とも呼ばれる
天地歴元年よりも前の時代だ
ペアは惑星ウルとギアから成る二連星
そのため、ウルとギアのそれぞれに先史時代がある
続いて古代史学
これは、今やっているペア創成期の時代
天地歴元年前後~2000年頃
終末戦争で人類が勝利を治めた後、複数の魔大戦を経験
人類が魔法科学文明を徐々に発展させてきた頃の歴史学だ
※魔大戦とは、人類という種に対して挑まれた戦い
魔王などと呼ばれる存在と、互いの生存を賭けて歴史上幾度となく起こっている
終末戦争アポカリプスは、最初にして最大の魔大戦だ
その次は中世史学
天地歴2000年頃~3500年頃
冒険者の時代などとも呼ばれ、魔法科学の発展によって人類が個の力を獲得
秘境と呼ばれる未開拓地を切り開き、徐々に人類が生活圏を広げていた時代だ
この頃から大都市が作られるようになり、皮肉にも人類同士の戦いも増えていった
続いては近代史学
天地歴3500年頃から3900年頃
人類の国家が大きな力を持つようになり、軍が強力なモンスターを駆逐して支配権を拡大した
しかし、秘境に潜んでいた魔王クラスの存在を刺激して魔大戦を引き起こしたこともあり、結果的に人類はペアでのこれ以上の支配権拡大を諦めることとなった
そのため、資源を巡って人類同士の戦いが頻発
魔大戦にあっては、天地歴3600年頃、現代の龍神皇国で起こった始源戦争を最後に起こっていない
最後は現代史学
天地歴3900年以降の、ここ100年くらいの歴史を扱う
龍神皇帝国が分裂して、現在の龍神皇国やここシグノイア、フィーナの国クレハナなどが誕独立
他にも騎士制度が充実して国家の安定に寄与
宇宙拠点ストラデ=イバリや、異世界イグドラシルとの交易の開始
国連事業である軌道エレベーターの建設
近年起こっている戦争や内戦、魔大戦になりかけた事例などを扱っている
「ラーズ、終わったか?」
「ああ。ロンもかよ」
「とりあえず選択授業はな。学食行かないか?」
「オッケー」
俺はロンと食堂に向った
「ここのカレー、安くていいよな」
「確かに。出てくるのも早しい」
俺とロンは、この大学で定番らしい大学カレーを頼む
学生向けであり、300ゴルドで食べられるのもうれしい
ちなみに、ゴルドとは通貨の単位
100ゴルドでジュース一本くらいの価値
ゴルドとは、ゴールドのなまったものという俗説がある
いや、知らんけど
「明日から部活だよな。行くだろ?」
「そのつもりだよ。でも、格闘技か…」
「なんだよ?」
「経験ないのに、ゴドー先輩のヤバそうな練習、大丈夫かなって」
「そりゃ、やってみるしかないけどよ。ラーズだって、あの訳分からねーチームに狙われるかもしれないんだ、戦えるようになっとかなきゃ危ないだろ」
「そ、そうだった。俺も何でか狙われてるんだった」
入学した早々に、町の不良に絡まれる
いきなり、俺のビジョンと全然違う世紀末みたいな雰囲気になってるのは何でだろうか
「あ、ラーズ君にロン君」
「あ、ども」
ケイト先輩が、同期であろう先輩女子たちとやって来た
「明日からよろしくね。私も道場に顔出すから」
「そうなんですか?」
「よろしくお願いします」
俺とロンは、ケイト先輩に頭を下げる
「ちょっと、誰ー?」
「柔道の後輩君?」
「かわいーじゃん」
なんて声が聞こえ、俺とロンは大学生活も捨てたもんじゃないと思い始めた
・・・・・・
アパートに戻ると、フィーナはもう帰って来ていた
「遅かったね」
「ロンと学食に寄って来たんだ」
「ロン君って、入学式に怪我してた人?」
「そうそう、あいつ」
フィーナは話しながら、引っ越しのご挨拶用の箱を玄関に並べる
中身はタオルで、パッケージがのし紙デザインになっている
