ボクが君のために出来ること
「色々とやることはあるけど、とりあえずエリー自身が気にしてることを解消しましょう!」
「服装のことかい?」
「そ。別に、エリーの考え方は間違ってないんだけどさ。ちょっと勘違いしてるんだよね」
なにが間違っていなくて、なにが勘違いなんだろう。これでもボクは、ちゃんと考えてあの服を選んだつもりだったんだけど。
「好きな子のためにするおめかしってのは、大事なわけ。そこは間違ってないの。だから、可愛い服を着ようとする事は正解」
「それじゃ、ボクはなにを勘違いしていたんだい?」
「男の子ってさ、自分にだけ見せる特別も好きだけど、心を許してくれている、て思わせる特別も大事なのね」
自分にだけ見せる特別と、心を許している特別?
「だから、その日だけ特別な服もいいけど、自分の前だけで見せてくれる彼女らしさってのが見えると喜ぶわけよ。……今日のエリーの服、見直してみて?」
カナメの言う事はよく分からない。難しいけど、言われた通りに自分の服を見直してみよう。
靴は白いスニーカー。この前凪くんが買ってくれたのは、汚しちゃダメかと思って、デートの時以外は履かないようにしている。
今日の気温は高く、日差しも強いとのことだったから、下は肌色のストッキングの上にデニムのショートパンツ。
上は動きやすい方がいいと思って、綿の白いTシャツ。裾に書かれた猫と肉球のシルエットはお気に入り。
長い髪が肌に引っ付くのが好きじゃないから、朝お母さんにお願いして、簡易的なポニーテールにしてもらったんだ。
「ボクは変だと思わないけれど、どこか可笑しいかい?」
「ううん。可愛いと思う。エリーは好きでその格好してるんだよね?」
「そう、だね? 動きやすい格好は好きだし、こういう柔らかい素材は気持ちいいよね。スカートとかも可愛いんだけど、ボクはあまり得意じゃないんだ」
制服は皆が着ているから、そんなに気にすることもないんだけど、私服でとなると少し抵抗があるんだよね……。
「そっか。まあ服装選びで必要なのは、そこなんだよね、エリー」
「どういうことだい?」
どこが必要なんだ。この服を着ていけば良かったってことかい?
「それじゃとりあえず、服を見ていこうか」
カナメの話に夢中で気づかなかったけれど、いつのまにか大手のカジュアル衣料品店の前に到着していたようだ。
カナメの案内でお店の中へと入っていく。
まず最初に訪れたのは、柄物のカットソーが多く展示される一角。
ボクは基本、着心地のいいラフなものしか着ないけど、この手の服ならお世話になることも良くあるトップスたちだ。
「それじゃ、この辺とかいいんじゃない?」
それでもカナメから提示された服は、どれもボクが今までに着たことのないものばかり。
シンプルなデザインの白いブラウスや、ちょっと派手目のキャラデザインが施されたTシャツ。
他にも、地味目な色合いでオーバーサイズのものや、オフショルダーのもの。
確かにどれも可愛いんだけど、慣れない服ってなんか怖いよね……。
「あたし的には、ブラウスかオフショルダーがおすすめかな。男って、清楚な感じに見せると変な優越感を感じるみたい。かといって、肌の露出を増やしてやれば、それだけで喜ぶのもいるから結局趣味次第なとこはあるんだけど」
ふむふむ。ボク的には、気軽に着こなせればそれでいいんだけど、凪くんはどっちの方が好みなんだろう。
「凪くんの雰囲気なら、ブラウスで清楚に見せていく方が良さそうだけど、エリーらしさを出すなら肩出しもありあり。聞いた発言から考えるなら、ラフな格好の方がいいのかもね?」
「凪くんは肌を見せてあげた方が喜ぶってことかい?」
「いやぁ、ちょっと違うけど……変にお洒落しすぎるのは禁物ってとこね」
なんだか分からないな。凪くんの好みはどんな服装なんだろう。
「とりあえず、次行ってみようか」
トップスの次は当然ボトムズ。
基本的にスカートが苦手なボクは、自然とズボンの類を履くけれど、連れてこられた場所はスカートばかりの一角で……。
「カ、カナメ? ボクはスカートは苦手なのだけど、やっぱり男の子はそっちの方が喜ぶのかい?」
「んー、まあそうね。スカートってなんか、それだけで女の子! て感じしない? 多分男からしても、そういうのあるんだろうねー」
なるほど。少なくとも日本では、一般的にはスカートを履くのは女の子だけ。それだけで女の子らしさが増すということか。
うむむ……我慢して履いた方がいいのかな。
「はい、この辺なんかがエリーには合ってると思う」
カナメが持ってきてくれたものの中には、スカート以外のものも含まれている。どこから持ってきたんだい?
「エリー、スカートダメって言ってたでしょ? 多分、履き慣れてないから抵抗があるのと、やっぱり動くときに気になっちゃうんじゃないかなぁ、と思って、こういうのも選んでみたよ」
カナメの見せてくれるそれは、見た目にはミニスカートのようなもの。でも、完全なひらひらじゃなくて、ズボンのように股下もある。キュロットというやつかな?
確かに履き心地も、見た目も普通のミニスカートとはちょっと違うから、抵抗は少ないかも?
「履いたことないから分からないけど、それならボクも大丈夫かもしれないね」
「でしょ? 後はワイドパンツなんかも、お洒落だし機能性は充分かな。それか、敢えてスカートを頑張ってみるのもいいと思う。ミニスカートだと抵抗あるみたいだから、ミドルスカートとかロングスカートとかね」
長い丈のスカートか。考えた事はないけれど、実際どんな感じなんだろう。
「後靴は──」
「あ、カナメ、靴はその……大丈夫」
ボクの言葉に微笑んで見せるその表情は、全部理解しているかのような、心を見透かされている感じのものだった。
「だね。せっかくプレゼントしてくれた靴、履かない訳にはいかないもんね」
恥ずかしさのあまり、無言で頷くことしかできない……うぅ、カナメとも目が合わせられないよ。
「じゃとりあえず、ファッションショーでもしてみよっか」
カナメの発言が良く分からず、ボクは目を丸くすることしかできなかった。




