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ボクのこの想い

 凪くんとのデートも終わって日曜日は、何もやることなく、長い長い一日だった。

 まあ、動いてない間はずぅっと彼のことを考えていたから、寂しかったり楽しかったり、感情のふわふわした一日でもあったけどね。


 そして休み明けの月曜日。

 学年の違う、凪くんに会うことは無いと分かっていても、彼がいるかも知れない学校に向かうのは、とてもドキドキしていたんだ。

 そのせいか、気持ちははやって、足も心なしか早足になっていたと思う。


 いつものように想像力を膨らませる余裕なんて、今のボクには無い。

 学校にいく過程よりも、学校に着くことの方が待ち遠しくなる日が来るなんて、思ってもいなかったよ。


「あぁ凪くん、君に朝から会えたらどれほど嬉しいんだろうな」


 叶うはずもない願望というものは、いつどんな時でも心が弾むんだ。

 その先のことも、それまでの経緯も、ボクの想像でいくらでも膨らむ。とっても素敵なことだと思わないかい?


「今日は早いね。ご機嫌なエリーさん」


「やあカナメ。ボクの心は今、とても晴れ渡っているんだ。君にはやっぱり、分かっちゃうんだね」


 相変わらずカッコいいカナメが待っていてくれた。……しかし、今日のボクはいつもより早く到着したはずだ。なんで君は既にいるんだい?


「なんであたしがもういるか、気になってる感じ? なーんでかな、今日はエリーが早く来る気がしてたんだ」


「君はすごいな! いつも不思議ではいたけれど、まさか未来予知まで出来るのかい?」


「そんな大層なものじゃないって。──どっちかというと、テレパシー? エリーのことならなんでも分かっちゃう、みたいな?」


 確かに、カナメはいつも、ボクの心を理解しているかのように話してくれる。だから話しやすいのだけど……やっぱり彼女には敵わないな。


「ちょっとエリー、真に受けないでよ? ほんとなんとなくってだけで、そんな能力ないからね、あたし」


「そうなのかい? でもやっぱり、カナメはすごい女性だよ」


「バカ言ってないで、教室いこ。……凪くんとのデート、どうだったか聞かせてよ」


 まさに! ボクが話したかったことじゃないか! やっぱり彼女はボクのことをなんでも分かってくれる。とてもいい親友だぁ。


 カナメと一緒に教室へと向かって歩き出す。結局、凪くんとは会えなかったな。


   ※ ※ ※


「なんていうか、ほんとイケメンだね、凪くんて」


「うん。彼の言動はどれも優しさに包まれていて、ボクは終始ドキドキが止まることがなかったんだ」


 今でも彼のことを思い出せば、ボクの心臓は鼓動を早くする。

 こうして、土曜日のことをカナメに話しただけで、デートの間のドキドキがボクを支配しているんだ。


「金持ちで見た目も性格もイケメンとか卑怯だわー。……そんな彼氏が居るエリーも、ずるやましいわー」


「なんだい、ずるやましいって」


「ずるくて羨ましいってこと。ただの妬みでーす」


 なんだか、悪口を言われているようにも聞こえるけれど、むしろ気分がいいのはなんでかな。

 

「確かに、凪くんが恋人だなんて、ボクはとても誇らしいんだ。でも、だからこそ少し怖くもあるんだよ、カナメ」


「また振られるんじゃないかとか、思ってるんでしょ」


 驚いた。本当にカナメは、ボクの心を見透かしているみたいだ。


「その通りだよ。今までもボクは、付き合った相手からことごとく振られてきたんだ。別に、その度に、なんでだろうと考えることもできたし、仕方ないと諦めもしていたんだけど、彼に振られることを想像すると、とても辛くなるんだよ。そんなの嫌だと、わがままになってしまうんだ」


 本当にボクは、ズルい女なんだと思う。


「あたしの勘では、多分そうはならないと思うな。話を聞いてても、凪くんは今までの男たちとは違うんでしょ?」


「うん。今までの男の子はそのお付き合いの中で、どうしたら恋を学べるかを考えていたんだ。でも、凪くんといる間はそんなこと微塵も考えなかった。どうしたら彼と一緒にいられるか、ボクはなにか気に障ることをしていないかな、なんてずっと考えていたんだ」


 なんだか恥ずかしいな。口にしていて、全身が熱くなるのが良く分かる。


「あぁ……もういいや。聞いてるこっちが恥ずかしいから、そこまでね。今度こそ、本当に恋をしちゃったんだね、エリー」


「恋? このボクの凪くんへの感情は、恋なのかい?」


 確かに誰とデートをしても、こんな感情になったことはなかった。けれど、もしこれが恋なんだとしたら、今までにボクは……。


「あたしに聞かれても分かんないって。恋ってのはさ、人それぞれ違うもんなんだよ。──あぁ一つだけ、あたしなりのものだけど、相手への気持ちが恋かどうかを調べる方法はあるよ」


「本当かい? もしこれが恋だと言うなら、ボクはそれをもっと知りたい。是非教えておくれよ」


 自分から言い出しておいて、なんでため息をつくんだい、カナメ。ボクは真剣なんだ。


「分かった。……けど、もういい時間だから、放課後にしようか」


 話に夢中になっていて気づかなかったけれど、登校したときにはいなかったクラスメイトも、だいぶ揃っているみたいだ。

 時間を確認すると、ちょうど始業五分前のチャイムが鳴り響いた。


「ちょっと残念だけど、分かったよカナメ。楽しみにしているね」


「あたしの妄想みたいなものだから、あんまり期待しないでよ」


「君の考えた方法なら期待しない理由がないじゃないか。あぁ、早く授業終わってくれないかな」


 もう一度吐き出されるため息の意図は分からないけれど、ボクは期待に胸がドキドキしてしまっているよ。


 ……もしこれが恋なのだとしたら、ボクの初恋ということになるのかな?

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