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第26話:パパが風邪ひき!? ちいさな看護師さんたちの健気なお世話 ◯月◯日(育児日記 168日目)後編

◇


しかし、スライムの風邪(熱暴走)はそう簡単には治まらなかった。


ハーブの葉っぱとお水で体温が下がり始めたかと思うと、今度は一転して「氷点下近くの急激な冷却現象」が私を襲ったのだ!


シャリシャリシャリ……ッ!


私の青いスライムボディが、一瞬にして白く凍りつき、氷の結晶が体表を覆い始めた!


「く……ぐぬぬ……っ! 今度は……寒気が……冷気が体内から……っ!」


ガタガタと震え出す私。


それを見たアマチと三つ子たちは、少しも怯まなかった!


「あぅ! パパ、今度は寒いの!? 大変! 温めるのーっ!」


「「「パパを温めるニャーッ!!!」」」


アマチ、クララ、ナララ、ミララの4人が、同時に動いた!


彼女たちが取った行動は——【全身全霊の「ぎゅーっ(ハグ)」】であった!


「あぅーっ! パパ、寒いの飛んでけーっ!」


アマチが、氷のように冷たくなった私のスライムボディに、自分の小さな温かい身体を「ぎゅーーーっ!」と全力で押し当ててきた!


さらに、クララ、ナララ、ミララの三つ子たちも、フワフワの温かい毛並みを全開にして、私の左右と上から重なり合うように「ドスッ! ドスッ!」と抱きついてきたのだ!


「みゅ〜〜〜っ! パパ、あったかくなーれニャーッ!」


「ボクたちの体温をあげるニャーッ!」


「あたたかいの、飛んでけーっ!」


4人の小さな身体から放たれる、生命力に満ちちあふれた三十六度〜三十八度の温もりが、冷え固まっていた私のスライムボディを全方向から包み込む!


ジュワァァァァァ……っ。


凍りついていた体表の氷が、子どもたちの体温と、その胸にある「パパを助けたい」という溢れんばかりの愛によって、すうっと溶け去っていった。


「あ……あたたかい……! みんなの……体温が……命のぬくもりが……入ってくる……!」


アマチが、私の冷たい体表に小さな頬を「すり……すり……」と寄せながら、必死におまじないを唱え続けた。


「あぅ……ちちんぷいぷい……パパのお熱、バイバイ……。冷たいのも、バイバイ……。パパ、元気になぁれ……! アマチのパパで……いてね……っ」


ぽろぽろと、アマチの瞳から温かい涙がこぼれ落ち、私の体に落ちた。


その瞬間であった。


ピコピコピコピコ——ポンッ!!


私の脳内(ステータススクリーン)で、眩い光とともに奇跡のファンファーレが鳴り響いた!


【熱暴走の鎮静を確認】 子どもたちの『体温共有』および『精神同調(愛)』により、魔素循環系が正常化しました。


【HP(質量)が回復中:20 ➔ 50 ➔ 80 ➔ 100(MAX)!!】 【体温:36.5度(完全正常化)】


ブワァァァァァッ!!


私の中で滞っていた魔素が、まるで濁流のように一気にスムーズに流れ出した! 体温が完璧な「三十六度半」へと固定され、縮こまっていたスライムボディが、ボコボコボコッと音を立てて本来の『特大バランスボールサイズ』へと完全復活を遂げたのだ!


◇


「あ……! パパのお色、もどった! おっきくなったーっ!」


アマチが泣き顔から一転、パッと顔を輝かせた!


三つ子たちも「にゃあぁぁぁっ! 天山さんが元通りニャーッ!」と大歓声をあげる!


「ふぅ……ふぅ……! 治った……! パパの風邪が、完全に治ったよ!!」


私は完全復元した巨大な青いスライムボディで、自分に抱きついてくれていたアマチと三つ子たちを、優しく、そして力いっぱいに包み込んだ(ハグした)!


「みんな……! ありがとう……! 君たちの温かいお世話とおまじないのおかげで、パパは助かったよ……!」


「あはっ! パパ! パパ、あったかい! いつものパパだーっ!」


アマチが私の身体の中で、涙と鼻水をぬぐいながら、大満開の笑顔を咲かせた。


頭頂部の「髪の毛猫耳」が、萎れていたのが嘘のように「ピンッ!」と力強く直立し、嬉しそうにピコピコと踊り始める。


「アマチね……パパが小さくなって……冷たくなったとき……すっごく怖かったの……」


アマチが小さな手で、私の核(コア)の近くをぎゅっと握りしめた。


「でもね……アマチ、お姉ちゃんだから! パパを守ったの! クララちゃんたちと一緒に、パパを治したんだよ!」


「ああ……! 知っているよ! 君たちは世界一頼もしくて、世界一優しい、パパの最高の看護師さんたちだ!」


私は感動のあまり、身体の表面をぽかぽかの三十七度に温め、子どもたちをすりすりと撫で回した。


「みゅ〜♪(くすぐったいニャ!)」「天山さん、もう風邪引いちゃダメニャ!」「お腹空いたニャーっ!」


三つ子たちも安心して、私の身体の上でゴロゴロと喉を鳴らした。


◇


「あらあら? なんだか大騒ぎが収まったと思ったら……すっかり元通りの元気なお父様に戻ったのね?」


ドアが開き、心配して温かいハーブ粥を持ってきてくれた母猫・メイラさん(Lv.42)とルークが入ってきた。


「メイラさん! ルーク殿!」


「天山さん、一時はどうなるかと思ったニャー! 顔が赤くなったり青くなったりして、死んじゃうかと思ったニャ!」


「ふふ、ルーク。心配いらなかったようね。見てごらんなさい、あの小さな看護師さんたちの誇らしげな顔を」


メイラさんが目を細め、アマチたちを見つめた。


アマチは、メイラさんに向かってエッヘンと胸を張り、小さな手で自分を指さした。


「おかあしゃま! あのね! パパの風邪、天智ちゃんたちが治したの! お水あげて、葉っぱのせて、ぎゅーってしたの!」


「ええ、知っているわ。天智ちゃんたちが一生懸命にお外でお水や葉っぱを運んでいるのを見ていたもの。本当に……立派なお姉さんになったわね、天智ちゃん」


メイラさんが優しく腰をかがめ、アマチの頭を愛おしそうに撫でてくれた。


「あはっ! ほめられたーっ!」


アマチは嬉しそうに笑い、今度は私のスライムボディへと飛び込んできた。


◇


その夜。


風邪がすっかり治った私は、最高のポカポカ体温(三十六度半)に保ったスライムベッドに変形し、子どもたちを寝かしつけていた。


疲れてすやすやと眠る三つ子たちの隣で、アマチが私の体表にピタリと寄り添っている。


アマチは眠りにつきながらも、小さな手を私の体表に乗せ、時折「ポン……ポン……」と確かめるように撫でていた。


「あぅ……パパ……もう……お熱……ないねぇ……」


安心しきった、小さな小さな寝言。


ステータススクリーンに映る、アマチの【お姉ちゃん度:120%】と【パパへの愛:測定不能(極大)】の輝く文字。


守られるばかりだった小さな赤ん坊は、いつの間にか、倒れた父親を救おうとする温かい心を持った「ちいさな騎士(看護師)」へと成長していたのだ。


「ありがとう、天智。パパはね、君の父親になれて……本当に幸せだよ」


すやすやと可愛い寝息を立てる4人の小さな天使たちの可愛い寝顔を見つめながら、スライムパパは静かに、そして一生分の感謝を込めて目(核)を閉じるのであった。


(第26話・完)

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