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SHOT D RAIN〜少子化対策VRMMOで関係を持った相手が、同じ会社の社員ってあり得るの!?  作者: 丹羽坂飛鳥
本編

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社会的デスゲーム

 ハイレシアに閉じ込められてから、二人で攻略サイトを漁りまくった。

 これはもう、どうしようもないことだけが分かった。


 警告文の方は本気でまずい。

 通報入れたらキャラは速攻で凍結、ログイン場所や住所は分かってるからすぐに警察が来るらしい。

 安易に押して酷い目に遭った体験談を見つけた。政府のゲームだから安全管理が凄まじい。


 注意文の方は通報一回で凍結されるかされないかギリギリみたい。

 ピエナちゃんがログアウト前に迷惑行為で通報入れてから消えてたら、アウト。累積があっても、アウト。政府AI事情汲んで、仕事して。って思っても、感情的な判断はAIには難しい。

 タツキもロビーの椅子を借りて調べ切って、強制ログアウトまで残り一時間なのを見て溜め息を吐いた。


「ミツハ、俺がログアウトで抜け出す。通報多分一回目だし、そこまで処分キツくないと思うから」


「だめだってタツキ、もうちょっと考えて」


 私にだって、タツキをログアウトさせたくない理由がある。

 胸ぐら掴んで、目を逸らしてるタツキを必死に説得した。


「ピエナちゃん撃退して、結局タツキまで消したら私、笑い話じゃ済まないんだよ!?」


 サークルチャットが大盛り上がりだったけど今回はお通夜になる。ミツハなにしてるのって話になっちゃう。

 本当に勘弁してください。間抜けにも程があります。

 タツキもわかってるけど、首を横に振っている。


「抜け道がなかった以上、不正使用での通報しかないって。

 明日も仕事だし、時間切れ待つくらいだったら潔くログアウトしたほうが社会的にもマシ」


「攻略サイトには『STP付与した方の罪が重い』って書かれてる。警告メッセージが契約書代わりみたいだから、タツキのアカウント停止だけじゃなくてキャラ削除まであるかもしれない。もうちょっと待ってよ、考えるから」


「二人で探しても他に方法見つからなかっただろ。

 ……じゃあどうする。正攻法ならここは穏便に抜け出せる。でも今更、俺とSTP消費出来る?」


 う。

 相手が課長だって分かりながら、タツキとそういうことが出来るかってことだよね?

 確かに体はキャラクターだし、ゲームの中の話だ。

 でも前回と決定的に違うのは、私は相手を知っていて、……相手が嫌いだってこと。

 悩んでると、タツキが私を見て自分の首に触れている。


「……な。俺のこと嫌いなのに、無理させる方が嫌なんだって。

 ログアウトさせて。ミツハが助けようとしてくれた気持ちだけで十分嬉しかったし、消えても後悔しないから」


 ミスして、追い詰めたのは私。

 新ステージ解放のために、毎日ノルマも達成しながら大切に育ててきたキャラクター。

 来月には高レベル対応エリアが増えるねってみんなで楽しみにしてたのに、ありえない。

 顔を上げれば画面操作してるタツキがいるから、必死に飛び込んで装備を掴んだ。


「やめて、タツキだったら出来るから。お願いだからログアウトしないで」


 ハイレシア系のホテルは誰にも会わないよう制作されてるから、メニューを開いて自分で装備解除した。

 椅子に座るタツキの上で下着だけになったけど、基本装備のブラとショーツは取れないみたいで解除項目が見当たらない。

 だから下着に指をかけて自分で下げようとしたら、気付いたら変わってる私の格好に赤くなったタツキに腕を掴まれた。


「待ったミツハ、よく考えろ。一呼吸置けって。また焦って判断ミスってるから絶対」


「ミスってない。考えたから脱いでる。タツキがロビーでするの嫌なら部屋行こ。今日は……5210号室だって。ほら早く来て」


 掴まれた腕を掴み返して、逆にタツキを引っ張る。

 エレベーターまで連れて行ったけど、扉の前ではまたタツキに腕を引かれた。


「ミツハ。……一崎。落ち着いて考え直せ。キャラ消えたってまたやり直せば良い。でも一崎自身が傷付いたら、その方が取り返しつかない」


 リアルネームで呼ぶの卑怯だと思います。

 ……私にだって、背が高くて顔はいいけど性格悪いメガネの蜷川課長が「自分としてもいいのか」って引き止めてることくらい分かってる。

 嫌味で厳しい顔ばかりで、喋るたびに叱られて、今も大嫌い。


 でも、私にだって引けない理由がある。


「タツキのことは好き。だから私が『タツキ』を消されたくない。

 新キャラ一から育てるの大変だって知ってるし、そもそも私を育ててくれた『タツキ』が消えるのが嫌!」


 私がこの世界に来てから一緒にゲームしてきた仲間で、いいな、って思ってた先輩。

 薄緑色の桜マークを使うのもタツキのためなら平気だって、苦しそうなイケメンキャラクターに真っ直ぐ向き合った。


「タツキも私のことが好きなら、もう『ラッキースケベキター』ってくらい考えて手、出してよ!

