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魔法使いの歩き方  作者: きーち
魔法使いの旅行方
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魔法使いの旅行方(2)

 ハイパインと呼ばれる町は、カガ国に存在する首都の一つとして機能している。首都は一つで当たり前のはずだが、この国に限ってはそうでないらしく、もう二つ程、首都機能を持った町が存在している。クルトの目的地もそれらの都市である。

 何故そういう状況になっているかと言えば、やはりカガ国の特徴である、寡頭制に問題があった。

「全部をまとめる象徴的な存在がいないから、幾つかの家が分かれて、別個の政治制度を作ってるんだっけ? なんで一つの国としてまとまってるんだろう………」

 船から降りたクルトは、ハイパインの港に立つ。自分は今、初めて外国の地に降り立ったのだ。かなり不安だが、その不安を打ち消す様に、自分の次の行動を確認する。

 カガ国を支配する家は、大きく分けて三つある。だから首都も三つあることになる。いまいる町を中心に支配地域を広げるアスファル家もその一つだ。首都に港があることから、クルトの出身国であるマジクト国と同様、海洋貿易でその力を伸ばしている家であることがわかる。

「まずは、このアスファル家統治下にある魔法使いサークルと会合をする必要があるのかな。場所は……うん、書いてあるよね。自分で探せとか書かれてたら、どうしようかと思った」

 貰った資料を読みふけるクルト。カガ国内の地図もかなり細密に書かれている。本当に誰が作ったんだろう。カガ国内でこんなものを作っていたのなら、間諜罪で捕まってしまう可能性だってあるだろうに。

「ふむ。町の中心地近くにあるんだね。ということは、アスファル家の本拠地の近く。この町では、魔法使いがそれなり重用されてるってことか?」

 地図だけを見て、状況をあれこれと考えるクルト。事前に予想できることは、予想しておきたい性質なのだ。

「おおーい坊主、危ないぞ」

「うわっ、とと」

 船に積み荷を運ぶ船員と、危うくぶつかりかけた。どうにも港は人通りが激しい。佇んで考え事をするような場所ではないだろう。

「とりあえず、目的地に向かってみよう。どうせ挨拶だけだろうし………」

 深く考えても仕様が無い。クルトは目先の仕事を優先しようと歩き出す。

 その決断を後悔するのは、もう少し後のことだった。


 「マーライオンの涙」そう書かれた看板が玄関に掲げられた屋敷。地図が示す通りなら、ここが第一にクルトが目指すべき、魔法使いのサークルであるはずだ。

「別に……入っても良いんだよね?」

 案内人が立っているわけでもないので、無断に屋敷へと侵入することに抵抗があるクルト。

 恐る恐るドアノブに手を掛け、玄関を開く。重々しい見た目に反して、扉は少し力を込めただけで開いた。油を随分とさしすぎている様子。

「おや、どなたでしょうか?」

 いくら簡単に開いたと言っても、扉が開く音くらいは鳴る。その音に気が付いて、屋敷の中の住人が顔を出してきた。

 薄目で、何故か額に入れ墨がある青年だ。

「失礼します。ここはカガ国ハイパインの魔法使いが集まる場所……で、良いんでしょうか?」

 いまいち、この国でその様な場所が、どう呼ばれているかがわからない。頭の中では魔法使いサークルと呼んでいるが、本来はどうなのだろう。

「ああ、ここは魔術同盟「マーライオンの涙」だが。きみは?」

 魔術同盟……。随分と立派な名前だ。それだけの規模かどうかは少し怪しいが。いや、これは偉そうな物の見かただろう。

「僕はクルトと言います。マジクト国、魔法大学の代表者として、この国の魔術同盟との会合をお願いしたく、伺わせていただきました」

 クルトが自身の立場を明かすと、薄目の男はその目を見開く(それでも薄い)。

「マジクト国の!? しょ、少々お待ちください!」

 何故か向こうが恐縮して、屋敷の奥へと去る。

「何か……まずいことでも言ったかな?」

 奥を見ようとするものの、玄関口からは中が良く見えない。

「お、お待たせしました。どうぞ上がってください」

 そうこうするうちに、細目の青年が再びやって来て、クルトを屋敷内へ案内する。外から見たよりもさらに大きい様で、幾つかの部屋を通り過ぎた。青年に案内されたのは、その中でも一番広い部屋。

