魔法使いの旅行方(3)
ハイパインで観光、もとい情報収集をしているうち、クルトは興味深い話を耳にした。
「お客さん、旅人かい? だったら気を付けた方が良い。西のイハミ国が、どうにも戦争の準備をしているそうだ」
海産物の炭焼きをしている屋台の店主は、こちらがイカの丸焼きを受け取る際に、そんな忠告をしてきた。
「戦争ですか? フォース大陸では長い間、国家間同士の戦争なんて無かったと思いますけど………」
かつて、大陸の名前すら決まっていなかった時代には、今の4国に纏まるまでに小競り合いから大人数による戦いに至るまで、様々な戦争行為があったと聞く。しかし、今は国家そのものが安定している時期で、戦争を始めようという雰囲気は、少なくともマジクト国にはない。
「それがイハミ国も、防衛のための準備だって言い張ってるらしくてなあ」
「防衛? それこそ変じゃないですか。何の脅威から国を守るって言うんです?」
建前と事実が違うという奴だろうか。防衛と称して、他国を責める戦力を整える。ありそうな話だが、だからこそ、見る限りに愚手である。クルトにだって予想できそうな策略が、他者にバレないはずがない・
「いやあ、それがな、ここからは噂の域を出ない話なんだが。なんでも、別の大陸から攻めてくるんじゃないかって話だ」
何故か小声になって話す店主。噂程度の話なら、別に隠す程のものでもあるまい。
「別の大陸……ですか? いや、そりゃあ、まったく有り得ない話ではないですけど………」
この世界に存在する大陸は、別にフォース大陸だけではない。クルトが住むこの大地以外で、まったく違った風習や文化を持った世界が存在しているのだ。
事実、海運業で栄えるマジクト国などは、フォース大陸以外の大陸とも交易をしている。
「そうだなあ。ちょっと嘘っぽいよな。けど、イハミ国方面が物騒だって話は良く聞くよ。おかげで、うちの国の雰囲気もキナ臭くなって来た」
「それはどういう?」
「お客さんみたいな旅人には関係のない話かもしれんがね。うちは国を治める王様が何人かいる様な状況でな。イハミ国の行動に対して、カガ国がどう動くかで、町ごとの意見が対立してるんだそうだ。商売人にとっては迷惑な話だよ」
「へえ」
忌々しそうに嘆く店主を見ながら、これは面白い話だと不謹慎なことを考えるクルト。今、カガ国では統治者である家がそれぞれ対立した意見を持っている。これはもしかしたら、自分の仕事に関わってくるかもしれない。
クルトはこの話を胸に仕舞っておくことにした。何時でも取り出せる様にだ。
十分にハイパインを満喫したクルト。海の景色は素晴らしいが、魔法大学のあるアシュルの町と雰囲気が似ているせいで、すぐに飽きてしまった。
なので、クルトは一夜だけ宿をとり、次の日の朝には目的地であるゴールドサーベルへ向かう準備をして、すぐに出発した。
(主要な都市同士だから、乗合い馬車があって、楽っちゃあ楽な道程だけどね)
乗合い馬車の隅に座りながら、クルトはそんなことを考えていた。
2頭の馬で引く馬車はなかなかの大きさで、さらにクルトの体格が小さいこともあって、かなり広々としている。これでもクルトの他に何人か乗っているのだが、他の客も、別段不快そうにはしていない。いや、そうでもないか。
「もう少しで町に到着します! ゴールドサーベルが目的地のお客様は降りる準備を!」
御者はそう乗客に伝えるが、クルトを含めて反応する者はいなかった。何故かと言えば、この言葉を聞くのが何度目かだったからだ。
(最初は、明日の朝には着く。次は今日の夕方には、その次は夜が明ける頃には、そうして今日の朝からはさっきの言葉が何度も………)
どうやら馬がバテているらしく、道程はなかなか芳しくない。一応、目的地には近づいてはいるのだろうと思う。街道を一度も離れていないことから見た予測でしかないが。