 体から始まる関係だってSHOT D RAINならありえる話でしょ!?」


「お前な」


「傷つくって言うなら『タツキ』がいなくなった方が傷ついて立ち直れない。

 だから、お願い……リカバーさせて。最後までやり通させて」


 指を伸ばして、エレベーターの開くボタンを押した。私だってもう引くつもりはないんだって、決意を込めて見上げる。


「……」


 タツキが考えて、考えて、苦しそうな顔で……それでもエレベーターに入ってくれた。

 上昇するエレベーターの中で言葉もなく一緒にいたけど……こんなとき自分も相手も鼓舞出来る方法が思い浮かんだから顔を上げた。


「あ、わかった。もしかしなくてもタツキ、日和ってるんだぁ?」


 煽り文句しか言わないピヨピヨぴよりーまちゃんの真似。

 PVPすると不快感レベル限界突破出来るって有名で、私も一度だけやらせてもらったけど負けたことよりも言われたことの方が悔しくて泣いた。でも絶対に上手くなってやるって誓った。

 ちゃんと高レベルプレイヤーだから出来る芸当だけど、目の前の相手はネタが分かるはずだから、頬に指を一本当ててぶりっ子振って見せた。


「高レベルプレイヤー様が腰の引けた位置で戦うのカッコ悪いっていっつも私に言うくせに、今日は射撃位置激下がりとか弾薬切れてますかぁ?

 ダウン怖くて遠くから豆鉄砲しか打てないなら低レベルと変わらないんだよって言ってたくせに、自分もリアルじゃ遠くからちゅんちゅん豆鉄砲とかどうかなー?

 振られるの怖くて遠くから見守ってたって、一生関係なんて変わりませーん、ぴよぴよビーム」


「……ミツハ。今煽るの禁止」


「だってリーダーたちと前線張ってる時は真っ直ぐボスに飛び込んで最高火力で銃火器打ち込むタツキが、いいって言ってるのに女の子には何も出来ないとか幻滅ぅ。だっふぁう」


