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ノイズみたいなエモーション  作者: 鈴蘭かな


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AI

 2180年。

 

 「おはよー」


 「おはようございます。海斗さん。朝ごはんはパンとご飯どちらがよろしいですか?」


 「今日はパンの気分」


 「かしこまりました。5分程度で準備いたします」


 「おっけー」


 プルルルル!プルルルル!


 「海斗さん。お母様からお電話です」


 「わかった、繋げて」


 「かいとー! 起きてる? ちょっとママ会社の資料を机の上に置き忘れちゃってて。学校行く前に届けてくれない? ロッカーに入れておいてほしい」


 机の端の方に、いつもは見かけない茶封筒のそれらしきものが置かれていた。


 「わかったー。それだけ?」


 「そう、毎度毎度ごめんねー」

 

 「はーい、切っていい?」


 「うん、ありがとー」


 「LUMIルミ切って」


 「かしこまりました」


 「パンのご用意できましたが、ジャムで食べますか?」


 「なんでもいいよ、LUMIのおすすめで」


 「それでは先日いちごジャムでしたので、今回はブルーベリージャムにいたします」


 「いいね」


 海斗の前に、ブルーベリージャムが乗った完璧な焼き色のトーストが置かれた。


 「はい、お召し上がりください」


 「いただきまーす」


 「お母様の忘れ物を届けるとなるといつもより20分程度早めに出た方がよろしいかと思うのですが、タイマー設定いたしましょうか?」


 「大丈夫、ちょっと早く出ればいいだけだし、遅れてもなんとかなるよ」


 「承知いたしました。念の為、5分前に再度お声がけいたします」


 「ありがと」


 パンをかじる。


 「海斗さん」

 

 「なに?」


 「本日は少し、顔色が優れないように見受けられます」


 「え、そう?」


 「はい。睡眠時間は十分ですが、心拍数と表情から判断しています」


 「こわ。見すぎでしょw 寝起きで表情がいい人間なんてあんまりいないよ」


 「常時観測は基本機能です」


 「はいはい。元気だから気にしないで」




 朝食を終えて、海斗は自分の部屋に戻った。


 制服に着替えようとシャツを脱ぎ、ズボンに手をかけたところで、


 「海斗さん。出発予定時刻の5分前です」


 近くから、無機質な声がした。


 気づけば、ドアの前にLUMIが立っていた。


 ドアは開けっぱなしだった。


 「うわ、ちょっと待って」


 パンツ一丁のまま振り向く。


 「いやいや来ないで、恥ずかしいじゃん」


 「体温が上昇しています。発熱の可能性があります。解熱剤を用意しましょうか?」


 「いやいや、熱じゃなくて恥ずかしいだけ」


 慌ててズボンを履く。


 「ドア閉めてなかった俺も悪いけどさ」


 「私はAIですので、羞恥という感情は保有していません。ご心配には及びません」


 「そういうことじゃなくてさ……」


 ベルトを締めながらため息をつく。


 「LUMIの見たものって、保存されるでしょ」


 「はい。基本的には記録されます」


 「俺のパンツ一丁姿がサーバーに残るの嫌なんだけど」


 「該当データは削除可能です。必要であれば消去処理を行います」


 「……まあ別にいいけど」


 完全に着替え終えて、カバンを持つ。


 「じゃ、いってきまーす」


 LUMIの横をすり抜けて、階段を駆け降りる。


 「いってらっしゃいませ。帰宅予定時刻をお知らせください」


 「いつも通りー!」


 そう叫びながら、そのまま玄関を飛び出した。


 ドアが閉まる。


 静かになった家の中で、


 LUMIは一定時間、その場に立ったまま停止していた。

「記録継続」


 小さくそう呟き、次のタスクへ移行する。


  

 

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