宰相の抵抗
よろしくお願い致します。
あるとき、彼女が作戦を持ち掛けてきた。
彼女は、もともと庶民なのが信じられないぐらい王族としての自覚と誇りを持っているのだ。
その心構えを、僕は下につく者の一人として尊敬していた。
そう、尊敬して[いた]のだ。
彼女が僕に心を開いてくれているのは、分かっている。
だからこそ、この行動を起こしたのだとも、理解している。
でも、これは違う。こんな方法で国の政治を解決へ導きたかった訳じゃない。
弟子を犠牲にして手に入れた幸せを喜ぶ馬鹿が、何処にいるというのだ。
彼女は自分の命を軽く見すぎだ。
もう、僕の幸せはあの方のいるセカイにあるのに。
あの方は、僕にとっての光で。
この狂わしい感情の理由を、まだ僕は気付かない。
駄目だ、彼女をこのままにしておいたら、本当に作戦を実行しかねない。
彼女に、任せておく訳にはいかない。
…今、彼女が僕に寄せてくれている信頼を使わないで、いつ使う?
僕は自問自答する。
卑怯者と罵るがいい。
僕は、自分に任せておいたほうが上手くいくことを仄めかし、作戦の全権を担うことに成功した。
さぁ、僕の本領発揮といこうじゃあないか。
ウジウジと悩むようならしくないことはやめて、国中をひっくり返してハッピーエンドに持っていこう。
見ててくださいよ、姫様。
僕に据え膳なんて、千年早い。
ありがとうございました。