「お客様? あの、準備を………」
もう一度御者がこちらを振り向く。しつこい奴だ。町にはまだ遠いのだろうに。
(って、本当に町だ)
漸くクルトの視界に街道以外の風景が映る。景色の奥の山と、それより近くにある街並み。鉱山都市、ゴールドサーベルが見えたのだ。
カガ国二つ目の首都、ゴールドサーベル。大陸でも珍しい金鉱がある町で、産出された金による経済力を背景に、この町に出身の一族、コート家が勢力を伸ばしている。コート家はカガ国を統治する家系の一つでもある。
「旅行者にとっては金塊よりも、山岳風景が楽しみなんだろうけどね」
借りた宿の部屋から見える景色を見て、そんな感想を述べるクルト。町に着いた頃には、昼も過ぎようかという時刻で、目的の魔術同盟よりも先に宿を探したのだ。
「お土産で小さな金細工でもって思ったけど、それも売ってないもんなあ」
金は通貨として使われるものであり、国外はおろか、町から町への輸出入にも厳しい監視がつけられている。当然、町の土産物屋に売っている様な物でなく、代わりに金風にみせた黄銅細工が並んでいた。
それらも名物と言えば名物なのだが、それとは別に町から見える雄大な鉱山も中々に名所となっている。
金塊の他にも観光地としての人通りが多く、その経済を盤石なものとしているのだろう。
「ふむ。少し暇だし、この町の状況について探ってみようかな」
ハイパインの時の様な失敗は避けたい。今日はこの町の魔術同盟に向かわないと決めれば、暇な時間ができるのだから、人から話を聞く程度のことは可能だ。
「よし、さっそく行ってみよう」
日が暮れるまでそれ程時間は掛らないであろうものの、もしかしたら巡りあわせで何かしか有用なものが見つかるかもしれなかった。
結論から言えば、役立つ情報は見つかったとも言えるし、見つからなかったとも言える。クルトが魔術同盟について聞いたのは、この宿の主人であった。
「魔術同盟? ああ、なんかあの変人どもの集まりか」
この町の住人には認知されているらしいが、どうにも良い印象は持たれていない様子。
「変人なんですか?」
魔法使いと変な人間はイコールでは無い。恐らく。まともな人間だって中にはいるのだ。自分がそうだとは言えないが。
「変人さ。仕事もせずに、うだうだ非生産的な話ばっかりしている」
経済的な町らしく、仕事をせぬ者は怠け者という見方がされている様だ。しかも怠け者だというのに、妙な研究で忙しそうにしているのだから、変人という印象になってしまっているのだろう。
「魔法を使えるんでしたら、何かしら役に立つんじゃないでしょうか」
「らしいな。しているところを見たことはないが」
どうやら非生産的な人種であるのは確からしい。
こういう会話の中でわかったことは一つ。この町において、魔術同盟の力はそう強くない。それはこれからの交渉で役立つ情報にはなるだろうが、力を持たない魔術同盟と会合をしたところで、今後の役に立つがどうかは怪しい話だった。
翌朝、資料に指定された魔術同盟の場所へ向かう。この町の魔術同盟は町の端にあるらしく、やはりその力関係が良くわかる立地だ。
「魔術同盟っていうのは、やっぱりそれぞれ名前が付いてるもんなんだね………」
ハイパインにあったものよりも数段劣るであろう小屋には、みすぼらしい表札が。魔術同盟『比例する網』。どういう意味なのか。まあ、そんな頭を使ったのか使わなかったのかわかり難い名前だ。
「すみません。どなたか居ますか?」
玄関口にある扉を開けず、ノックをするクルト。外からの声も十分に聞こえるであろう小さな建築物なので、いきなりドアを開ける様な真似はしない。
「はい。ちょっと待ってください」
中からの声もちゃんと聞こえる。ドタドタという足音が、玄関まで近づいてくる。
「お待たせしました。ええっーと、どの様なご用件で?」