「みんな、この人がマジクト国の魔法大学から来てくれた魔法使いだ。クルトさんと言う」

 青年によって連れてこられた部屋には、部屋の中心にある大机があり、その周囲に二人の男女が立っていた。

「えっと、クルト……さん?」

 見た目だけなら、青年の方が年上だ。さん付けで呼ばれる様な立場でもなく、さすがにクルトは戸惑った。

「何か失礼が!? おい、ハグス。ここに来るまでに何かしたんじゃないだろうな!」

 机を囲む男女の一人が、細目の青年(ハグスと言うらしい)に迫る。体格の良い大男である。

「い、いや、僕は何も」

 大男の剣幕に細目のハグスはたじろぐ。事情を知りたいのはクルトの方なのだが。

「ちょっと二人とも! お客が困っているわよ。本当にごめんなさいね? みんな、他国の魔法使いと会う機会がそう多く無くて、戸惑っているの」

 事態を収拾させたのは別の人間だった。若い女性、と言っても十分に大人の余裕を持っている。あと随分と髪が長い。黒髪が床につきそうだ。

 叱られた大男と細目の方は、頭を掻いて所在なさげにきょろきょろとしている。

「は、はあ。そうですか」

 戸惑っているのはクルトも同様だ。いきなり屋敷の中まで案内されて、複数人の目線が向けられる。慣れる様な状況ではない。

「そうね。まずはお互いの自己紹介から始めましょうか。私の名前はシズア。こっちの大きい人はベン、あなたを案内した方がハグス。みんな、ここの魔術同盟に属する魔法使い」

 それぞれの名前を聞かされるクルト。3人とも外見が特徴的なので、すぐに名前は覚えた。

「えっと、僕はクルトです。マジクト国の魔法大学から……って、もう知ってますよね」

「ええ、そこのハグスが、すぐに走って知らせてくれたから」

 細目の男にシズアが目線を向けた。漸く落ち着いたのか、ハグスは頭を下げて挨拶をしてきた。

「遅れましたね。ハグスです。どうかよろしく」

 ハグスは握手をしようと手をこちらに向ける。

「はい、こちらこそ。それと会合の件なんですが………」

 クルトは相手の手を握り返しながら話を進める。要件は早めに伝えなければならない。どうにも向こうは、クルトが魔法大学の魔法使いというだけで気後れしている様子で、何らかの意見の食い違いがあれば、どんどん話が別の方向に進みそうだった。

「魔法大学がわざわざ俺達と話に来るなんて、うちも随分と名前が売れたってことかあ」

 しかし、クルトが話を進める前に大男のベンが笑う。魔法大学との会合が、そんなにも名誉だろうか。

「あ、あのう。それで、会合を受けてくれるかどうかなんですが………」

「勿論OKだとも! マジクト国の魔法大学は、それはもう大きな組織なんだろう? そういった内情も踏まえて、じっくりと話し合いたいね」

 大男のベンもクルトへと手を差し伸べる。そう言えばこの人物だけ、直接挨拶をしていなかったか。

「ええ、まあ、話せる限りですけど」

 お互いの情報を交換する。それも会合の目的の一つではあるだろう。

「そうね。まずはクルトさんの話を聞いてみましょう。どうにも、何かを頼みに来たのは、そちらの方らしいし」

 どうやらこの場のまとめ役はシズアらしい。彼女の助け舟をありがたく思い、漸くクルトは、彼らにこのカガ国に来た理由を話すのだった。


「なるほど、それじゃあ、やはり魔法大学は僕らとの関係性を強めたい。ということだね?」

 クルトが説明を続けるうちに、立ったままだとなんなので、大机に座って話し合うクルト達。

 実際はもっと多い人数が座るのだろう。かなり広々とした机を挟んで、ハグスが感想を述べる。

「ええ、はい。僕達の大学は、魔法使い達の知識の集約を、その目的の一つとしています。国内の魔法使いをすべて大学所属にという運動もしていまして、それならば他国との魔法使いとも交流を深めるのは重要なのではないかと」

