表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/35

ボクの初恋?

「本当に、その気持ちがなんなのか知りたいんだよね、エリー?」


 授業も終わり、教室にはまばらなクラスメイトだけ。

 充も帰ってしまい、カナメはボクの前の席を借りて、こちらに向かって座っている。


 恋を知るためのおまじない。今日一日、ボクの楽しみだった時間だ。


「そうだよ。ボクは恋というものを知りたい。君がそれを教えてくれるといったんじゃないか。今日一日は、この時間がとても楽しみで、授業はあまり身に入らなかったよ」


 今朝もそうだったけど、カナメが言い出したことなのに、なんで君がため息をつくんだい? 不思議だよ。


「分かりました。……それじゃ、胸に手を当てて、目を閉じて」


 カナメに言われた通りに胸に手を当て、目を閉じる。

 こうしていると、楽しみにしていたこともあって、胸の鼓動が早くなっているのが手の先から伝わってくるようだ。


「そのまま、凪くんのことを考えてみて」


 凪くんのこと……。

 まだお付き合いしてから一週間も経っていない。

 それでも、ボクなりに彼のことは分かっているつもりだ。


 とても気の利く男の子。顔はボクの好みかと言われてもわからないけれど、真剣にこちらを見つめながら考えてくれるその仕草は、こうして思い浮かべるだけでもドキドキしてしまう。

 

 何故か彼はボクのことをよく分かっている。ボクがどうして欲しいかも……この前は恥ずかしくて、せっかくのエスコートにもうまく応えてあげられなかった。自分が情けないな。


 凪くんは、とても素晴らしい男性だよ。


 目を開けると、カナメが目を背けて体を震わせている……?


「どうしたんだい、カナメ」


「お、終わったの? どうだった?」


「? そうだね。一緒にいることを考えたら嬉しくて、一緒にいられないことを考えたらとても寂しい気持ちになったよ。でも、今はなんとなく幸せな気分で、少し身体が熱い感じさ」


 なんでカナメが顔を赤くするんだい? こんなことを言っていて恥ずかしいのはボクじゃないか!


「うん、エリーの気持ちはよーくわかった。じゃあさ、進藤のことも同じように考えてみてよ」


「充のことをかい? 今は凪くんのことだと思っていたけれど」


「いいから! 比較って大事だからさ、ね?」


 まあ、その言い分は分かる。何かを考える時も、比較する対象があると、それもまた新しい考えにつながるからね。


 カナメに言われた通りに、もう一度胸に手を当て目を閉じて、充のことを考える。


 充は幼馴染。

 昔から文句ばかりだけれど、ボクのことをしっかりと考えてくれているのは分かる。

 なにを言っていても、いつもボクの相談に乗ってくれる。


 少しだらしないところもあるけれど、ボクのことを考えてくれているときの表情はとてもかっこよくて、昔からその顔を見るのがたまらなく好きだった。

 

 多少乱暴なところはあるけれど、あれが彼の照れ隠しみたいなものだと思うと、なんだか微笑ましく見えるんだ。

 同い年、なんなら生まれはボクの方が早いくらいだけど、彼はいいお兄ちゃん、て感じ。


 充は、一緒にいてとても落ち着く存在だ。


 目を開けると、カナメが大きくため息をついていた。今度はどう言う感情なんだい?


「終わった?」


「うん。充のことを考えると、とても温かな気持ちになったよ。ほっこりとして、心が落ち着くんだ」


「そか。ま、そう言うことだよね」


 一人納得してしまったけれど、ボクは何もわからなかったぞ。教えてはくれないのかい?


「相手のことを考えて、心がわくわくしたり、ドキドキしたり、幸せな気持ちになったり、辛くなったり。そんな矛盾ばかりが起こるのが、恋ってやつだと、あたしは思ってるんだよね。だから、エリーの凪くんへの気持ちは、恋なんだと思うよ」


「凪くんへのこの感情はやっぱり恋……?」


 もしこれが恋とするなら──。

 そう認識すると、さらに鼓動が早くなる。さっきよりもさらに身体が熱くなる。ボクは……。


「そう、なんだね。……それじゃ、充へのこの感情はなんなんだい?」


 凪くんへの気持ちがそうなのだとしたら、充に対するこれはなんなのかな? 暖かくなるこの気持ちは一体?


「あーそれは、あれだ。家族を想う気持ち、みたいな? なんて言えばいいのかなぁ」


 そっか。充はいいお兄ちゃん。彼のことも好きだけど、凪くんに向けるこの感情とはまた、違った〝好き〟なんだね。

 

 カナメにしては珍しく、言葉を濁していたけれど、彼女にも分からないことがあるんだね。なんだか少し嬉しくなってしまったよ!


「そっか。カナメにも分からないんじゃ仕方ないね。ありがとう。凪くんと別れるのは絶対に嫌だけど、もしこのままお付き合いが続けられるなら、ボクは本当の恋を知ることができそうだ。がんばってみるよ」


 これが恋。あぁ、凪くん。早く君に会いたいな。


「……どんまい進藤」

 

「充がどうかしたのかい?」


「あ、いや何でもないよ。頑張ってね、エリー!」


 カナメにまで応援されてしまっては、加減は出来ないじゃないか。

 早く君に伝えたいよ、この気持ち。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