玄関の扉が開き、老婆が顔を出す。腰が曲がり、クルトが見ても小さな姿だが、声量と発音はしっかりしている。
「はい。マジクト国魔法大学よ、魔法大学代表として、こちらの魔術同盟と会合を開きたいと思い、伺わせていただきました。突然のご訪問で申しわけありませんが、お時間の都合は宜しいでしょうか?」
失礼の無いように挨拶をする。こちらもある程度は腰が低いので大丈夫だろうとは思う。
「はいはい。お客さんね。どうぞ」
「え? あ、はい」
最初に立ち寄った魔術同盟では、何やら驚いた様子で対応してくれたが、ここでは普通だ。クルトはつい拍子抜けしてしまう。
「ドアが固いからね、ちゃんと閉めて入ってね」
老婆に言われた通り扉を閉める。確かに随分と固い。所々錆びついているのだろう。蝋を塗るべきだ。
「ミルヤさーん。お客さんよう」
老婆が小屋の中で叫ぶ。他に人がいるのなら、そんなに大きな声を出さずとも聞こえると思うのだが。
「なんなだなんだ。ウディカ婆さん。こっちは今忙しいんだが………客?」
奥からボサボサ頭の青年が出てきた。服もヨレヨレで酷く汚れている。
「はい。マジクト国魔法大学から来たクルトと申します」
本日二度目の自己紹介をする。
「魔法大学………。ああ、あのデカくて人がたくさんいるって有名な」
手を打つ青年。ただ驚いている風ではない。やはり魔術同盟によって、その性格は大きく違うのだろう。
「ええ、その有名な」
あまり礼儀正しくしても意味はないだろうと思い、姿勢を崩すクルト。ここではこうした方が交渉し易いはずだ。
「それで? その大学の人が何の様? 雑事ならそこのウディカ婆さんがなんとかしてくれると思うけど」
ボサボサの青年はウディカと呼ばれる老婆を見る。
「あらあ。わたしだって魔法使いよう? そんなに暇じゃあないわあ」
「俺もさ。昨日、珍しい鉱石が見つかっただろ? あれ、もしかしたら魔力の反応剤になるかもしれない。ちょっと試してみたいんだよ」
雑用よりも自分の魔法研究を。そういう考え方なのがすぐにわかる。確かに変人だ。そして、どうにもクルトはこういう人種に好感を持ってしまう。
「鉱石って、ここの鉱山から出たものですか?」
「ああ。ここの鉱山は金以外にも、魔法研究に役立つ物質が時々出るんだよ。まあ、恵まれた環境かもな」
その割には、ここの魔術同盟はあまり賑わっていないが。
「お婆さんも、そういった魔法研究を?」
「いいええ。わたしなんかは、若い頃に魔法を教わって、そのままずるずると続けているだけですから。ただ、この町で生まれただけなのよ」
まあ、そういう人種もいるだろう。ここは大学ではない。絶対に魔法を研究しなければならないわけでもないのだ。
「魔法に興味があるのか? って、ああ、魔法大学の魔法使いだったか。そりゃあ他人の研究に興味があるだろう」
一応、友好的なのだろうか? ニヤリと笑う青年。
「そうですね。この国の魔法について、良く知りたくはありますね」
「ふうん。そりゃあなかなか………。うん、俺はミルヤと言う。君は、あー」
「クルトです」
先程も言ったと思うのだが、もう一度クルトは自分の名前を話す。どうやら、向こうもこちらに対して興味を持ってくれた様だ。
「そうだ、マジクト国のクルト君。君だって、魔法の研究をしているんだろう? なら、どうしてわざわざ外国の、しかもこんな町へ来たんだ? 面倒だろう?」
まったくもってその通りだ。魔法使いなら誰だって、何者にも邪魔されない自由な状況で、自分の研究に集中したいものである。研究費用と資料が無限大にあれば尚良い
「こういう面倒事をしておかないと、もっと面倒な状況になりがちでしてね。嫌々ですけど、明日の魔法研究のために、色々と勤しんでいるわけです」
「そうなの? 若い子って大変ねえ」
孫を心配する祖母の様な感想を述べるウディカ。クルトから見れば、彼女の方が苦労している様に見える。主に今日一日を生きる方面で。