 得意になって喋ってるのに、口を塞がれたから変な声が出た。

 ……エレベーターの壁に腕をついて覆い被さってきたタツキに、キスされてる。

 流石に言葉が出なくなった私から唇が離れて、イケメンイラストのタツキが恥ずかしそうに顔を顰めてるのが見えた。


「煽り慣れてない奴がこれ以上煽るな。お望み通り乗ってやるから。……ほんっと減らず口叩く……ゲームのせいか」


 課長こそキスで黙らせてくるとか、乙女ゲームの世界観ですか。

 エレベーターの中でキスしてくる上司にツッコミを入れたいのに、また唇を奪われると心拍数ゲージが跳ね上がってるから震えて、うまく言葉が出てこない。

 タツキの背後で到着の音が鳴ったと思ったら手を繋がれて、ますます顔が熱くなる。最前線で戦ってるプレイヤー様の度胸はすごいかも。煽ってごめん。

 5210号室の扉が開いたけど、私もこれ以上の攻撃は目が回って耐えられそうにないから、タツキが何か言い出す前にベッドに飛び込んで仰向けになって見せた。


「ん」


 可愛げのないおねだりになったけど手を広げると、真っ赤になったタツキがそれでも乗り上げて、覆い被さってくれるのに自分からキスした。

 あと、一時間。

 柔らかな唇が、何度も軽く重なる。

 別に嫌じゃないし、私からもさっきのお返しだって必死になってキスを繰り返していると、だんだん没頭してタツキ以外見えなくなってくる。

 キス攻めに息が苦しくなってベッドに体を預けると、少しだけ離れた私の前にはまだ苦しそうなタツキがいる。


「ぴよりーまちゃん。俺まだ日和ってるんだけど、本当に最後までしていい?」


「『はぁーん? その腰についてるのは飾りかいハニー。誰にも打ち込めないなまくらなら一生しまっておきな』」


「それ話題になったルミールのセリフ。……じゃあ最後まで付き合って、ミツハ」


 一流イラストレーターの描いたタツキが唇に触ってくるから、ゾクゾクして言葉が出てこなくなる。

 首筋に顔を埋めて肌にキスされると、普段絶対に感じない感覚に体がむず痒くなった。


「あっ、そ、そうだ。STP使ったチュートリアルって、全部終わると称号と勲章もらえるらしいよ。

 『黄金のハゲ儂flyHigh!』のリーダーがつけてた肩の勲章、そうだって書かれてた。『テクニカルプレイヤー』って称号なんだって」


「ご承知の通り、俺も今チュートリアル通りに動いてるけどさ。絶対つけない勲章も称号もいらないんだって……」


 必死に恥ずかしいの誤魔化したけど、チュートリアルのおかげで私も最後までダウンせずに戦えた。

 終わった今はタツキが苦しそうに息を荒げてるのを見て……私も全力疾走したくらい心臓がドキドキして、何も考えられない。

 ようやく落ち着いてきて、二人で言葉もなく呼吸を繰り返してると、視界の端にあった薄緑色の桜マークが消えてることに気づいたからホッと息が漏れた。


「ミツハ、マーク消えた……?」


「大丈夫、消えてる……」


 ベッドの上で脱力して、呼吸を整える。

 体にキスしてくれるタツキに気づいて、胸の奥がキュッと締め付けられた。


「もしかしてチュートリアル、まだ続いてる……?」


「……あ。ごめん、好きな子を前にして、我慢できてないだけ……」


 顔を見せないよう抱きしめてくるタツキの切ない声が胸を締め付けるから、私からも頬にキスした。

 驚いてドキドキしたけど、タツキがしたいなら今くらい良いかな、って思うのが不思議。普段のお礼かな。

 落ち着いてくるとやり遂げた感覚も強くなってきて、しっかり繋いだ手を見ながらつい笑ってた。


「タツキが消えなくて良かった。……ねえタツキ、来月は一緒に新エリア行こうね。エリミアちゃんがついに王子様に会いに行くの、見届けなきゃ。泣きストーリーがくるって話題になってたから楽しみだね」


「『来月は一緒に』とか死亡フラグ立てられてる気がする。

 ……んー、エリミアの旅立ちも気になるけど新ダンジョンも開放だから……俺はそっちの攻略優先かな。ストーリーは後で楽しむから、ネタバレは禁止で頼むわ……」


「じゃあまた全部終わったら、タツキに裏ボスのところ案内してもらおうかな。みんなのためにも頑張って見つけてきてね、リーダーもシナリオ先行タイプだし」


「あるといいけど、ファームエリアみたいに後日追加だったらどうかな……ん?」


 いつものように話しながら過ごしていたら、強制ログアウトの通知が来たらしくて目で追ってる。

 だって私の方にもそういうことしてる最中だけど、相手にログアウト時間が来ましたってお知らせ画面が出てきた。

 課長の方が仕事の帰りは遅いけど会社近くのマンション借りてるみたいだし、私はお風呂が長かったり身支度を整えるのに時間がかかったから今日は後からログインだった。

 時間を切られると、なんだか切ないのも不思議で……タツキのお見送りくらいしようかなって、お互いに装備を付け直した。


「タツキ、時間ギリギリだったね。こういう時って救済措置とかないのかな」


「流石にあるとは思う。いつもはもっと通知早いのに、今回は残り二分で届いたからAIが遠慮してくれたのかも。……ミツハ」


「ん?」


 呼ばれたから顔を上げたら、タツキがベッドに座る私に覆い被さって、顔を近づけて。

 ちゅって、キス、してきた。

 顔が離れたけど、タツキが驚いて身動きも出来ない私の前で嬉しそうに笑ってる。


「改めて、ミツハのことが好きだって思った。俺も好きになってもらえるように頑張るから……また明日、嫌だろうけど会社で」


 その言葉を最後に、目の前からタツキが消えた。

 慌ててメンバー表を見たけど、ログアウトって書かれてる。

 名前が消えてるわけじゃないし、強制ログアウトさせられただけみたい。


「……」


 キスされた感覚が、まだ唇に残ってる。

 胸の辺りが、変にくすぐったい。

 一人でハイレシアの部屋に残されながら、ログアウト間際にキスとか課長めやっぱり乙女ゲームかよって、ベッドの上に倒れ込んで、つい足をバタバタしてしまった。

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