一章 第十一話 部屋飲み
用語説明w
ヤマト
獣人の男子。騎士学園時代にラーズとパーティを組んでいた。騎士としての実力は高く、龍神皇国騎士団にスカウトされた。ボクシング部で、ラーズにパンチをを教えたことも。
ミィ
魚人の女子。騎士学園時代にラーズとパーティを組んでいた。金勘定が上手く、戦闘よりもアイテム調達で貢献、騎士団の運営に興味を持ち、龍神皇国立騎士大学へと進学した。
嵐のように、ドースさんが帰っていった
一国の王族がお忍びでやって来ていたようで、怖い黒スーツの人がアパートの周辺にたむろ
周囲の人達が何だ何だと集まって来ていた
「ごめんなさい、カエデさん。もう来ないように言っておきますから」
「そ、それはいいんですけど…。凄いのね、親族の方」
「ちょっと特殊な仕事をしているだけなんです」
フィーナがカエデさんに謝る
メゾン・サクラの住人も何人かドアを開けて様子を見ていた
悪目立ちしてないといいけど
「フィーナ、どうなってんだって」
「…ドースお父さんに、下宿すること言ってなかったの。セフィ姉から聞いたらしくて、飛んできたんだって」
「えぇっ!? 何で言わなかったんだよ! そりゃ、心配するだろ」
「だって、絶対に反対すると思って…」
「だからって、黙ってるのはダメだろ」
「束縛はいやなの! ドース父さん、何でもかんでも反対するから、相談できないんだよ!」
「そ、そんなこと言ったってさ…」
俺は、今度は怒りだしたフィーナをなだめながら部屋に入る
あの黒スーツの人は護衛官
シークレットサービスなどとも呼ばれ、中には元騎士でBランクの実力を持つ者もいるとか
内戦中の国の王族が動いたら、そりゃ大騒ぎになるよなぁ
「もしもし、ラーズ?」
「セフィ姉、大変だったんだよ」
俺は、今日の騒ぎをセフィ姉に相談する
「聞いたわ。ごめんなさいね、まさかドースさんが知らなかったなんて思わなくて。フィーナの近況報告はするようにしてたのよ」
「セフィ姉は悪くないよ。フィーナが悪い。でも、話を聞いたらちょっと気持ちはわかったけど」
「そうねぇ。とりあえず、ドースさんには、大騒ぎになるから二度としないように言っておくわ」
「うん、ありがとう」
後日、父さんと母さんからもドースさんに話してもらい、俺とフィーナの下宿は納得してもらうことになった
報告連絡相談って、大切だよなぁ…
・・・・・・
いよいよ、明日は大学の入学式だ
「いやぁ、みんなが忙しくなる前に会えてよかった」
ミィが言う
「狭いけど、いい部屋じゃねーか」
「あんたがでかいのよ」
「あぁっ!?」
「やめてよ、ミィ姉とヤマト」
俺達の下宿先を見たいということで、ヤマトとミィがやって来た
ヤマトは正式に龍神皇国騎士団に入団
ミィも、龍神皇国立騎士大学に合格している
「騎士学園の同級生、誰かと連絡とってる?」
「全然。みんな忙しいだろうしな」
「私、サヘルとは連絡とってるよ。大学受かったって」
「バティアの大学だよね。今度、会えるかなぁ」
サヘルとは、騎士学園の同級生
重力属性という変わった属性が得意で、騎士学園を卒業したが、騎士団には行かずに一般大学へ進学した
フィーナと同じく、バティアという国の王族の娘であるため、危険な騎士という仕事は反対されたようだ
「こんにちはー」
「あ、サエだ!」
フィーナが玄関まで迎えに行く
ノーマンの黒髪の女性で、騎士学園の同級生だ
「おー、サエ、久しぶり。いつ惑星ウルに来たんだ?」
「昨日よ。宇宙飛行機、初めて乗ったから緊張しちゃった」
サエは、惑星ギアにあるタカマグラという国の出身
ゴーストハンターをやっている両親を持ち、サエ自身も除霊術を使える
タカマグラはクサナギ流という除霊術が有名で、この流派は世界に広まっている