 事前に大学長と決めていた通りの内容をクルトは話す。自分で話していて堅苦しい話だと思うが、組織同士の話し合いなんてそんなものだろう。

「そうねえ。私達の魔術同盟は、ここの3人だけの組織ではないから、すぐに返答というのは難しいのだけれど………」

 困った表情をするシズア。机の大きさと同様に、ここの組織は人数が多いらしい。

「あくまで今回は挨拶程度の話ですから、そんなに深く考えて貰わなくても良いんです。相互のことをまったく知らない状況だけはなんとかしようという話でして」

 まあ、何かしらの話が始めれば、否応なく交流が活発化する。そうして、そういう交流で得をするのは、組織が大きい方である魔法大学だ。

「例えば、今回はどういう話をするつもりなんだ?」

 今度はベンが口を開く。一人が話したら次は別の人物が話すなどという取り決めなんてものもないだろうに。

「そうですね、僕はこの国の、魔術同盟でしたっけ? そういう組織形態がよくわかりません。多分、そちらも魔法大学がどういうものかを知らないんじゃないですか? 機構の裏側まで話すってことじゃなくて、とりあえずお互いの立場の概要くらいは話しておくくらいのことを想定しているのですけども」

 基本的なところから話すのは重要だ。新たに始める魔法研究だったり、組織の当面の目的と言った重要な話だろうと、それが数日後に状況が変わる様な鮮度がある話だと、今ここで知っても意味がない。一旦、魔法大学に持ち帰って、その知識に対してどう動くかを決定した時点で、情報の重要度が低くなっている可能性があるからだ。

 一方で、組織概要だったり構成員人数と言った話は、なかなか変わらない。相手について知るうえで、大事な情報源と成り得る。しかも当人達にとっては当たり前の話なので、情報の機密さが驚くほど低い。

「なるほど。僕らは組織の拡充のために、新たな魔法使いを勧誘することがあるんだが、その時、僕らの魔術同盟についての説明をする。その程度のことで良いんだね?」

 ほっと安心をした顔をするハグス。もっと、恫喝的な話し合いになるとでも思っていたのだろうか。

「はい。当然、そちらだけが話すのもなんなので、魔法大学に関する資料も、こっちから持ってきています。どうぞ」

 クルトは椅子を立ち、魔法大学の組織図であったり、その基本的な目的を書いた概要などをハグス達へ手渡す。

 クルトが再び椅子に戻る頃には、皆が手に持った資料に目を向けていた。

「なにか疑問があれば、答えられる範囲で答えさせていただきますけど……どうします?」

 椅子に座ったクルトは、他の3人がずっと資料を見ているので、どうにも暇になってしまい、そんなことを話す。一応の気遣いだ。話せるのは、本当に答えられる範囲でしかないけれど。

「あー、ちょっといいか?」

 大男のベンが手を上げる。大きな体で縮こまりながら資料を見て、学生の様に手を上げる姿は、どうにも愉快だ。

「なんですか?」

「なんていうかな、この資料を見て思ったんだが、どうにも申し訳ない。はっきり言って、俺達はここまでしっかりとした情報をそっちに提供できない」

 どうにも渡した資料が、向こうの想定よりも詳しいものだったので驚いているらしい。

「一応、新入生向けのパンフレットを加工したものを渡しています。内容は多いかもしれませんけど、重要な部分はあんまり書かれてないと思いますよ。ですから、そっちもそんなに気にする必要は………」

 言ってからしまったと考える。こっちにとっては軽い扱いの資料だが、向こうにとってはそうでないのだ。だというのに、そう重く考えるなと伝えるのは、力関係は明らかにこっちが上だと言っている様なものだ。こっちはなんでもない様な資料でも、そちらより優れたものを作れると。