「面倒な事でもしなきゃならないってのは同感だ。あまり魔法に興味を持たない町でね。ただ研究に集中するだけでも奇異の目で見られる。同じ魔法使い仲間もそうなら、手助けするのがせめてもの行いかな?」
ミルヤはクルトを正面で見つめてくる。とりあえず第一関門は突破した様だ。後はどの様に話を進めるか。前回の様に、あまり良くない方向に進まなければ良いが。
ミルヤとウディカにお互いの立場と、今後、マジクト国魔法大学と交流を持たないかという要望を伝える。
勿論、ここの魔術同盟『ヒレイする網』の情報を、ある程度引き出した上でだ。
(思った通り、組織の規模としてはかなり小さいらしい。参加人数もここにいる二人を入れて二桁にも達しない。中には、ここ数年、顔も出さない人間もいるんだっけ)
交流を持てたとしても、大学に利益があるのかどうかは怪しいだろう。しかし話を続ければ、この国の情報や、魔法使い達がどう考えているのかを知る事はできる。
それにクルト個人としては、仲良くしたい相手ではあるのだ。ここの魔術同盟は。
「さて、何を言えば良いのか………。悪いがこれから魔法大学と交流をするというのは、うちとしては無理な話だ。理由については、他国の人間には黙っておくべきなんだろうが、君には話してやりたい。同じ魔法使いとしてな」
ミルヤは複雑な表情をする。この表情を、クルトは別の場所で見たことがあった。最初に出向いた魔術同盟『マーライオンの涙』で、クルトがこれから魔法大学代表として交流を持ちたいと話した時に見たそれと同様だ。
「前にも、別の魔術同盟で同じことを言われました。大学と交流を持つことはできない。その理由は説明できないと」
今はその理由が知りたいのだ。ここの魔術同盟がそれを知るというのなら好都合だ。なんとしても聞き出してやる。
「ああ。そういう命令がすべての家から出ている。一種の戒厳令だな」
「家……というのは、この国を支配している?」
カガ国を支配する三つの一族。この国で家という単語で呼ばれるのは、自宅以外ではそれを指すことが多い。
「そうだよ。その家からとある命令が、うちだけじゃなく、カガ国である種の知識を持った組織、人物には必ず通達されている。うちみたいな小さな魔術同盟にも」
まさに面倒事を話すと言った風にミルヤは答える。
「ちょおっとびっくりしたわよねえ。それだけお国の一大事ってことなんだもの」
一方でウディカはなんでも無い様子だ。これは年の功と言えるのか、単に感覚が鈍いだけなのか。
「魔法大学との交流を断るのは、カガ国が関わって来ているってことですか!?」
相手は思ったより強敵だった様だ。てっきり魔術同盟同士の協定でもあるのかと予想していたクルトにとっては、驚きの内容である。
「一応言っておくが、別に魔法大学をカガ国が敵視しているわけじゃあない。聞けば納得して貰えると思うが………。そうだな、こういう噂を耳にしたことはないか? 近々、戦争が始まるかもしれないと言った」
「はい。西のイハミ国が、戦争の準備をしているだったり、別の大陸と戦争を始めるかもしれないとかいう、眉唾ものの話ですけど………」
始めはハイパインの屋台で聞いた。そして他の場所でも何度か。イハミ国が物騒な状況であるというのは、共通の話でもあった。
「そう。本当かどうかも怪しい話で、カガ国の支配者方々も、どう対応するか困っているらしい。だが一つだけ、決定したことがある」
「それはなんですか?」
恐らくは、今日一番の収穫になるであろう情報だ。クルトは意識を集中させる。まるで魔法を使うかの様に。
「この国が戦争をするうえで、他国より優れている可能性のある知識、技術に関しては、他国の人間に対して絶対に漏らさないこと。余所の国が戦争を始める可能性があるのなら、この国でもその準備をしなければならない。これは、その布石なんだろうさ」
