▼class8 「5月10日<AM6:30〜AM9:00>」
一週間あきました。すいません。
AM6:30―――
闘いの始まりを告げる鐘がなる。これから長い長い三日間、72時間後に再び鐘がなるまでは孤独な闘いとなる。
小川のほとり、木に寄りかかる翔の姿があった。
大概の生徒はまず、拠点となる場所を探すのだが、そんな回りくどいことはするつもりはなかった。
正直なところ三日目までにはリタイアしない絶対の自信があった。
なぜなら彼のようにAランクの生徒は、三日目までにAランクどうしでつぶし合いはしない。それは彼らが早い段階で戦うことが時間と体力の無駄だと知っているからだ。しかも自分より下位の者も、めったなことがないかぎり戦いを挑んでこない。つまり、彼はその肩書きだけで三日目までは残れると保証されているようなものなのだ。
翔ももちろん例外ではない。コインの手がかりが見つかるまではブラブラとするつもりだった。だが、今回はそうもいかないようだ。
AM7:18―――
(…。つけられてる…、この段階で尾行するとは、ずいぶんと目をつけられたもんだな)
適当に泳がしておこう、と特に手は打たなかった。それが後の彼を追い込むとはこのときは知るハズもなかった。
しばらくして彼は殺気を感じ取った。
(…くる…!)
翔はどの方向からの奇襲にも対応できるよう、身構える。沈黙、聴こえるのは風の音、小川のせせらぎ。突然、小川の音が消え、間髪入れずに小川から氷の雨が、翔めがけて降り注ぐ。
<加速>!
翔の能力は水系だが、風系の魔術が使えないわけではない。彼はその判断力の早さで氷の雨をかわしきった。すると水煙の中から青年が現れた。
「…。さすが、と言ったところでしょうか?真中君♪」
「お前は…」
現れたのは1-AのAランク狩り、八王子だ。もっとも、昨年翔に勝負を挑み、返り討ちにされているが。
「去年の借り、返しに来ましたよ♪」
(また、序盤からやっかいな奴に絡まれたな。この場でつぶしておくか…)
「目的は去年の腹いせ…、なら遠慮はしないぜ?」
八王子は不適な笑みを浮かべ黙っている。
―――――
先に仕掛けたのは翔だった。小川の流れを利用し、八王子めがけ直線的に水流を放つ。わざわざ小川のほとりにいたのもこんな急な戦闘で自らを有利にするためである。ただ、あいにく相手も氷雪系術者。小川を武器にできるのは翔だけではない。相手は押し寄せる水流をいとも簡単に凍らせ、すかさず氷の雨でカウンター。
(速っ…!)
「グッ…」
以前に比べ、水を凍らせるスピードが格段に速くなっており、避けることで精一杯だった。いくらかのかすり傷を負わされ、彼の顔つきが変わった。
「こんなもんでしたかぁ?Aランクってのは♪」
八王子の言葉がさらに彼を挑発する。
「……」
翔の目つきが変わる。先ほどのように小川の水を巻き上げるが、先ほどとは違う。まるで生きている蛇のようである。
「蒼流・蛇舞…」
水の蛇はうねりながら相手に向かう。
「いくら翻弄しても無駄ですよ…♪」
八王子は氷の剣を手に、水の蛇を切り裂いた。蛇は一瞬にして切り口から凍り、崩れ去る。
「チッ…!」
八王子は間髪入れず、一気に間合いを詰め翔のバッジを貫きにいく。
(…!)
間一髪、攻撃は外れた。相手は再び距離をとり、ようすをうかがう。
(ずいぶんとカウンターに磨きがかかっている。こうなったら…カウンターのすきを与えない、一撃で決める)
「沈め…。<翡翠の激流>!」
翔の言葉と同時にこれまでとは比べものにならないほどの巨大な水の龍が現れた。
「こっ…凍らない!!ウワァァァァァアァアア!!!」
八王子は凍らせようとするが、質量が違いすぎた。龍は辺り一帯を含み相手を飲み込む。
「飲み込まれたら最後だ…。」
もちろんバッジは激流に飲まれ、八王子はリタイアとなった。
「序盤から疲れた…、寝よう…」
翔はその場に倒れ伏し、静かに眠りについた。…、晃が心に憎しみの炎を抱いていたことなど忘れて…。