「それじゃ行こうか」
「うん」
引っ越し準備でバタバタした上、その後の入学準備で忙しく、俺達はまだアパートの住人に挨拶に行けていなかった
母さんにお願いして挨拶セットを送ってもらい、昨日やっと届いたのだ
最初は管理人室からだな
「はーい。あら、ラーズ君にフィーナちゃん、何かあった?」
カエデさんはすぐに出て来てくれた
「いえ、まだ挨拶をちゃんとできていなかったので」
「これ、つまらないものですが」
どうでもいいが、こんな挨拶でも、ちょっと大人になった感じがする
「そんな、わざわざありがとうございます」
カエデさんが頭を下げる
「ちょっと遅くなっちゃったんですけど、これから他の部屋も回ろうと思います」
「一応、他の住人さんには、会った時に二人のことは言ってるからね」
「ありがとうございます」
俺達はカエデさんにお礼を言って、さっそく挨拶へと向かう
「最初は101かな」
「だね」
101号室からは、洗濯機の音が聞こえている
ピンポーン
「はい?」
出て来たのは、神族の女性だった
年齢は、ディード母さんよりもちょっと下くらいか
「先月に引っ越してきましたオーティルです。よろしくお願いします」
「アラー、カエデちゃんが言っていた大学生の兄妹ね。わざわざありがとー」
「いえ…」
「うちは三人家族で、子供が小学生なんだけどねー…」
「そうなんですね」
「旦那が…」
マシンガントークに巻き込まれ、一件目で三十分ほど時間を使ってしまった…
101号室はマリアナさん一家だった
続いて102号室
「…留守?」
「そうみたいだな。出直そうか」
次、103号室
「…はい」
「あ、突然すみません。先月引っ越して来た…」
「あー、管理人さんが言ってた。来てもらって悪いね」
「よろしくお願いします」
ここは、ビタリさんという男性が一人で住んでいた
夜勤が多いらしく、昼間は寝ていることが多いらしい
起こしちゃったかな…
「一階は終わり。次は二階だね」
俺達は二階に向う
201号室
ガチャッ…
「ん?」
二階に上がったところで、ちょうど201号室からスーツを着た男の人が出て来た
「あ、すみません」
「私達、先月…」
「あー管理人さんが言っていた大学生ね。ホセです、よろしく」
「これ、つまらないものですが」
「あ、ありがとう。ちょうど出張に行くところだったから、タオルは助かるよ。それじゃあ」
ホセさんは、慌ただしく出かけていった
202号室
「はい」
出て来たのはダークエルフの女性だ
「あ、オーティルと…」
「あー、管理人さんが言っていた子ね。ベニです、よろしくぅ」
最初は警戒感があったのに、名前を言ったら一瞬でチャラくなった
ベニさんは美容師さんらしい
最後、203号室
「おう?」
出て来たのは、ひげを蓄えたノーマンの男性だ
「あ、こんにちは。オーティ…」
「あぁ、管理人さんが言ってた大学生の」
「そ、そうですけど、管理人さんの影響が強すぎません!?」
全員、管理人さんの周知で俺達のこと知ってたんだけど!
「それもあるけど、黒服集団が来た時に、204号室に入った人がどんな人か気になったのが大きかったんだよ」
「あー…ドースさん来襲の時のだ」
「あれだけ護護衛官を連れてくれば、やっぱ目立つよねぇ…」
このヒゲの男性はモーさん
挨拶しておいてよかった
とりあえず、俺達はただの大学生だと弁明が出来たから
102号室の人は会えなかったが、後日弁明をしておきたい
俺とフィーナは、今まで他の住人にどんな噂をされていたのかを考えて溜息をついた
ドースさん来襲 一章 第十五話 引っ越し
お待たせしましたー!
本日より投稿再開、二章開始します!
GWに間に合ったぜw