シグノイアにも、クサナギ流の除霊術を使うゴーストハンターがいるらしい
「騎士学園の頃は、サエは軌道エレベーターを使う必要がなかったからな」
「そりゃ、俺やミィも同じだぜ」
ヤマトが言う
惑星ギアとウルには、軌道エレベーターと呼ばれる大規模建造物が六本ずつ建っている
これは、大気圏外まで物資を輸送することができる運搬施設
また、太陽光や魔導エネルギーの生産拠点にもなっている
宇宙飛行機は、軌道エレベーターを使って大気圏外に出て、ロケットエンジンで宇宙空間を飛ぶ、ペアの二つの惑星を繋ぐ輸送手段となっている
俺とフィーナは、騎士学園の夏休みになると宇宙飛行機を使って惑星ギアの騎士学園から惑星ウルの龍神皇国の実家まで帰っていた
「サエ、この時期に何しに来たんだっけ?」
ミィが聞く
「私の大学は九月から始まってるんだけど。同時に、クサナギ流除霊術を本格的に学び始めたの。それで、龍神皇国にあるクサナギ流除霊術の支部にお邪魔して、ゴーストハンターの実習を受けに来てたんだ」
「サエ、騎士だけじゃなくゴーストハンターもやるんだ」
「ゴーストハンターの技術は、呪われた装備品とか、土地についた地縛霊の対策とか、騎士が扱わない技術も多いから勉強になるよ」
「へぇ…」
「私、大学の間にゴーストハンター資格の上級を取りたいって思ってるんだ」
「凄いな。サエ、アンデッド殲滅ウーマンだったから絶対に取れるよ」
「私なんて、まだまだよ。あ、そうだ、ラーズ」
急にサエが俺の方を向く
「え、何?」
「バイトとかやったりしない?」
「いや、まだ何も考えてないけど…」
「このシグノイアにクサナギ流の本家の方がいて、挨拶して来たの。除霊関係の仕事をしていて、会社をやってるから」
「そうなんだ」
「そうしたら、今、バイトを募集してて、いい人がいないか聞かれちゃったの」
「バイトって、除霊関係でしょ?」
「ええ、そうみたい。ラーズ、どうかなって」
「いや、残念だけどさ。俺、霊力とか全部なくなってるんだ」
俺は、チャクラ封印練によって、霊力と氣力を失った
それによって、魔力、輪力、闘力が練れなくなったことをサエに説明する
「…だからさ、霊力もなくて浮遊霊とかも見れないし、除霊なんてもっとできないよ」
「それは大丈夫だと思うよ。そこの会社、除霊術を使えるのは一人だけだって言ってたから」
「そうなの?」
意外だな
除霊の会社って、全員がゴーストハンターじゃないのか
「うん。社長さんはクサナギ流の除霊術を使えるんだけど。後は、経理とか、SE兼ドライバーとかの人で、現場に出る人も除霊術は使えないって言ってたよ」
「それなら、バイトって何をするんだろ?」
「除霊の補助とか、書類関係じゃないかな。ラーズが元騎士の卵って言ったら、ぜひ来てほしいって。もちろん、チャクラ封印練のことも伝えたんだけど」
「ふーん…。まぁ、それでいいなら…」
確かに、バイトはしておいた方がいいよな
遊びにも行けるし、経験にもなるし
部活やサークルもしてみたいけど、バイトしておかないと遊びにもいけない
彼女とかできたら、旅行とかも…
いや、いかんいかん
とりあえずは入学してからだな
「分かった。今度、面接に行ってみるよ」
「ありがとう。連絡しておくね」
サエが笑顔で言う
「よし、それじゃあ飲もうぜ」
ヤマトがビールを冷蔵庫から出す
「おいおい、未成年しかいないのに何で持って来てるの!」
「いいじゃねーか。乾杯だよ、乾杯。全員の進路が決まったんだからな」
「フィーナはさすがにダメよ」
「えー…!」
「当たり前だって」
俺達の部屋で、騎士学園のプチ同窓会
飲めない酒と美味しい総菜
これ、めちゃくちゃ大学生っぽくね?
部屋飲みは、すげー楽しかった