「あーとはですね、こっちからあまりそちらの予定とかを考えずに伺わせてもらったので、そのためのサービスみたいなものだと思ってください」

 これでフォローできただろうか。かなり怪しいが、とにかくこの場はなんとか取り繕う必要があるだろう。

 会ってすぐに上下関係を作るのは、あまり得策ではない。もう少し互いの立場を理解してからでないと、余計な問題を起こしかねない。

「サービスか……。こちらは、そういうサービスを用意できないかもしれないが、それでも良いのかい?」

 提供できる情報は少ないとハグスは答える。こちらとしては別にそれで構わない。しかし、わざわざそれを口に出すのはどうなのか。出来る限りの情報を渡すと言ってから、重要度の低い情報を渡した方が、こちらに恩も売れて一石二鳥なのに。

「必要なものだけを必要なだけ。今回の会合は、あくまでお互いの顔見せ程度ってことで。それで良いです」

 笑いながらクルトは答える。勿論愛想笑いだ。その目は、相手の安心した様な表情をしっかりと捉えている。今度はこちらが相手の情報を聞く番なのだ。腹に一物抱える準備をしておく必要があった。


 魔術同盟「マーライオンの涙」が話すところによると、カガ国の魔法使いの集まりは、一般的に魔術同盟という名前で呼ばれている。これは魔法使いの相互扶助を目的としながらも、個人の利益を重視するために、個人毎にどれだけの協力を集団に対して行うかを契約書によって決める。その過程から同盟と呼ぶらしい。

「例えば僕は魔法道具に関する研究をしているんだが、魔術同盟に対しての協力は、あくまでその一部のみを知識として提供するに留まる。あとは僕自身が秘匿している……とでも言うのかな」

 ハマツが説明する組織の在り方を、クルトは新鮮に感じる。魔法大学において、魔法使いが行う魔法研究とは、最終的に魔法大学へ帰属するものだ。

 知識や技術が他人に隠される場合はあるものの、それは魔法大学側の裁量によって決まる。例えばクルトが自分の魔法研究を自分だけのものにしようとしても、魔法大学側がその研究内容を提出しろと命令すれば、クルトには拒むことができない。大学は国家の利益のために存在し、大学関係者は、そんな大学の援助によって魔法研究を行っているのだから。

「魔法使いの知識はその魔法使いだけのもの。そういう大前提があって、協力関係を築くなら、その対価をお互い出し合おうって感じなんですかね?」

 そこには国家や一般社会の概念が存在しない。あくまで魔法使い達内輪で完結する関係だ。魔法大学は国の支援によって成り立つが、ここの魔術同盟は国から一定の自立をしているのかも。

「そうね。同盟に入る際は、それがどれだけのものか記した契約書を作るの。その契約書の内容は絶対。そういう風習が、いつのまにか国全体で出来ていたのよね。その分、契約書に書かれていないことに関しては、結構ちゃらんぽらんなんだけど」

 シズアが補足する様に説明を続ける。契約書を基準にした組織体勢は、カガ国の機構と大きく関わっているのだろう。

 国の中でさえ、統治者である家が複数に分かれており、組織なんて作ろうものなら、それぞれの支持している家や、出身地によって協力体制がバラバラになる。それでは相互扶助の意味がなくなるため、契約書という絶対的なものを用意して、なんとか組織としての体制を保とうとしているのだろう。

「魔法使いの集まりと言っても、やっぱり国毎に形や在り方も違うんですね。いや、それを知れただけでも有り難いですよ。多分、そういう内情を知らない人が、こっちの国では少なくないでしょうから」

 一応、話の概要だけでもメモっておく。こういうメモが、今回の仕事の成果になるはずだ。

「まあ、役に立つっていうのならそれで良いけどな。これ以上何か資料を寄越せと言われても困る」

「ちょっとベン!」

 ベンの言葉をシズアが叱責する。

 なんだろう。急に邪険にされた。いや、むしろ、これ以上踏み込むなと線引きをされた様にも思える。

「いえ、いきなりやってきたのはこちらですから。多少の無理があるのなら、深くは聞きません。それよりも、これからの話をしましょう。これを機に魔法大学との交流でも始めてみませんか? 場所が離れていますから、そう頻繁にはできないでしょうけど―――」