戦争とは、事前にどれだけの準備ができていたかで有利不利が決まるものらしい。そして、どの様な事態であろうとも、カガ国は有利に立ち回りたい。そういう考えだけは、この国の支配者達の間で共通のものだったらしく、この国の魔術同盟にも、知識、技術を外部に漏らさぬよう、戒厳令が敷かれているそうだ。その戒厳令自体も口止めされた状況で。
戦争に有効的に使えるものは、今から独占しておいて損は無い。ただ、今からそんなことをしていると知られれば、悪い印象を持たれる。そんな考えから、各組織へ命令が出されているのだろう。
「魔法は、戦争の道具として使えるってことなんですかね………」
「それはまあそうだろう。基礎的な魔法が火の魔法なのはどうしてだか知っているか? 戦いに役立つからだそうだ」
本当に。本当に面倒臭そうなミルヤ。確かに面倒臭い話だ。自分達の能力が、戦争に利用されるかもしれないというのは。
「この国は、本当に戦争を始めるつもりなんでしょうか?」
「さてなあ。本気、半信半疑、信じたフリをして、別の利益を得ようとしている。それ全部の意見があるんだろうさ。だから、こんな妙な口止めが国中でされている。俺たち魔法使いにとっては、情報交流が難しくなるのは、願い下げなんだけどな」
それは遠回しな、魔法大学との交流を断るという返答だった。クルトにとって、それは覚悟していたものだ。口止めをしている相手は国だ。クルトがなんとかできる相手ではなかった。
「本当にごめんなさいねえ。せっかく来てくれたのに、お茶も出せなかったでしょう?」
魔術同盟『比例する縄』の玄関を出た場所で、クルトはウディカとの別れの挨拶をしていた。
「いえ、いきなりやって来た僕の方が失礼でしたから。それより、口止めされているはずの話をしてくれて、ありがとうございます」
それには本当に感謝している。もしこのことが他所にバレでもすれば、ここの魔術同盟に対して、何らかのペナルティがあるだろうから。
「あら、お礼ならミルヤさんにね。彼、奥に籠ったままだけど」
ミルヤはクルトとの話し合いのあと、すぐに自分の魔法研究へと戻った。
必要なことを話したのなら、後は自らの趣味に没頭する。羨ましい性格であるし、どうしてだか尊敬もできてしまうクルト。
「うーん。ここからじゃあお礼は伝えられそうに無いんで、代わりにお願いしときますね。今日は本当にありがとうございました」
別れを告げて、クルトは宿へと戻る。足取りは重い。収穫ならあった。ただ、それをどうすれば良いのか。持て余してしまう。
「さて、どうしようか。この国の魔術同盟と交流を持つのは絶望的だ。むしろ、カガ国が魔術同盟に対して戒厳令を敷いているという情報だけ持って帰った方が、まだ良いんじゃないか?」
これ以上の情報は望めそうにない。魔法大学代表としてこの国の魔法使いと交流を深めようという試みは、前提からして破たんしていたのだから。
何故、交流が不可能なのかという理由がわかったのだから、いいわけくらいならできるだろう。
「いや、だけど、まだ立ち寄ってない場所が一つあったか………」
まだ、カガ国最後の首都が残っている。二つ目まで来て最後の一つを逃すのは、少々もったいないのではないだろうか。
「万が一って話もあるよね。そもそも今回だって、思っていた以上の話はすることができたんだ。次も、良い具合にこっちへ追い風が吹くかもしれない」
その風が、クルトの目的を達成させてくれる可能性だって、まったくないわけでもない。であるならば、諦めるのはまだ早いだろう。
「そうと決まれば、今日一日はじっくり休養して、明日へ備えよう。明日への活力は多い方が、交渉にだって役立つはずさ」
一人で頷き、クルトはゴールドサーベルの町へ繰り出していく。今日は大学の友人達に贈る土産を探そう。金は買えないが、他に面白いものが幾つかあったのをクルトは思い返していた。




