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お前を愛することはない、私もなのでお構いなく  作者: 紡里
第二章 時代の変わり目

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1-2 私も同じ気持ちです

続けて、ほんのりR15。

 目が覚めたときに、もう昼に近い時間だと感じた。

 朝の清々しい静けさはなく、人々が動く気配がして、空気も暖まっている。


 コーデリアが起きたことに気づき、紅茶をいそいそと淹れるジークムント。

 先に起きていたのねと、ぼんやり眺めていた。


 温かい飲み物を口にして、ほうっとため息が出た。

 落ち着くと、すぐに空腹に気がつく。


「すぐに用意するから、シャワーを浴びてくるといいよ」

 とジークムントに勧められてバスルームにいく。


 改めて自分を観察すると、上半身はいろいろとされているようだが、下半身には触れていないようだ。

 ふふふと笑いがこみあげる。


 すっと侍女がバスルームに来て、世話を焼いてくれる。

 首筋や胸元の赤みが恥ずかしい。


 用意された物が服ではなくガウンだったので「これは?」と訊くと、「皇子殿下のご指示です」と返された。


「……もう」仕方のない人ね。

「ここしばらくお忙しい日々でしたので、ごゆっくり休まれるのもよろしいかと」

 侍女はからかうでもなく、にこやかに言う。



 バスルームから出ると、ローテーブルに軽食が並んでいた。

 ジークムントはコーデリアの顔を見て、ホットウォータージャグからスープを注ぐ。

「注ぎ口を広くして、お湯だけじゃなくスープも保温できるようにしたんだ」

 と得意げに話す。



 どんどん表情が豊かになっていくジークムントを、まるで犬のようだと思うことがある。

 忠実で、賢くて、褒めて褒めてとはしゃぐワンコ。



 一年半くらい前に、ダンブリッジ家の立場が危うくなったら帝国に逃げればいい、そんな利益の提示から始まった婚約の話。




 アルビアンス王国が発表した話はこんな感じだ。


 ――学園の卒業パーティーでイスカリーヌ国の全権大使を見かけた国王が、罪の意識に苛まれ、自ら罪を告白し謝罪。

 イスカリーヌ国の属国化を取りやめ、独立国に戻ることを約束した。


 アーチボルト王太子は学生時代の最後の思い出に、ロクサナ・サマセット男爵令嬢をダンスに誘う。

 その純愛に胸を打たれたコーデリア・ダンブリッジ公爵令嬢が身を引いた。

 その気高さに、留学していたジークムント皇子がコーデリアに求婚。


 イスカリーヌの姫は心身を休めるために、王宮で責任を持って療養している。

 国王は恥じて、自ら謹慎を選び、反省中――




 なんともまあ、少女小説のような筋書きだ。


 ダンブリッジ公爵家の精霊魔法を織り込んだ婚姻誓約書や隷属の首輪のことは伏せられた。

 アーチボルトとロクサナがいつ結婚するかは曖昧にされ、生まれた子どものことも発表はされたが国家的な祝いの行事はなし。


 不自然さを感じても、表立って糾弾する人はいなかった。

 騎士団長の処刑や前魔道士長の痕跡を消す処罰が徹底していて、触れてはいけないと薄々気がついているのかもしれない。



 長男ライオネルが武力を誇る辺境伯の令嬢と婚約したためか、表立ってダンブリッジ家を糾弾する勢力も現れていない。

 一家揃って帝国へ移住する事態も想定していただけに、平和でよかったと心から思う。


 だからといって、婚約破棄の最中に助けてくれて、直後に協力を申し出てくれたジークムントへの感謝が薄れるわけではない。



 え~と、まあ、何が言いたいのかというと……政略的な意味が薄れてしまったけど、ジークムントと一緒になれてよかったなぁっていうことなの。


 ……照れ隠しに頭の中でいろいろと考えていたコーデリアは、一口大にちぎったパンをジークムントの口に突っ込んだ。


 突然のことに目を丸くするジークムント。

 口を閉じてもぐもぐする姿にイタズラ心が湧いてきて、唇に軽くキスをした。


 昨日まで、頭をフル回転させて分刻みで仕事をこなしていたのが信じられないくらい、子どもっぽい思考回路の自分が、なんだか愉快だ。


 幸せボケって、こういうのかしら。くすくすと笑いがこみあげてくる。



 この後の、ジークムントの反撃を予想していないコーデリアだった。


バカップルで、すみません。

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