「ああっと。そういう話については、まだちょっと待ってくれないか? こちらにも色々と事情があってね。僕らはマジクト国の魔法大学について、殆ど知らない状況だ。もう少し期間を空けて、お互いの距離感がもう少し縮まってからでも………」

「はい?」

 妙に遠回しで、矛盾したことを言うハグスに対して、クルトはつい疑問の声を上げる。お互いのことを知るために定期的な交流をしようと提案しているのに、お互いのことを知らないから交流は無理だと断られる。どういうことなのか。

「いいわよハグス。取り繕う必要はない。クルトさん? 非常に失礼な話かもしれないけど、今の所、私達「マーライオンの涙」は、魔法大学との交流を図るつもりはないの」

 隠していたことを打ち明けるにしては堂々とした態度のシズア。自分達の言い分に、正当性があると信じている顔だ。

「何か、こちらに不備でも?」

 そうであるのならば、是非にでも知りたい。会合をする予定の組織は、ここ以外にもあるのだから。

「いいえ。問題は魔法大学にあるんじゃなくて、私達側にあるから。でも、その理由についてはちょっと話せない」

 そう答えられても、納得できるはずがなかった。今後もこういう断られ方をするのなら、仕事が失敗することと変わらない。

「理由だけでも教えて貰えませんか?」

「悪いなあ。本当に無理なんだ。ことが俺達だけの問題じゃあないんだよ。この資料に関しては受け取っておくし、今日、こっちから提供した情報に関しては、いくらでも話してくれて構わない。まあ、そういうことで頼む」

 ベンがそういうと、他二人は口を閉ざす。ベンの話は、今回の会合はこれで終わりで、これ以上の進展はない。そう告げていた。


「まいったなあ。絶対裏に何かあるぞ。こんなことなら、ちゃんと事前準備をしてから向かうんだった」

 今さら後悔をしながら、ハイパインの町を歩くクルト。最終的に追い出される様な形で魔術同盟「マーライオンの涙」を出ることになったが、仕事の成果云々を言えば、失敗に近いのではないかと思える。

「一応、組織の内情を少しは知ることができたけど、十分じゃあ無いよね。絶対」

 クルトは大学長の代理でこの国に来ている。そして今回の仕事は、この国の魔法使い組織との交流だ。別に向こうが断っても、それはそれで構わないのであるが、理由を知らなければ、クルトはそのことを魔法大学に報告することができない。なんだかこの国の魔法使いが交流を嫌がったみたいですで済む仕事ではないのだ。

「最初に会った時は警戒心が無かったんだよ。その時に色々聞いておくべきだったなあ。今さら聞き出そうとしても、既に口を閉ざしてしまっているし………」

 ならばどうすれば良いか。すこし考えた後、クルトは答えを出した。

「魔術同盟はこの町だけにあるわけじゃあない。他の町にもあるし、そもそもの予定がこの国に複数ある魔術同盟との会合だ。となると、別の魔術同盟に何かしらの情報があることに賭けるか」

 問題が自分達だけのものではない。魔術同盟「マーライオンの涙」は、そんなことを言っていた。自分達だけでなければ、いったい他に何が含まれるのか。もしかして、他の魔術同盟にも関わるのでは。

 そう予想したクルトは、次の目標を決めた。ハイパインから陸路で南西に向かった場所にある町「ゴールドサーベル」である。カガ国に3つある首都のうちの一つ。そこにも、この国を代表する魔術同盟が存在する。元々、ハイパインの次はその町へ向かう予定だった。

「と、その前に、まずはこの町での情報収集だよねえ。世間のことを知らないと、上手く仕事なんてできないもの」

 そう呟いて、ハイパインの町を歩きだす。何故だか軽い足取りだ。勿論、仕事のためにカガ国のことを知ろうとしているのである。

 決して、そう決して、観光のためにあちこちを見歩こうなどと考えているわけではない。本当である。


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